「悪いようにはしない」が招く最悪の事態

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■ウソの常套句を知って悪意から身を守れ

ビジネスの世界はホンネとタテマエ。人間関係に波風立てず上手に相手の顔を立て、物事がすんなり進むよう、3割くらいのウソが混じるのは当たり前。「今日は決める」と言われれば精一杯の見積もりを出すし、「期待してる」と言われれば少しはヤル気もわいてくる。

だが世間にはこの常識を悪用し、人を利用し騙す輩もいるから厄介だ。たいていは「信じたこちらが悪かった」と泣き寝入りだが、期待のぶんだけダメージも深い。

悪意のウソから身を守るには、ケーススタディを学ぶこと。優しい言葉には毒がある。こんな言葉を聞いたら心に警戒警報を打ち鳴らせ!

■[仕事の依頼]「悪いようにはしないから」が最悪の事態を招く!

◆case1 「信頼している」と言って無理難題を押し付けてくる
金額を明言せず納期だけ押し付けてくる取引先

【取引先】 御社も大変だと思うけど、ぜひ引き受けてもらえないか?

【自分】 しかし、いまは手いっぱいでとてもここまでは…

【取引先】 まあ、そう言わずに。こういうことを信頼して任せることができるのはおたくしかいないんだ

【自分】 ありがとうございます。では期日と予算の件ですが…

【取引先】 実のところ日数はないので、すぐにでも取り掛かって、なるべく早くあげてくれるかな? あ、金額はこちらに任せて。もちろんもろもろ考慮して悪いようにはしないから

【自分】 はぁ…

【取引先】 ここはお互いの信頼でね
この件がうまくいけば社内のコンセンサスも得やすくなって、次回からはもっといい条件で出せると思うよ

◆case2 「いまの技術ではこれが限界」は技術職や研究職の逃げ口上
こちらがわからない専門領域を口実にする技術者

【自分】 ここはもうちょっと改善できないものだろうか?

【技術者】 ええ、ここは無理ですね。いまの技術ではこれが精一杯なんです

【自分】 でもB社はここのところもクリアしてるじゃないか

【技術者】 それは条件が違うんですよ。こちらをとればあちらに不具合が出てきますし、全体のバランスが大事になってくるところなんで

【自分】 しかし、これでは他部署の賛同が…

【技術者】 ここは専門家の意見を信用してくださいよ
完成時期にも関わってもっとやっかいな事態になってしまいますよ

■ウソに動じず騙されず先回りして封じ込め!

ビジネスはお互いを信頼するところからしか始まらない。関係継続に期待するなら多少の無理も聞いておこうかとなる。

「ケース(1)の場合など、引き受ければどんどん追加の無理難題がくるでしょう。『悪いようにはしない』と聞いた場合、たいていもっと悪いことになります。しかし、それもこちらに“そういうものだ”と心の準備があれば、受け止めることができる。不測の事態にオロオロしないのが大人のたしなみです」(コラムニスト 石原壮一郎氏)

逆にこちらが仕事を頼んでいるのがケース(2)で、相手はこちらが理解しない専門知識を盾に、煙に巻こうとしている。

「専門家には真正面からぶつかるより“質問をズラす”作戦が有効です。このケースならB社の件はあえて伏せ『この技術で設計した経験はありますか?』『それはいつですか?』『その後、新技術が出た可能性は?』と、逃げ道を塞ぎながら“できる”の返答を引き出すのです」(弁護士 荘司雅彦氏)

相手にウソをつかせない質問力を身に付けることも必要だ。

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石原壮一郎
コラムニスト。「大人としての振る舞い」を題材にした著書多数。ウソに溢れた大人社会で生き抜く術をアドバイスする。
 
荘司雅彦
弁護士。法廷で証人のウソを見破ってきたプロ。著書に『反対尋問の手法に学ぶ嘘を見破る質問力』(筑摩書房)など。
 

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(渡辺 一朗)