危機を知った時にはすでに着弾しているかもしれない

写真拡大

 8月29日の朝、日本中が震撼した。NHKをはじめテレビ各局の画面は全面、危機を煽るような黒い地に赤い帯の入った「国民保護に関する情報」が映し出され、次々にテロップで臨時ニュースが流された。各自のスマホ・携帯電話にも速報が続々と流された。〈北朝鮮がミサイルを発射した模様。避難を〉。短いながら強い言葉だ。しかし、今回の発射でわかったことは、「やっぱりJアラートは国民保護にはほとんど役に立たない」ということである。

 Jアラート(J-Alert)の正式名称は「全国瞬時警報システム」で、2007年から運用が開始された。衛星を利用して情報をキャッチし、自治体などに流すシステムだ。Jアラートから情報が流されると、〈市町村の防災行政無線等が自動的に起動し、屋外スピーカー等から警報が流れるほか、携帯電話にエリアメール・緊急速報メールが配信されます〉ということになっている(国民保護ポータルサイトより)。

 最初の「発射情報」が発表されたのは6時2分。発射時刻は5時57分と見られていることから、発射後5分ほどで情報を発表したことにはなる。ただし、多くの国民にその情報が行き渡るかどうかというと、話は別だ。スマホで“速報”が実際に受信できたのは1〜2分遅れだった。

 北海道上空を通過したと見られるのが6時6分。発表からわずか4分。いや、実際に国民が情報を入手してからは、最大でも2〜3分しかないかもしれない。「どこに避難すれば? まず情報収集だな。テレビをつけて…」などとやっている間に、ミサイルはとっくに頭の上を通過していたのである。北朝鮮が日本国土を狙っていれば、Jアラートに気付いてテレビをつけたと思ったら、もう火の海になっていてもおかしくない。

 早朝だったから、スマホの情報にも気付かず、地域の防災行政スピーカーなども聞こえず、「起きてからテレビをつけて、発射されたことを知った」というケースも多くあるだろう。ジャーナリストの武冨薫氏が指摘する。

「Jアラートは100億円以上を投じて整備され、それを伝達するEm-Net(エムネット。緊急情報ネットワークシステム)とセットで国が主導して導入を進めてきましたが、“いざミサイルを撃たれたら、間に合わない”ことは当初から指摘されてきました。それなのに政府が『国民の生命と財産を守るため』と導入をゴリ推ししてきたのです。過去には2008年6月に福井県美浜町で誤作動を起こして『ミサイルが着弾するおそれあり』という誤報を流して住民をパニックに陥れさせたこともあります」

 これがJアラートの実力だ。発射情報から、わずか4分。あなたは今回、その4分で何ができましたか? 避難した? 慌てふためいていた? それとも、寝ていた?