リツキ

 27日に東京・新木場STUDIO COASTでおこなわれた、10代音楽フェス『未確認フェスティバル2017』ファイナルの会場で、ある一人のシンガーの登場が非常に印象的だった。

 彼の名はリツキ。これまでShout it Out、YAJICO GIRLとグランプリ受賞者にはロックバンドが続いた『未確認フェスティバル』だが、彼はアコースティックギター一本を抱えた弾き語りのシンガー。

 約1年前にプレーを始め、なんと今回の『未確認フェスティバル』がステージデビュー。第1回のステージが予選、2回目は決勝戦、そしてグランプリを受賞したことで3回目のステージを披露にすることになったという衝撃的なアーティストだ。

 しかも、予選までの持ち曲は2曲、その後決勝で3曲が必要であることを言われ、それまでの1カ月で1曲を追加したという。

 現在高校生、学校ではサッカー部に所属するというリツキは、この日のステージでは司会者に話を振られるとしどろもどろになり、答えにも困るような様子を見せており、普段の様子からは「ステージなんて大丈夫なのか?」と心配にもなりそうな雰囲気を見せる。

 しかし曲が始まると、その様子は一変。特に凝った曲作りを行っているようにも見えない、特別に旨いと思わせる歌でもない。しかし、リツキの歌には、来場者全員があっけにとられ、沈黙の中その歌にじっと耳を傾けていた。

 その特徴的な歌に、審査員の菅野結以は、こう語っている。

 「第一審査のときに送られたデモは、ファイナリスト全体で(彼のものが)ダントツに音質がメチャメチャ悪かったけど、何か胸に来るものがあって、今日は楽しみにしていました。そして一曲目から訳も分からず涙が出てきて…ずっと泣きながら聴いていました」

 また同じく審査員の蔦谷好位置も「まさに未確認」と驚いた様子を見せ、感激に包まれたその音との出会いの様子を振り返っている。

 シンプルに響くギターの上で、リツキの歌うメロディーが響く。まったくシャープなイメージはないギターの音。そして歌のメロディーラインは、ところどころになぜかルーズな音程が感じられる。

 まだ「不器用」とも見られる演奏だったが、静寂の会場の中で奏でられたその音は、生々しさの様なものを感じさせた。ヨレた音程ですら、そこには歌い手の意思を感じさせるものが見えた。それはまんま自分の中から湧き出るものを、そのまま表現した、そんなイメージも見えた。

 毎週、毎日にまるで洪水の様にリリースされ続け、音楽というものが供給過多とすら感じられる今日。リツキの音を聴いたときに「ああ、俺はこんな音を求めていた」そんな思いが湧き上がっていた。もちろん全力を尽くし、趣向を凝らしたゴージャスな音というのもいい。しかし彼の音は、そういう音の作り方とはまた違った方向も感じられる。

 また、まだ音楽を始めてそれほど時間も過ぎていないというリツキが、これほどまでに人々を魅了する音が出せたのは、彼には何か天性ともいえる素養があったからこそではないかと思う。

 ピュアな感性を大切に、これからも歌い続けてほしい。そして何かもっと彼の歌が聴ける機会はないだろうか? と期待もしている。【取材・撮影=桂 伸也】