まるで潮が引いた海岸に飛行機が駐機しているような大連空港(中国南方航空日本地区のフェイスブックページより)

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 今夏の東京や東日本は連日の雨で冷夏となり日照不足が野菜などへ与える影響が心配される一方で、西日本は記録的な酷暑続きと異常気象となったが、日本海を挟んだ中国の大連も異常な夏となっている。

 7月上旬、東京でも最高気温が30度に届かないときに、大連では連日35度を記録。中旬には39度を記録した日もあるなど大連生まれの中国人も「今年は生まれてから一番暑い」と嘆くほどだった。

 ちなみに、中国は法律で40度を超えると工事現場など外での作業を全面停止にしなければいけないと定められている。そのため特に経済活動へのダメージが懸念される都市では、記録上の最高気温は39.9度と発表されることが通例となっている。

 実際は40度を超えていたのではというほどの暑さだったが、救いは、大連の緯度は盛岡市くらいなのだが、大陸特有の乾燥した風の影響で30度を少し超える真夏でも湿度が低いことだ。そのため気温ほどは暑くは感じない気候の土地だ。

 そんな大連で7月25日と8月4日、13日と3度のゲリラ豪雨が襲い空港や中心街の市場、大型スーパーマーケットが水没する被害を出した。

 記者は大連の夏を15回ほど見てきたが、大雨で大連の街が水没する光景は見たことない。しかもひと夏で3度など前代未聞の異常事態だ。

 そもそも大連は、日本同様に四季はあるが、梅雨がないので、年間降水量は東京の3分の1くらいの年間600、700ミリほどで、もっとも降水量が多い7、8月でも、梅雨明けの東京と同じくらいの月150、160ミリくらいだ。

 乾燥した気候のためか排水設備があまり整っておらず、ちょっとした雨やまとまった雪が降ると排水が詰まるような光景は過去にもしばしば見かけた。それが、今回の異常なほどのゲリラ豪雨で、被害をさらに悪化させたと言える。

◆交通インフラが麻痺し、窃盗団も!

 今回の3度のゲリラ豪雨のうち1度目と2度目は広範囲に降り大きな被害が出た。大連市気象庁は7月25日午前中、数時間にわたり1時間に50ミリ。8月4日早朝には1時間に70ミリ〜90ミリの猛烈な雨が降ったと発表している。その結果、空港の滑走路は水に浸かり、空港へ向かう幹線路の一部は自動車が半分くらい埋まるほどの水位に達して動けなくなり孤立。日系IT企業も多い大連市南西部のソフトウェアパークも水没し、浮島のようになり、交通インフラが麻痺した。

 水自体は1日ほどで引いたものの残ったヘドロから出る鼻を突く異臭が大連を覆うことになった。一部商店や家屋から流れ出た商品や物を盗む窃盗団も現れたため住宅街では住民らが自警団を結成して見回りをしたりするなど治安も急速に悪化した。

 その後も雨は断続的に降り、13日午後に3度目のゲリラ豪雨が大連を襲った。3回目は局所的だったため被害は少なかったが、大連港に近い巨大衣類市場がある二七広場が水没し、市場内をゴーゴー音を立てながら茶色い濁流が勢いよく流れるのを店の関係者が流されないようにしがみつきながら、ただ呆然と眺めていた。

 二七広場近くの三八広場にあるスーパー「カルフール」も浸水し地下駐車場が水没。車が船のようプカプカと浮かんでいた。2015年5月から運転を始めた地下鉄もホームや線路へ滝のようにドボドボと雨が落ちてきて、一部区間が運行停止となった。

 大連を襲った3度のゲリラ豪雨は今年の連続降雨記録の東京と同じく何十年に1度の例外かもしれない。しかし、大連は元々排水インフラが弱く市民からは都市インフラの不備についての不満の声が挙がることになる。

 大連市民の一部では、1年前に突如切り崩された「華表」の怨念だという噂も囁かれた。アジア最大面積を誇る星海広場の中央に香港返還を記念して建てられた 華表は、権力闘争に敗れて失脚した薄煕来元市長が建てたものだった。 華表は、本来、皇帝廟を守護する役割だったため、 華表の守護がなくなったからこんな豪雨被害に襲われたのだとボヤくような話題に。

 その他にも多くの自動車が水に浸かり廃車になったため、これらの車を修理して販売されると見た目や走行距離以上に故障しやすいと当面、大連で中古車は買うなという話も挙がっている。

 薄煕来時代からそうだが、90年代以降、急激な経済発展で大連は発展を遂げたが、きらびやかでシンボル的な高層ビルや箱物ばかり優先されて、市民生活の基礎となるような目に見えない排水インフラなどの整備が後回しにされてきたことへの憤りを口にする大連人も少なくない。

 今、大連に限らず中国の各都市は、都市住民の生活水準を上げていくための次の段階へと差し掛かりつつあるといえるのだろう。 

<取材・文/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma)写真/中国南方航空日本地区)