こんにちは。家計再生コンサルタントの横山光昭です。

皆さんは、「確定拠出年金」という言葉を聞いたことがありますか? 確定拠出年金には企業型と個人型がありますが、2017年より加入対象者が拡大し注目を集めているのがiDeCo(イデコ)という愛称の個人型確定拠出年金です。端的に言えば「自分で年金をつくる制度」の1つであり、投資の1つでもあります。では、おトクな制度と話題のこの制度、何がどのようにおトクなのでしょうか。

横山光昭(よこやま・みつあき)

マイエフピー代表取締役、家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「はじめての人のための3000円投資生活」は40万部を超え、著書累計は205万部。公式サイト

iDeCoってなに?

確定拠出年金は、投資商品などを積立てて運用しながら、自分で年金をつくる「私的年金制度」。公的年金だけでは老後の生活費が不足するかもしれないので、自分で備える仕組みの1つです。今までは自営業者や企業年金のない会社員しか加入できませんでしたが、2017年からは企業年金のある会社員、公務員や主婦も加入できるようになり、注目されるようになりました。

運用できる商品は、国内外の株や債券などを投資対象とした「投資信託」、「定期預金」「保険商品」などがあります。これらを組み合わせてくのですが、初心者の方で選び方に困る場合は、商品ラインナップの中から信託報酬の低いものを組み合わせて選んでみてください。具体的な組み合わせ方は、のちほど紹介します。

iDeCoは、なんといっても税制面の優遇が魅力。次の3つの場面で優遇を受けられます。

1. お金をかける(拠出)時

掛金が全額、所得税と住民税の両方で控除されます。

2.. 運用益が出た時

運用で得た利益にかかる税金(利益の20%+復興所得税)がかかりません。

3. 受け取る(給付)時

一時金を受け取るときは退職所得控除が適用され、年金式で受け取るときは公的年金等控除が受けられます。

運用益は、運用の仕方次第なので保証できないものですが、税控除は最低でも掛金の15%受けられます。内訳は所得税分として自分の所得税率(5%、10%、20%、33%と所得による)分と、住民税が一律10%分、掛金に応じて引かれます。つまり、最低でも年間の掛金総額から所得税5%+住民税10%の15%分の税金が安くなるのです。これは掛金を払っているだけで誰にでも適応されるので、運用益とは異なりますが、間違いのない「利益」と言えます。これも大きな魅力です。

デメリットを強いて言えば、掛金は60歳まで引き出せないので、急にお金が必要になった時に頼ることができない資金であることと、途中脱退しにくいこと。運用の仕方によっては掛金より受け取る額が減る可能性があることです。ただ、毎月積み立てるので、強制的に老後資金をつくりたいという人には良い制度です。

どうやってはじめるの?

はじめるには、iDeCoの取り扱いがある銀行や証券会社(運営管理機関)で口座を開設し、必要書類を集めて記入して申し込むだけ。ネットの証券会社であれば、すべて郵送だけで済みます。口座開設をする運営管理機関は、手数料がおトクになるキャンペーンをしていることが多く、加入時の手数料は国民年金基金連合会の手数料と同程度が増えています。そして、実際に運用がはじまるまでには申し込み後2〜3カ月かかります。

運営管理機関を選ぶポイントは、取り扱っている商品のラインナップと、口座管理手数料、信託報酬など運営管理機関に支払う手数料です。投資に不慣れな人は、手数料などで損をしないためにも、それらの手数料が安いところを選ぶとよいでしょう。

口座を開いたら、迷うのは商品選び。配分の仕方を、リスク許容度と資産状況からケースごとに紹介します。

リスク許容度は、貯蓄の有無に影響されます。投資などをはじめるには、「使う貯蓄」として、特別支出などに対応できるよう手取り月収の1.5か月分を、「貯める貯蓄」として、教育費や自動車購入費、マイホーム頭金などを除いた貯蓄を6か月分、合わせて7.5か月分以上の貯蓄を保有していることが理想です。ただ、貯蓄と投資を併走するという考え方もあるので、以下のケースを参考にご自分の配分を考えてみてください。

1. 貯蓄がまったくなく、損は絶対許せない(リスク許容度が低い)人

まずは、貯蓄を月収の7.5か月分つくりましょう。

2. 貯蓄はないけれど、投資はしたい(リスク許容度が高い)人

貯蓄をしながら併走で投資する場合は、全額投資にまわすやり方はダメ。若い人であれば、長期投資ができるメリットがあるので、「株式50:債券50」程度の割合もOK。40〜50代はそれよりも貯蓄を多くして。

3. 貯蓄はあるけれど、損はしたくない(リスク許容度が低い)人

まずは少額からはじめ、経験を積みましょう。貯蓄と投資の併走でもよいでしょう。リスク許容度が低いので、債券を多めの配分で、たとえば「株式30:債券70」などが良いでしょう。

4. 貯蓄はあり、リスクを取っても構わない人

投資にまわせるお金も多く、リスク許容度も高いので、iDeCoだけではなく、NISA(少額投資非課税制度)などにチャレンジしてもよいでしょう。iDeCoであれば、「株式70:債券30」を目指してもよいでしょう。

5. 貯蓄は十分あるけれど、リスクを取るのはいやな人

3と同じように、債券を多めの配分で。年齢と目的に合わせ、NISAなどを活用してもいいでしょう。

6. 貯蓄は十分あり、リスクを取っても構わない人

年代に関わらず、リスクを取ってもよいでしょう。「株式80:債券20」とし、そのなかでもよりリスクの高い外国株式、外国債券などを選択してもいいと思います。

ただし、はじめる人は本などを読んでよく勉強し、自分が納得のいくように運用してください。

おトクだけれど、はじめる前にやっておきたい準備

先におトクな話とはじめ方などをお伝えしましたが、飛びつくのはちょっと待ってください。実はデメリットの中の「60歳まで引き出せない」という部分に注意してほしいのです。というのは、いくらiDeCoが貯まっていても、人生の途中で家の頭金に、子どもの教育費に使えない資金なのです。ズバッというなら、生活を維持するだけの資金がない人は、はじめてはいけないのです。「毎月赤字だけど何とか払っている」などというのは言語道断です。

ですから、配分の仕方のところで、貯蓄に注目しているのです。

iDeCoがはじまり、世の中はますます「貯蓄から投資へ」という雰囲気が強くなったように感じます。投資がより身近になったともいえるでしょう。ですが、生活防衛資金がないと万が一の時に対応できませんし、家計状況を整えておかないと毎月支払う固定費が増え、生活が苦しくなるだけになってしまいます。

iDeCoのメリットを享受したければ、まずは掛け金を払っても問題がない家計をつくることが先決です。せっかく良いものをはじめたのに、自分を苦しめる結果になったということにならないよう、気を付けてください。

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