4年前のW杯予選で劇的な同点PKを決めた本田圭佑【写真:Getty Images】

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4年前の経験。本田が熟知する最大のポイント

 8月31日に2018年ロシアW杯アジア最終予選のオーストラリア戦を迎える日本代表。勝てばW杯出場が決まる一戦だが、本田圭佑はこの一大決戦のテーマについて「慎重さより強気」だと説いた。前大会の最終予選、同じくオーストラリアを相手に劇的な同点ゴールを奪い日本をブラジルW杯出場に導いた背番号4。大一番を前に、その存在感が高まっている。(取材・文:元川悦子)

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 4年前の2013年6月4日、埼玉スタジアム。日本は相手左サイドのクロスがそのままゴールに入るという後半37分の不運な失点によって0-1のまま後半アディショナルタイムを迎えた。

 絶体絶命のピンチに直面した彼らは右CKをゲット。清武弘嗣(C大阪)とのワンツーから本田圭佑(パチューカ)が強引な突破を見せ、中央に折り返したボールがペナルティエリア内で相手DFの手に当たり、PKを得た。想像を絶する重圧の中、背番号4はゴールど真ん中を狙うという強心臓を見せ、1-1に持ち込むことに成功する。この勝ち点1によって、日本は2014年ブラジルワールドカップ出場権を手にしたのである……。

 殊勲のPKを決めた男・本田は、同じ相手と同じ場所で3日後に迫った2018年ロシアワールドカップ最終予選大一番を前に、「『慎重さ』より『強気』。僕はこの試合のテーマをそう思っています」と彼は改めて強調した。4年前の経験から、メンタリティこそが勝負を分ける最大のポイントだと熟知しているからこそ、そう語ったのだろう。

 当時と現在では、本田を取り巻く環境は劇的に変化した。2013年夏時点の彼はCSKAモスクワとの契約満了寸前。欧州ビッグクラブから熱視線を送られていた。日本代表でも絶対的エースに君臨しており、本田がトップ下にいない試合は必ずと言っていいほど大苦戦を強いられた。

 本人は2011年アジアカップ(カタール)でMVPを獲得した際、「日本代表で攻撃を仕切ることが夢でもなんでもない。自分が何のためにサッカーやってんのかって考えた時に、やっぱりもっとうまくなりたい、強いやつらに勝ちたい、世界中に認められたい」と鼻息が荒かったが、その言葉通り、上へ上へと上り詰めることだけを考えていたはずだ。

 しかし、4年の月日が経過した今はACミランと契約延長をせず、欧州を離れてパチューカにプレー環境を移したばかり。ミランで定位置を取れなかったことで、日本代表でも控えに回ることが増え、今回の最終予選はここまで8戦のうち先発5試合。フル出場は昨年9月の初戦・UAE戦(埼玉)と今年6月のイラク戦(テヘラン)の2戦だけだ。

本人は中央に近い位置を希望も、起用なら右サイドか

 久保裕也(ヘント)ら若手の台頭に押されつつあるのは確かで、本田が31日のオーストラリア決戦にスタメン出場する保証はない。それでも本人は「もちろん僕は(代表メンバーが27人ではなく)11人の招集でも入るつもりですけど」と先発入りする野心満々だ。

 これまでヴァイッド・ハリルホジッチ監督は本田を主に4-2-3-1の右サイドで起用してきた。昨年10月のアウェイ・オーストラリア戦(メルボルン)では「高さが必要」との判断もあり、異例の1トップ起用となったが、今は同じ身長の大迫勇也(ケルン)がいる。場合によっては187cmの長身を誇る杉本健勇(C大阪)も使えるため、背番号4を最前線に上げる必要性は低い。

 本人はパチューカで主に担っている4-3-3のインサイドハーフなどをより中央に近い位置を希望しているようだが、香川真司(ドルトムント)が負傷離脱した6月のイラク戦でもトップ下には原口元気(ヘルタ)が使われた。

 こうしたさまざまな要素を勘案すると、やはり本人が「たぶんこっち(代表)で出る場合は右だと思うし。真司が出る場合はトップ下。そこは別に今までと変化があったわけではない」と言うように、右サイドがファーストチョイスになるだろう。

 そうなると、これまで通り、久保とのポジション争いに勝たなければならない。今年1月にベルギーのヘントへ移籍した久保は昨季後半、17戦11ゴールという目覚ましい数字を残し、瞬く間にハリル監督の信頼を勝ち取ったが、7月30日に開幕した新シーズンはベルギーリーグ5試合無得点。

 チームも不振にあえいでいて、彼自身も先発落ちするゲームも皆無ではない。しかも、今回のオーストラリア戦に向けて代表に合流するのは29日。調整時間があまりにも短すぎるのは確かだ。

日本代表をけん引してきた大黒柱の意地とプライド

 本田自身もメキシコから初めて日本に戻ってきたため、コンディションがどうなるかは未知数ではあるが、標高2400mの高地から平地に戻ってプレーできるアドバンテージは少なくない。

 2010年南アフリカワールドカップでも、スイス・ザースフェーでの高地トレーニングの成果が出て、本田や松井大輔(オドラオポーレ)ら主力は走り切れる体躯を手に入れることができた。その時と同じようにいけば、メキシコではあまりやっていない右サイドでのアップダウンも存分にできるかもしれない。

 6月のイラク戦でも存在価値を再認識させ、山口蛍(C大阪)に「やっぱり圭佑君が一番良かった。誰が軸かはっきりしたんじゃないかと思う」と言わしめた背番号4ではあるが、新大陸に赴いた今、新たな一面を示してくれる可能性は高い。

 加えて、オーストラリアの高さ、フィジカルの強さを考えると、セットプレーや終盤のパワープレーの守備要員として182cmの本田がいた方が安心材料が増える。酒井宏樹(マルセイユ)との右サイドのタテ関係のスムーズさ、攻撃の崩しの多彩さを踏まえても、やはり今回は数々の修羅場をくぐってきたこの男に日本の命運を託した方がベターなのではないだろうか。

「過去1〜2年の日本の出来とオーストラリアの出来というところの周りの評価もあるけど、4年前とは明らかに状況が違う。いい相手であることはもう間違いないですよね。でも当然ながら完璧なチームはないわけで、そこを突く準備、イメージは頭の中にはあります」と不敵な笑みを浮かべた本田圭佑。その口ぶりには、過去7年間、代表をけん引してきた大黒柱の意地とプライドが垣間見えた。

 自身の完全復活、3度目のワールドカップでのキャリア集大成という2つの大目標を果たすべく、背番号4には自身の持つ全ての力と経験値を注ぎ込み、日本をロシアへと導いてもらいたいものだ。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子