シャープ本社・堺事業所(「Wikipedia」より)

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 多くの企業がFacebookやTwitterで公式アカウントを作成し、広告同様に企業情報を提供している。その内容はさまざまで、大手企業のお堅いイメージからは離れたユニークなつぶやきを発信し、“バズる(SNSで話題になる)”企業も少なくない。

 しかし今年6月、それまで遊び心あるツイートで注目を集め、40万人以上のフォロワーを抱えていたシャープのTwitter公式アカウントは、同社の別の公式Twitterアカウント「シャープ製品(@SHARP_ProductS)」の運営を停止すると発表した。任天堂の「ニンテンドークラシックミニスーパーファミコン」の収録ソフトについて、独自の換算で値踏みしたことをきっかけにネット上で大炎上したためだ。

 このように、面白いツイートを意識して行き過ぎた内容を投稿した結果、問題が発生してしまう一方で、キングジムやタニタ、井村屋などのゆるいツイートは相変わらず人気があり、特に問題とならずに宣伝効果も高いように思える。一長一短にも思える企業のTwitter活用だが、マーケティング戦略としてどのようにとらえるべきなのだろうか。立教大学経営学部教授の有馬賢治氏に話を聞いた。

●“押し売り”ではなく“消費者目線”の効果

 そもそも、なぜこのようにユニークな内容をツイートする企業アカウントが増加しているのだろうか。

「昨今は若者の間では、よく見るインターネット上のサイトにブックマークをつける習慣が失われてきています。SNSのタイムラインから情報を得て、リンク先を覗くことが常態化している時代といっていいでしょう。つまり、情報過多のために特定の企業情報を定期的に閲覧してもらうことが非常に困難になっているのです。また、消費者が自分の意思で企業が発信している情報を探索することも稀になってきています。そのような環境では、従来通りに自社商品を紹介していく手法は、場合によっては消費者に押し付けがましく取られてしまう可能性があります。ですが、発信者が消費者の日常生活に近いシチュエーションを想定し、ある程度発信者の好みを入れてツイートすると、情報に人間味が増して好感が持たれやすくなります。各企業がこうした効果に気づき始めたのだと思います」(有馬氏)

 シャープ製品のツイートも多分に主観が入っている、企業というよりまるで一個人がつぶやくような内容だった。だが、それが問題だったようだ。

「シャープ製品の問題のツイートには他者が大切に感じているものを貶める内容が含まれていました。いくらプライベート感覚溢れる身近なツイートだったとしても、他者を不快にする発言が含まれていますと、背景の企業や組織に対して、その管理責任を問う声が発生しやすくなります。政治家のように思想や信条を表明して意見を発信する仕事であれば、異なった意見との対立も必要な側面がありますが、企業が商品・サービスを提供する場合には、無駄な敵をつくらないことは必須の条件です」(同)

●当たり障りないツイートでは意味がない

 しかし、炎上を気にしてばかりでは企業も動きづらいはず。炎上騒動の幕引きは、企業が謝罪することが大半だが、そういった反応を無視することはできないのだろうか。

「好感度を維持することが命題である企業において、それがたとえネット内のごく一部の批判であったとしても、無視することはできません。むしろ、スマホの普及で個々人にまで発信メディアがいきわたった現代では、ネットで拡散されることから被る影響を甘くみることは難しいでしょう。その意味で炎上への対応は、せざるを得ないというところではないでしょうか」(同)

 だが、当たり障りのない内容ばかりツイートしたところで話題にはならない。スルーもされず炎上もしない、企業アカウントの適切な活用方法が気になるところだ。

「個人や組織の主観的な意見や、使用する用語が適切か否かは時代や社会背景によって判断が異なります。ですから、一概にこれが正解というものはないでしょう。ただし多くの人が興味を持ち、他者に紹介したくなるトピックにするためには、何かしら“新鮮”な要素が含まれていることが必要です。共感を得る情報を企業側から発信するためには、さまざまな世代や趣向を持った人材を集めて、何が新しいのか、どのようなことに興味・関心を持ってもらえるのかを吟味し続けなくてはならないのです」(同)

 共感は反感よりも深く考えなければ発信しづらいもの。ネガティブな意味ではなく、日常会話で話題に上がるような企業情報を発信することは、情報過多の現代では非常に困難な作業だ。それでも企業はそれに挑戦していかないと埋もれてしまう時代なのであろう。
(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)