日本代表に招集された92年生まれの選手たち。左から杉本健勇、昌子源、柴崎岳、小林祐希、武藤嘉紀【写真:Getty Images】

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早くから才能を評価されてきた「プラチナ世代」

 8月24日、日本サッカー協会は2018年ロシアW杯アジア最終予選オーストラリア戦(8/31)、サウジアラビア戦(9/5)に臨む日本代表メンバーを発表した。その27名のうち、5人を占めたのが92年生まれの選手たち。「プラチナ世代」と呼ばれてきた彼らが25歳を迎える今年、日本代表でのブレイクに大きな期待が集まる。(取材・文:元川悦子)

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 2018年ロシアワールドカップ出場権のかかる8月31日のオーストラリア(埼玉)、9月5日のサウジアラビア(ジェッダ)の重要な2連戦に向け、日本代表が27日に埼玉県内に集合。初日は槙野智章(浦和)を除く国内組9人と長谷部誠(フランクフルト)、大迫勇也(ケルン)、酒井高徳(HSV)の欧州組3人の12人が参加し、ランニングやボール回しなどの軽いメニューを消化した。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は3月以来の合流となるキャプテン・長谷部や所属クラブでリーグ2戦連続出番なしの酒井高徳を順番に呼んで個別にミーティングするなど、個々の状況把握に努めた。2015年5月の国内組候補合宿に呼んだだけで、事実上の初招集となった杉本とも入念な会話を交わした。

「ゴール前のところであまり引きすぎず、ゴール前へどんどん入っていくように、ゴール前で勝負しようと言われました。次はホンマに大事な試合。それは来てみて改めて感じますね」と187cmの大型FWは神妙な面持ちでコメントしていた。

 ハリル監督は「2年間ずっとチェックし続けていたが、非常に質が高く、体格もあり、進化している。ここに呼べるのを嬉しく思う」と高評価。同じセレッソの先輩・山口蛍も「高さという部分は武器になると思うし、オーストラリアの屈強なDFにも負けないフィジカルを持ってる。終盤から出てくる可能性は十分ある」と即戦力としての大型FWに太鼓判を押していた。

 その杉本を筆頭に、6月のイラク戦(テヘラン)で吉田麻也(サウサンプトン)とセンターバックコンビを形成した昌子源(鹿島)、2年ぶりに代表復帰した柴崎岳(ヘタフェ)、1年ぶりの復帰となる武藤嘉紀(マインツ)、昨年11月以来の合流となる小林祐希(ヘーレンフェーン)はいずれも92年生まれ。

 今回外れた宇佐美貴史(アウグスブルク)を含む彼らは「プラチナ世代」と呼ばれ、早いうちから才能を高く評価されてきた面々だ。

「今の中心選手たちが抜けたら」とは言わせない

 関西出身の杉本、昌子、宇佐美は小学校時代に関西トレセンで一緒にプレーした間柄。杉本、柴崎、小林もU-17代表でともに戦ったことがある。最終的に小林は2009年U-17ワールドカップ(ナイジェリア)から落選したが、それが糧になったと話す。

「10代の頃、評価されていたプラチナ世代の選手は、球扱いに優れていて、自分がいい形でボールを持てたら素晴らしいプレーができるタイプが多かった。だけど、後からA代表になった選手はそうじゃない。自分も宇佐美みたいなうまい選手を見てプライドをへし折られたし、武藤も昌子も技術はそこまでじゃないかもしれないけどタフに戦える。そういう個性は大きい」というレフティの説明は、まさにその通りだろう。

 ハリル監督に満を持して抜擢された杉本にしても、単にうまいだけでなく、1〜2年でゴールへ突き進む貪欲さと力強さを前面に出せるようになり、結果もついてきたからA代表に引っ張られた。ロシア行きを左右する最終決戦に大量5人が呼ばれた事実はやはり見逃せない点だ。

「長谷部さんや本田圭佑(パチューカ)さんといった今の代表の中心選手たちが抜けたら、日本はアジアですら勝てない時期が続くかもしれないと思われてるけど、そんなの冗談じゃねえって感じ。そんなこと絶対言わせない」と小林は独特な言い回しでプラチナ世代の重責を語っていたが、それは他のメンバーにも共通する思いだろう。

「今回の代表は92年組が多い。新しく呼ばれた健勇はヘディングの競り方に長けていて、ウチのナオ(植田直通=鹿島))があれだけ苦戦するのはあんまり見たことがない。やっぱりすごい選手だと改めて感じました。岳も長谷部さんみたいに『こいつについて行ったら勝てるんじゃないか』って思わせる雰囲気を持っている」と昌子は同世代へのリスペクトを改めて口にする。

 一方の杉本も「昌子のような選手が後ろにいてくれたら心強い」と26日の鹿島戦後に神妙な面持ちで話していた。そうやって彼らがお互いに敬意を払いつつ、切磋琢磨し、成長していけば、日本代表の若返りはより一層進むに違いない。

先発出場が有力視されるのは昌子

 さしあたって、今回のオーストラリア決戦に限ってみると、先発出場が有力視されるのは昌子。すでに吉田との新コンビ結成がスタートし、本人も手ごたえを得ている。

「いつも以上にプレッシャーはあると思うけど、それに押しつぶされるようでは選手としてダメ。プレッシャーもポジティブに楽しみに変えていけるくらいのメンタルを持っていたい。オーストラリアの球際はJリーグとは違うところがあるし、平気で両足スライディングもあるし、FWのユーリッチ選手のキープ力もすごい。注意したい」と24歳のDFは詳細に相手を分析し、ポイントを絞っている様子だった。

 そうやって具体的なイメージを描くことは勝利に向けて必要不可欠。彼には長谷部や吉田に匹敵するリーダーシップを求めたい。

 杉本、柴崎、小林、武藤に関してはいきなりの先発は難しいかもしれないが、どこかで出番が訪れる可能性はある。とりわけ、杉本は日本が勝っていても負けていても、終盤の切り札起用が少なからず考えられる。「やれる自信? 自信がないなら代表を辞退した方がいい」と鹿島戦後にキッパリ言い切った通り、今季J1で14ゴールを奪っている男は自信満々だ。

「ずっと目指していた場所だし、監督も名前を出してくれていた。それでも呼ばれていなかったので、ずっと悔しい思いもしてきた。でも、この大一番で来ることができたので本当に力になりたいという気持ちが強い」と彼も語気を強めた。

 杉本が今、やるべき仕事はゴールを奪うこと。極めてシンプルだが、最も難易度の高いテーマでもある。それを遂行し、日本代表に新たな風を送り込むことができるのか。そこは注目すべき点だ。

 これから合流する3人を含め、今年25歳の円熟期を迎える92年組のブレイクに大きな期待を寄せたいものである。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子