2016年(1月-12月)に全国で設立された「合同会社」は2万3,704社(前年比7.8%増)で、2008年の調査開始以来、8年連続して最多を更新。2016年の設立法人12万7,829社(前年比2.1%増)のうち、18.5%を占めた。構成比も前年を0.9ポイント上回り、過去最高を記録した。
 これまで中小・零細企業の受け皿は「有限会社」だったが、2006年5月1日施行の会社法により「有限会社」が廃止され、新たに「合同会社」が導入された。「合同会社」は「株式会社」より設立時のコストが抑えられ、設立までの手続き期間も短い。また、税制面のメリットも大きく、法人設立時に選ばれやすくなっている。出資比率に左右されず利益配分が可能であるなど経営の自由度が高く、大手や外資系企業の設立も多い。
 合同会社は起業する際、法人化手続きのハードルを下げ、同時にメリットも大きく、今後も右肩あがりの展開が期待されている。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象327万社)から「合同会社」を抽出し、2016年の新設法人と過去の新設法人データを分析した。

新設法人の5社に1社が合同会社

 2016年の新設法人のうち、「合同会社」は2万3,704社で、前年比7.8%(1,723社)増加した。ただ、急伸した増加率は、2014年の36.5%増から一転して2年連続して鈍化している。これは、増加をけん引していた「電力事業者」の「合同会社」が、2014年の1,821社をピークに、2015年1,200社、2016年957社と急減したため。太陽光関連事業者が同一所在地に複数の「合同会社」を設立するケースが多く、太陽光バブルの終焉と同時に、勢いが沈静化している。
 新設法人に占める構成比は、「合同会社」は年々上昇。2012年の10.3%が、2016年には18.5%まで上昇。新設法人のうち、5社に1社が「合同会社」を選択している。

産業別 金融・保険業以外の9産業が増加

 産業別でみると、10産業のうち金融・保険業を除く9産業で、前年より新設法人数が増加した。構成比は、サービス業他が41.0%でトップ。増加率トップは、農・林・漁・鉱業で22.7%増。農・林・漁・鉱業は、法人化の際に障壁が低い「合同会社」が選ばれているようだ。

業種別 不動産業が急増

 業種別でみると、社数のトップは不動産業で4,478社(構成比18.8%)。2014年(2,647社)、2015年(3,755社)と年々増加をたどっており、マイナス金利を背景に貸家などの不動産投資に積極的で、相続税対策を含めた不動産業進出に「合同会社」が選ばれているようだ。
 一方、減少が目立ったのは電気・ガス・熱供給・水道業で前年比20.3%の減少。再生可能エネルギーの固定買取価格の引き下げなどから太陽光バブルが弾け、減少傾向が顕著になっている。

都道府県別 新設法人数は東高西低

 都道府県別では、最多は東京都の7,937社(前年比4.4%増、構成比33.4%)。次いで、神奈川県の1,766社(同6.3%増、同7.4%)、大阪府の1,539社(同14.3%増、同6.4%)の順。
 33都道府県で前年を上回り、増加率のトップは、富山県の前年比46.6%増。次いで、秋田県の同38.6%増、石川県の同34.4%増と続く。一方、減少率では、山梨県の同35.1%減を筆頭にして、熊本県が同31.0%減、鳥取県が同21.6%減の順。
 地区別では、9地区すべてで前年を上回った。増加率トップは、北陸の前年比30.7%増(277社)でトップ。次いで、東北が同16.4%増(860社)、北海道が同15.9%増(1,020社)と続く。一方、増加率が最も低かったのは、九州の同0.5%増(2,471社)だった。


 「合同会社」の新設法人数は年々増加し、開業率アップに寄与している。最近はマイナス金利で不動産投資を行う個人が、設立が容易な合同会社を利用しているケースも増えている。
 「合同会社」のメリットは、設立手続きが容易で設立費用も抑えられ、会社の意思決定も迅速にできることが大きい。そのため、外資系企業の子会社、ベンチャー企業なども「合同会社」を選択するケースも多く、新設法人だけでなく株式会社からの組織変更も増えている。
 ただ、株式会社など他の法人格に比べて馴染みがなく、低い浸透度が人材採用面などで不利になる可能性は否めない。また、決算公告の義務がなく、株式上場できず企業実態の秘匿性が高い面が、逆にマイナスになりかねない。こうしたメリット、デメリットもある「合同会社」の中には安易に甘い事業計画で設立された会社も混在している可能性も払拭できない。
 「合同会社」のメリットを生かしつつ、これらのマイナス面をどう改善していくか。「合同会社」が定着するには、まだ克服すべき課題は多い。