オピオイド鎮痛薬「オキシコンチン」(2017年8月10日提供)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】シーラ・バーテルズ(Sheila Bartels)さん(55)は鎮痛剤510錠の処方箋を手にオクラホマ(Oklahoma)州にある主治医の診療所を後にした──同日後刻、彼女はこの鎮痛薬を過剰摂取して死亡した。

 バーテルズさんの主治医だったレーガン・ニコルス(Regan Nichols)被告は、鎮痛薬「オキシコンチン(Oxycontin)」などの過剰摂取により死亡した患者5人に対する第二級殺人の罪5件に問われている。同被告が患者らに処方したオピオイド鎮痛薬は、長期間服用すると依存症に陥る危険性が高い。

 カリフォルニア(California)州スタンフォード大学(Stanford University)のデービッド・クラーク(David Clark)教授(麻酔学)は、「医師らには『オピオイド・クライシス(鎮痛剤危機)』に対する大きな責任がある」と語る。

 クラーク教授は、医師など医療供給者や監督機関に対する新しいトレーニングとガイドラインを作成した米政府主催のオピオイド・クライシス研究委員会のメンバーでもある。

 米国には現在、鎮痛剤依存症患者が200万人いるとみられている。依存症患者の多くは、処方箋が切れた後に鎮痛剤の違法入手を試みるとされるが、中には切羽詰まってメキシコの麻薬密輸組織が米国に持ち込んだ覚せい剤や合成鎮痛剤に手を出す人もいるという。

 鎮痛剤の過剰摂取で死亡する米国人の数は1日平均90人に上る。1999年以降では、18万人以上が命を落としている。この中には、強力な鎮痛剤フェンタニル(fentanyl)の過剰摂取で死亡した米人気ポップ歌手プリンス(Prince)さんも含まれている。死去当時、彼はまだ57歳だった。

 オピオイド鎮痛剤をめぐっては、米国の医師による処方が世界で最も多く、同国内の全ての成人を治療するのに十分な量ともされている。

■大量の薬を処方する医師や診療所「ピルミル」

 鎮痛剤を過剰に処方する医師がニュースとして取り上げられる中、専門家らは、オピオイド・クライシスが医師だけの責任ではなく、米国の医療制度そのものに問題があると指摘する。

 鎮痛剤の依存患者が増えるにつれ、その需要に対応すべく「ピルミル(Pill mill)」が米国内の各地に登場し始めた。ピルミルとは、大量の薬を処方する医師や診療所の呼称で、金銭さえ払えば誰でも薬を購入できるのが特徴だ。

 そのうちの一つが、オハイオ州の貧しい町ポーツマス(Portsmouth)にあった。以前は、他州との州境に位置するこの街に薬を求めて依存症患者が数多く訪れていたため、ピルミルは街の経済の一部を成していた。

 しかしその後、州政府や地元警察当局が介入してピル・ミルを閉鎖し、運営者の医師が逮捕された。また診療所に対しても、以降は信用ある医療プログラムとの提携が義務付けられた。

 オピオイド依存患者らは、合法的に処方された薬から依存症に陥った人々が多い。ポーツマスの依存症患者たちも、ある特定のグループに属しているということはなく、その社会的なバックグラウンドは多様だ。

 患者たちは中毒症状克服への長期間の補助を必要としていたため、地元当局は、医療サービスおよび依存症治療により一層力を入れた。その結果、それまで鎮痛剤依存症患者の避難所となっていた街は、依存症克服のための場所に生まれ変わった。

 この状況について、地元警察のロバート・ウェア(Robert Ware)署長は、米国の他地域に比べ、ポーツマスでは鎮痛剤過剰摂取が減少していると話した。

 米国では薬物の過剰摂取による死者が増加傾向にあり、2016年は6万人にまで上ったと推定されている。オハイオ州やウェストバージニア(West Virginia)州などで特にその数は多い。

■鎮痛剤依存症問題解決ための別のアプローチ

 オハイオ州のマイク・デワイン(Mike DeWine)検事総長は、鎮痛剤依存症問題を解決するために別のアプローチを取っている。医薬品会社を州の裁判所に提訴したのだ。「医薬品会社は鎮痛剤依存症の拡大に対する責任がある。この問題を作り上げたのは医薬品会社だ。これを解決するために、彼らが自ら手を打たなければならない時だ」と同州検事総長は語る。

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)によると、少なくとも米国内の25の自治体が同様の手段を取っているという。

 米政府は、医薬品会社が2018年度に生産できるオピオイド鎮痛薬の総量を20%減らすことを提案している。しかし、医師たちは今も嬉々として鎮痛剤の処方箋を書き続けているのが現状だという。

 米疾病対策センター(CDC)によると、オピオイド鎮痛薬の処方箋そのものは減少傾向にあるものの、その数は2013年だけでも2億5000万に上ったという。

 クラーク教授は「医師は自分たちの書いた処方箋が、鎮痛剤依存症問題の原因となっている事実を完全に受け入れていない」と米国社会を取り巻く状況について話し、また「これらの鎮痛薬が痛みを有効に和らげることができるという明らかな証拠は元々どこにも存在していない。特に、長期間にわたる有効性は分かっていない」ことを指摘した。
【翻訳編集】AFPBB News