『二次元すぎる祖父の話』(丹堂エンヂ/リブレ出版)

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 自分の祖父や祖母がどんな人間で、どのような人生を送っていたのか、あなたは詳しく知っているだろうか? 私には90歳近い祖父母がいるが、年に1回会うか会わないか程度に疎遠な存在で、その一生を詳細に聞いたことはない。今まであまり興味もなかったのだが、『二次元すぎる祖父の話』(丹堂エンヂ/リブレ出版)を読んでから、関心を抱くようになった。……もしかしたら、うちのおじいちゃんも、二次元キャラクターばりに、カッコイイ人生を送っていたかもしれないから。

 著者の祖父たちは、知れば知るほど、「二次元かよ!」とツッコミたくなるほどの濃いキャラクターで、その一生は「ネタかよ!」と思えるような出来事が満載だった。

 著者の母方の祖父・舞田團二(まいだ・だんじ)は、大正後期に生まれた。幼少期の事故で右目は見えず硝子玉だったが、剣道と居合の達人だったという。社交的で情に厚く、友達の数は100人以上。しかもお金持ちのお坊ちゃん。しかし、かなりの寂しがり屋だったらしい。奥さんが大好きで、家にいないと分かるとわざわざ探しに行くほどだったとか(武道の達人でやんちゃなのに、奥さんラブで寂しがり屋とか、萌える……)。

 一方、父方の祖父・丹堂鮮二(たんどう・せんじ)は、大正中期生まれ。三菱製鋼の人事経理を担うエリートサラリーマンで、冷静沈着、容姿端麗。シャネルの香水を愛用し、高級スーツを着こなすモダンボーイ。けれど極端にシャイで無口。仕事のストレスで胃潰瘍になってしまうほど「心身ともに最弱」だった。

 おしゃべりで明るい團二と、無口でクールな鮮二。もはやキャラクター設定だけでも、二次元感の強い二人だが、自身の両親や親族から二人のエピソードを集めれば集めるほど、「面白すぎる」「驚きの話」ばかりだったようだ。

 本作は基本的に祖父たちの逸話を面白く描いているギャグ。ほっこり笑えて時々しんみりする短編マンガがほとんどだ。しかし、團二祖父の遺した手記をもとにした、戦時中の話も載っている。

 第二次世界大戦の真っ最中、商売のため中国にいた独身時代の團二祖父は、日本の敗戦に伴い、激動の中を中国から帰国することに。コメディとして描かれているのだが、当時、中国にいた日本人が数々の困難に直面し、命の危険を感じながらも必死に帰国したことが分かる。

 戦争の「悲惨さ」とまではいかなくとも、「大変さ」や戦争に翻弄された人々の悲哀が感じられた。また、こういった一般人の「生の声」は、貴重な歴史史料になり得るのではないだろうか。本作はもちろんマンガとしても面白いが、こういった歴史の「証言」を読めることにも、価値があるように思う。

 本作は、芸能人の家族史を追った某テレビ番組を観たことをきっかけに、著者が軽いノリで身内用に描いたものがベースになっているそうだ。この夏、あなたも気軽に祖父のことを調べてみてはいかがだろうか? 自分の祖先を知れば、脈々と受け継がれてきた命のバトンを、今は自分が持っていることに気づくかもしれない。

文=雨野裾