フォードの「次世代モビリティ」戦略 デリバリーにも進出へ

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今から1年前、フォードは自動運転車による配車サービスを2021年までに開始すると宣言した。5月に新CEOに就任したジム・ハケットはさらに野心的な目標を掲げ、オンデマンドのデリバリーサービスも立ち上げ、モビリティ事業の早期収益化を目指す考えを表明した。

「我々は新事業の立ち上げに際し、人とモノの両方を運ぶビジネスに大きな将来性を感じている。2021年までに配車サービスとデリバリー事業の両方を立ち上げたい」と、同社の自動運転部門の新責任者に就任した副社長のSherif Marakbyはフォーブスの取材に応えた。

Marakbyは長年フォードでエンジニアを務めた後、ウーバーに1年間勤め、今年6月にフォードに返り咲いていた。彼はMediumに投稿した「Building a Business Enabled by Self-Driving Technology(自動運転技術を使った新規事業の構築)」と題したブログの中で、「我々が開発する車両はハイブリッドなパワートレインを搭載し、人と荷物の両方を運ぶことのできるフレキシブルなデザインになるだろう」と述べている。フォードは、事業を早期にスケール化させることにも重点を置いている。

「規模の拡大によってコストを低減できる。我々は警察やタクシー向けのフリート事業に長年携わっており、車両の信頼性や耐久性を向上させる術を熟知している」とMarakbyは話す。

これまで、投資家たちはテスラやウーバー、リフトといったトランスポテーション業界の変革を目指す新興企業に多額の資金を投じてきた。一方で、フォードやGMなどのレガシーな自動車メーカーによる取組みは、市場からまだそれほど評価をされていないのが実情だ。

スタートアップの買収も推進

8月21日時点での各社の株価は、フォードが年初から13%下落、GMはほぼ横ばい、トヨタは3.8%下落となっている。これに対し、テスラはイーロン・マスクが今後1年で全車両に自動運転機能を搭載すると宣言したことなどが評価され、株価は年初から58%も上昇している。

フォードの前CEO、マーク・フィールズは、2016年8月に自動運転車によるライドシェア事業の立ち上げを宣言した。同社は、LiDAR大手のベロダインに7500万ドルを出資したほか、サンフランシスコの乗り合いバス企業「Chariot」を買収し、シリコンバレーの研究所の人員を倍増するなど、自動運転事業を強化している。

また、今年初めには自動運転用AIを開発するピッツバーグのスタートアップ、「Argo AI」に今後5年間で10億ドルを出資することを表明している。

ハケットは、昨年までフォード傘下の自動運転企業「Ford Smart Mobility」の責任者を務め、テック企業の買収をはじめ、ウーバーやリフト、テスラ、アルファベット傘下のウェイモなどに対抗するための戦略策定を担ってきた。

ハケットは、自身のこれまでの経験と、フォードが持つ乗用車やフリート車両の生産・販売のノウハウを活かし、新たなモビリティサービスの構築を目指すとしている。ハケットは、フォードが今月サンフランシスコで主催したカンファレンス、「City of Tomorrow Symposium」に登壇し、次のように述べている。

「フォードはこれまで、既存の自動車事業以外は全て”モビリティ”と一括りし、別事業として扱ってきた。モビリティと呼ぶことは、長期的な取組みとして位置付ける上で好都合だったのだ。今後は、モビリティも合わせて一つのフォードとして展開していく」。

カンファレンスでは、自動運転車がもたらす変化や、ますます悪化が予想される都市部の渋滞の緩和策について協議された。ハケットは、自動運転車の開発と合わせて、収益を生むサービスを構築することで渋滞問題に対処していく方針を示した。

走行中の車両から取得したテレメトリデータやリアルタイムの交通情報を活用し、都市のスマート化を推進するという戦略も考えられるが、ハケットは自動運転車以外の構想に関してコメントを避けた。

「フォードをはじめ、メーカー各社がスマートカーの開発に取り組んでいるが、環境の整備こそがスマートカーの普及において非常に重要だと考えている。我々は、スマートシティの到来に備えて準備をしていきたい」とハケットは言う。