2017-0828
外務省は2017年5月2日に同省の公式サイトにおいて、アメリカ合衆国における対日世論調査の結果を公開した。その内容によれば調査対象母集団においては、2015年時点で一般的な日米協力関係の状態・現状に対し、「良好」「極めて良好」の評価をした人は一般人で62%・有識者で75%に達していることが分かった。また日米両国民の相互理解度では、1990年代以降は上昇傾向にあるが、2013年以降に限ると下落する動きを示しているが、直近年では上昇の動きに転じている(【発表リリース:米国における対日世論調査】)。
調査概要については先行記事【アメリカ合衆国の日本への一般人信頼度73%・有識者は83%に(最新)】を参考のこと。

まずは日米の協力関係において、軍事や政治などに限定せず、一般的にどのような評価を下しているかとの質問。「極めて良好」「良好」「普通」「良くない」「意見無し」のうち、ポジティブな意見である「極めて良好」「良好」双方を足した値の推移をグラフ化したのが次の図。有識者は1992年から質問を設定しているため、答えもそれ以降のものとなっている。


↑ 日米協力関係一般への評価(「極めて良好」「良好」「普通」「良くない」「意見無し」のうち、「極めて良好」「良好」の回答者合計)

有識者の方が大よそ一般人の10から20ポイントの上乗せをしているが、上昇の仕方は双方で変わりが無い。有識者の計測を始めた1992年以降、一貫して上昇傾向を見せていた。一般的な協力関係については良好であるとの認識を持っていると考えてよかった。

ところが2013年になると、一般人では前年から22%ポイントと大きな下落が確認できる。有識者では2014年に同じような動きが確認できる。詳細を見るに、その分「普通」の回答者が増えているのだが、この一年で日米協力関係に劇的なマイナス要因となる事態が起きたとも思えず、また仮に震災関連の反動だとしても、その勢いが大きすぎる。後述するが、調査上の問題があったと考えた方が道理は通る。2014年以降はいくぶん持ち直しは見せたものの(その分「普通」が減っており、「良くない」「意見無し」は前年からさほど変化は無い)、2007年前後の水準にまで逆戻りをしてしまっている。

一方、国全体も含めた包括的なものではなく、国民の視線に降りた形で、両国国民における相互理解度をどのように認識しているかを聞いたのが次のグラフ。「普通」との回答が多い事もあり、「よく理解し合っている」の割合は先の「協力関係一般」と比べれば低い。

↑ 日米両国民の相互理解度(「良く理解し合っている」「普通」「そうは思わない」「分からない」のうち「良く理解し合っている」の回答者)
↑ 日米両国民の相互理解度(「良く理解し合っている」「普通」「そうは思わない」「分からない」のうち「良く理解し合っている」の回答者)

こちらも1990年代前半以降漸増傾向に違いは無い。そして2013年以降の減少傾向も、「協力関係一般」と同じ流れ。詳細を確認すると一般人では2013年以降「そうは思わない」が前年比で9%ポイント増え、「良く理解し合っている」の回答率を削っている。一方で有識者では「普通」が増加の一途をたどり、「そうは思わない」は2012年までとほぼ変わらずの状態にある。

今件はあくまでも日本全体・包括的な日本そのものについて言及していることに注意する必要がある。他の項目では一部影響が及んでいるのも確認できるが(例えばある項目では、2008年のアメリカ合衆国大統領選挙前後に、日本への傾注度が落ちている動きが確認できる)、少なくとも今項目では各調査時期の両国の政権政党や基本政策は、影響を与えていないと見てよい。

また今件項目だけを見ると日米関係が国民ベースで急速に悪化しているようにも思われるが、その一方で「日米関係は今後どうあるべきと考えるか」との設問においては、有識者では「より緊密にすべき」の回答率が増加し、一般人でも「より緊密にすべき」はわずかに減ったのみで、「より緊密にすべきでは無い」は数%のまま。

↑ 日米関係は今後どうあるべきと考えるか(一般人)
↑ 日米関係は今後どうあるべきと考えるか(一般人)

↑ 日米関係は今後どうあるべきと考えるか(有識者)
↑ 日米関係は今後どうあるべきと考えるか(有識者)

有識者の間では「日米関係は国民レベルでは後退しているようにも見えるので、日米間はより緊密になる必要があるのでは」と憂いているとの解釈もできる。ただし直近年の2015年では「緊密にすべきでない」との意見が多少増えているのも気にかかる。他方一般人の間ではいくぶん相互理解度が薄れている感は否めないが、それでも現状維持派及びより緊密にすべき派が多数を占めていることに違いは無い。



先行記事【日本が一番中国二番…アメリカ合衆国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移をグラフ化してみる(最新)】の文末で詳しく解説しているが、2013年分以降の調査は従来のガートナー社からハリス・インタラクティブ社、そしてハリス社を買収したニールセン社(調査の直接担当は元ハリス社の部局のようで、調査名はハリス調査となっている)に調査依頼会社を変更している。これは2013年の依頼時にガートナー社で不祥事疑惑が持ち上がったからとのこと。また質問様式や調査対象母集団層など(表面上はともかく内情的に)変化が生じている可能性は高く、実際いくつかの面でそれが事実であることが確認されている。

例えばPew Research Center社のように調査要項の詳細(methodology)が記載されていればある程度状況を推し量れるのだが、それについては外務省側でも把握はしていないとの回答を得ている。先行分析記事でも、特に一般人の項目で2012年までと2013年以降との間における、イレギュラーと思われる値をいくつか見つけることができる。また、結果を算出する際のカウント方法が変わっているため、突出した結果が出ている項目事例もある。

特段変わった重大事件・外交問題が日米間で起きておらず、また対日批判の動きが急速に高まったという話も聞かず、他の調査機関の調査結果でもそのような兆しは見受けられない。無論アメリカ国内の情勢として、エネルギー問題や財務関係の変化、当時政権を握っていた民主党の基本施政方針などが影響している可能性は否定できない。

2015年分の調査結果に関しても、一部の項目で2012年までとの連動性で説明がつきにくい結果が出ている。アメリカ合衆国国内、さらには国際情勢の環境変化によるものでなく、調査様式の変化に伴う影響もあるかもしれない。2012年までの動向との比較において、慎重にその内容を判断した方が望ましいとの断りを入れておく。

また今件はあくまでも2015年分の結果であり、現在のアメリカ合衆国の実情を反映しているものでは無いことにも留意をする必要がある。当時のオバマ治世と、現在のトランプ大統領下のアメリカ合衆国では、対日姿勢も少なからぬ違いが生じていることは否めない。現状を推し量るには少なくともあと2年、次々回の調査結果を待たねばなるまい。