10ゴールを叩き出している攻撃陣と無失点を維持している守備陣が噛み合って、開幕3連勝のロケットスタートを切ったマンチェスター・U。 (C) Getty Images

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 今シーズンのマンチェスター・ユナイテッドは強いのか?  プレミアリーグでの3試合を終えた段階で、印象は「強そう」から「本当に強い」へと早くも変わり始めている。
 
 唯一の開幕3連勝を飾ったマンチェスター・Uは、10得点・0失点という完璧とも言えるスタートを切った。まだ、強豪対決はなく、ウェストハム戦(〇4-0)、スウォンジー戦(〇4-0)、そして8月26日のレスター戦(〇2-0)と、格下相手の3戦ではあるが、逆にそれが今シーズンの強さの証とも理解されている。
 
 昨シーズンのプレミアリーグで6位に終わったマンチェスター・Uは、格下を攻めあぐねての取りこぼしが目立った。20チーム中最多の15引分けのうち11試合が、7位以下との対戦だった。それが今シーズンは確実に格下を叩いて3ポイントを奪っているのだ。
 
 しかも、本拠地オールド・トラッフォードで取れたことも大きい。「開幕3連勝は昨シーズンと同じだ」と、努めて冷静な指揮官のジョゼ・モウリーニョも、「今シーズンはホームで勝てている」と語る。

 昨シーズンは7節のストーク戦から4戦連続で引き分けたため(最終的に10分け)、本拠地が、これまでの愛称「夢の劇場」をもじって「引き分けの劇場」と呼ばれたりもした。
 
 だが、今シーズンは、今夏の移籍市場で獲得した大型CFのロメル・ルカクが2得点デビューを飾り、『BBC』の解説者で、元イングランド代表FWのアラン・シアラーが、「モウリーニョ体制下で最高の圧勝」と評した開幕戦から、オールド・トラフォードは本来の姿を取り戻している。
 
 そんなホームでの2戦目となったレスター戦では、カウンター狙いの相手にしぶとく守られ、さらに好セーブを連発した相手GKキャスパー・シュマイケルにルカクのPKまで止められたが、最後には勝負を決めてみせた。
 
 70分の先制点はCKから生まれたが、セットプレーでの怖さも昨シーズンとは段違いにある。ルカクの他にネマニャ・マティッチという194センチの大型ボランチをチェルシーから加え、そのほか長身のターゲットをなど、5、6人が相手ゴール前に居並ぶ光景は迫力満点だ。
 
 敵の守備陣にすれば、空中戦で競り負けることに加えて、マークし切れない不安もある。先制点の場面では、ゴール正面でフリーになっていたマーカス・ラッシュフォードが難なく右足でフィニッシュしている。
 絶妙なボールで先制点を演出したヘンリク・ムヒタリアンは、3試合で5アシストをマーク。2節には、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれたチャンスメーカーは、2年目のモウリーニョ体制で本領を発揮し始めた1人に挙げられる。
 
 がしかし、今シーズンのマンチェスター・Uで見違えるパフォーマンスを見せているのは、やはりポール・ポグバだろう。
 
 モウリーニョ体制下と同じ2年目を迎えた攻撃的MFは、2ボランチの相棒であるマティッチに背後を守られながら、より相手ゴールに近い位置で存在感を発揮するようになっている。レスター戦では、強力なミドルで3試合連続得点にも迫った。
 
 ハイレベルな選手たちがやるべきことをやり、チームとして勝つべくして勝つようになった今のマンチェスター・Uは自信に溢れている。ズラタン・イブラヒモビッチにおんぶに抱っこの状態だった昨シーズンとは全く違う。
 
 そして、チームはその「自信の塊」というべきイブラヒモビッチとも新たに1年契約を締結した。まだ、膝の故障からのリハビリに努めているが、遅くともシーズンの後半戦には復活の目途が立っている。
 
 現在、ラッシュフォードとアントニー・マルシアル、さらにルカクが演じているFWのポジション争いに、昨シーズンのプレミアリーグで17ゴールを決めた35歳の大砲が加われば、ライバルたちにとってはまさに悪夢だろう。
 
 現地時間9月9日のストーク戦(4節)で、開幕4連勝を収めれば、「今シーズンのマンチェスター・Uは強い」という印象はより一層に高まるに違いない。
 
 昨シーズンは69ポイントに止まった勝点も、格下と引分けた11試合のうち9試合を勝利に変えれば、歴代プレミア王者の平均86ポイント(20チーム制での過去22年間)を超えるが、はたして――。

文:山中忍
 
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。