葉山奨之、“何だか憎めない”笑顔が武器に 『僕やり』マル役から漂う不思議な愛嬌

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 現在放送中のフジテレビ系火9ドラマ『僕たちがやりました』。視聴率こそ右肩下がりとなっているが、初回から原作漫画の世界観を再現した作り込みの巧さと、テレビドラマの枠を超えた過激な描写で話題沸騰。今クールの連ドラの中で、もっとも話題を集めている作品であることは間違いない。

参考:『僕たちがやりました』水川あさみの“裏の顔”が明らかに コメディタッチから一転した第6話

 “そこそこ”で生きていたいと願う高校生のトビオ(窪田正孝)を筆頭にした若者たち。彼らが近隣のヤンキー校への復讐のために仕掛けたイタズラが、10名もの死者を出す爆発事件へと発展。現実を直視できずに逃亡を続ける彼らの、友情や恋模様を描きだした青春サスペンスなのだ。有望な若手キャストのアンサンブルに注目が集まる中、誰よりも異質な存在感を発揮しているのが、丸山友貴、通称“マル”だ。

 演じている葉山奨之自身も、「一番キャラ立ちしていて、演じ甲斐がある役」だと語るこのキャラクター。爆発事件につながるきっかけを作った、根暗ないじめられっ子キャラだった第1話では、主人公たちのグループ内での弟分的なポジション。事件のニュースを見ながら不気味な笑みを浮かべて以降は、それまでのイメージを完全に覆すクズっぷりを遺憾なく発揮するのだ。

 マルは口封じのためにパイセンがトビオたち3人に配った金に異様に執着し、トビオを騙して奪い取る。そして、これまで溜めに溜めた鬱憤を晴らすかのように、熱海のホステスに使い込んだ。ひとしきり金を使い果たした彼は、東京に戻って今度は伊佐美(間宮祥太朗)の金まで狙うのである。

 “さとり世代”を絵に描いたようなキャラクターたちの中で、ひとりだけ強欲さを見せつけるマル。原作では徹底したクズであった彼だが、ドラマでは私利私欲のために暴走する姿の中に、不思議な愛嬌を発しているのだ。それはこのキャラクターが、抑圧から解放された若者を実直に描いているからでもあり、また葉山奨之という役者の笑顔に、“何だか憎めない”得な雰囲気が漂っているからでもあろう。

 元々は原作のファンで、演じるならば絶対にマル役がいいと思っていたとインタビューで語っている彼は、2011年に俳優デビューを果たした現在21歳の注目株。デビュー作となったドラマ『鈴木先生』(テレビ東京)では、回想シーンに一瞬だけ登場するヤンキー風の生徒を演じていた。その翌年には『トテチータ・チキチータ』で映画初出演を果たす。前世で家族だった、世代の異なる4人の男女の交流を描いたファンタジックな作品で葉山は、現世では高校生・前世では家族の大黒柱という何とも複雑なキャラクターを演じ抜いたのである。

 その後ブレイクのきっかけとなったNHK朝の連続テレビ小説『まれ』を皮切りに、吹奏楽の天才的なセンスを持つ奏者を演じた映画『青空エール』から、月9ドラマ『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)ではヒロインの弟を少しだらしなく演じ、頭角を現した。そして、極め付けはここ数年のドラマで最も流行した『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)への出演であろう。

 出演する作品で、まったく違う顔を見せてくれる葉山。事務所の先輩である小栗旬に憧れてこの世界に足を踏み入れただけに、そろそろ彼のキャラを決め打ちする当たり役が欲しいところだろう(小栗で言うところの『花より男子』の花沢類のような)。そうなると、このマル役は今後の彼のキャリアを大きく左右するキャラクターに違いない。

 傍若無人に振る舞い、キャラクターの相関図を引っ掻き回す、“愛すべきクズ”。しっかりと口角を上げて微笑みながらも瞳の奥ではまったく笑っていない不気味な表情は、2010年代のテレビドラマを代表する悪魔的なキャラクターとして語り継がれていくのではないだろうか。

■久保田和馬映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。