『首のたるみが気になるの』(ノーラ・エフロン:著、阿川佐和子:訳/集英社)

写真拡大

 首は正直だ。首のたるみから本当の年齢がわかる。それは、自分の年齢を言いたくないなと思っている女性にとっては恐ろしい事実である。いくら顔のスキンケアに時間をかけてツルツルに仕上げても、首にたるみがあったら「あら? 本当はもっと歳を重ねているのでは?」と思われかねない。今まで首を大事にしてこなかったことを、後悔する日がやってくる。

 『首のたるみが気になるの』(ノーラ・エフロン:著、阿川佐和子:訳/集英社)は、美容の本でも、アンチエイジングの本でもない。映画監督・脚本家として『ユー・ガット・メール』『めぐり逢えたら』『恋人たちの予感』などヒット作を世に送り出し、記憶に新しいものではメリル・ストリープ主演の『ジュリー&ジュリア』がある、ラブ・コメディの女王と呼ばれたノーラ・エフロン氏の「オバサン文句満載の愉快なエッセイ」である。

 そのエッセイを訳したのが、テレビの対談番組等で絶妙なトークを披露し、相手の心をつかむ阿川佐和子氏となれば、このエッセイはおもしろくないはずがない。阿川氏は、ノーラ・エフロン監督・脚本作品を観て、ニューヨークの真実を知り、主人公達のおしゃれな会話に魅了され、もし物語を書くならこんな風なセリフをちりばめてみたいと思ったという。

 劇中に飛び出すおしゃれなセリフは、ノーラ氏の観察眼のするどさ、ささいなことも気に留めて考えることからうまれるのではないか。首のたるみに関していえば、エッセイの中で「もし部屋が明るければ(なるべく明るくないほうがいいけれど)、首の皮をそおっと後ろに引っ張って、自分の若い頃の首に思いを馳せながら、じっと見つめることにする」と書いている。

 若い頃は、首に注目するよりも、メイクやファッションに気を使い、目がもっと大きかったら、脚がもっと細かったらいいのにと試行錯誤して自分をより良く見せようとする。しかし、その時代が終わるとその頃まったく視界に入ってこなかった「首」の「たるみ」から目が離せなくなってくるのだ。

 「どうして若いうちに自分の首をもっとたっぷり堪能しておかなかったのか。それがどんなに大切か、当時は考えつきもしなかった。そこに美しく存在するのが当たり前と思っていた身体の一部について、これほど深く懐かしむことになろうとは、想像すらできなかったのである」このことこそ、ノーラ氏の今までの人生における大いなる後悔だそう。

 首のたるみの予防をしたい、整形をして若く見せたいということを言っているのではない。ただ、美しい首を持つ人たちに当たり前にそこにあると思わないで、今たっぷりと堪能しておかないと後悔すると言っているのである。

文=大石百合奈