ともに勝ち点2を失ったという意味では、痛み分け、になるのだろう。

 いずれもJ2降格圏であえぐ、16位大宮アルディージャと17位サンフレッチェ広島の直接対決となったJ1第24節注目の一戦は、1-1の引き分けに終わった。どちらにとっても、もし勝てば、他の試合結果次第で降格圏を脱出する可能性があった試合は、しかし、双方ともに決め手を欠く結果となった。


気持ちのこもった戦いを見せた大宮アルディージャとサンフレッチェ広島

 2クラブで分け合った痛みを、より多く引き取ることになったのは大宮だろう。

 大宮は試合序盤から、タイミングよく縦パスを打ち込んで相手DFラインの前でタメを作り、2列目、3列目が次々に駆け上がってくる分厚い攻撃を展開。とりわけMFマテウスが精力的に動き回った右サイドからは、何度となく好機が生まれた。前半のうちに1点でも取れていれば、ワンサイドゲームになっていた可能性もあったはずだ。

 だが、攻勢は攻勢でも、得点できない攻勢には”嫌な雰囲気”がつきものなのは、サッカーの常である。案の定と言うべきか、先制点は53分、FWパトリックのヘディングシュートによって広島に転がり込んだ。

 大宮の伊藤彰監督が悔しそうに語る。

「前半はしっかりゲームコントロールしながら何回か決定機を作ったが、決め切れなかった。後半最初の15分に、うちは失点が多く、広島は得点が多いので、パワーをかけていこうと話していたが、そのなかで決められてしまった。もっと気持ちを強く持って(後半に)入らなければいけなかった」

 しかしながら、対する広島にも、わずか1点のリードで劣勢の展開をしのぎ切れるほどの力はなかった。

 失点直後から連続攻撃で広島ゴールに迫り続けた大宮は60分、左サイドで得たFKからDF菊地光将がこちらも頭で決め、たちまち同点に追いついた。

 今度は、広島のヤン・ヨンソン監督が語る。

「試合開始から10〜15分はアグレッシブな大宮に押し込まれたが、その後はうまく守れるようになり、30分を過ぎてからはいいゲームができた。そのなかでいい形で先制できたのに、セットプレーにはもっと注意すべきだった」

 その後は、同点ゴールで意気上がる大宮が攻め続けるも、勝ち越しには至らない。すると、次第に大宮の選手の足が止まり始め、ラスト10〜15分ほどは、広島がボールを保持して攻撃を進め、大宮はただただブロックを作って守りを固める展開へと移行していった。

 結局、どちらも決勝ゴールを奪えないまま試合終了。それぞれ勝ち点1ずつを積み上げるにとどまった。大宮にとっても、広島にとっても、もったいない試合だった。

 どちらがより優勢に試合を進めたかと言えば、大宮だった。だが、1点をリードしたという点で言えば、より勝利に近づいたのは広島である。ともに勝ち点3を手にしてもおかしくない要素がありながら、皮肉にもそろってそれを生かしきれなかったあたりに、残留争いから抜け出せない両者の現実がよく表れていた。

 昨季5位の大宮と、同6位の広島。1年前はともに上位に進出しながら、互いに歩調を合わせるように今季開幕直後から降格圏をさまよう両クラブは、勝ち点や順位といった”外見”ばかりでなく、”中身”もまた非常に似た状況にあると言っていい。

 まずは、シーズン途中で監督交代に踏み切ったこと。そして、その効果が劇的には表れていないことでも共通する。今節を含めた最近5試合のリーグ戦成績は、大宮が1勝2敗2分け、広島が2勝1敗2分けと、白星を並べられない状況が続いている。

 伊藤監督曰く、大宮は「それまで失点が多かったので、(7月のリーグ戦の)中断期間では守備面を意識してトレーニングした」が、その結果、「攻撃のよさ、アグレッシブさが消えてしまった」という。なるほどチーム立て直しの”さじ加減”がいかに難しいかは、この試合にも表れていた。「選手とコミュニケーションを取って、これまでどういうサッカーをしてきたか、に立ち返った」ことで、本来のアグレッシブさは十分に見せたものの、今度は守備が耐え切れず、先に失点してしまっている。

「後ろ(守備陣)がしっかりしていれば、もっと上(の順位)にいける。点を取れる力はあるので、あとは後ろがゼロに抑えられるようにしたい」

 そう語るキャプテン菊地の言葉からは、攻守がかみ合わず、なかなか結果につながらない歯がゆさがうかがえる。

 その一方で、広島もまた、チーム立て直しの作業は一進一退というのが現状である。

 監督交代によってフォーメーションは、広島の代名詞でもあった3-4-2-1から4-2-3-1へと変化。それとともに戦術も様変わりしたのだから、当然と言えば当然だが、かつての流麗なコンビネーションはまだまだ取り戻せていない。

「(戦い方が)不安定なのは確か。練習では(攻撃でのコンビネーションの)形ができてきているのだが、それを試合で意図して出せるかというと……、パトリック頼りなのが現状。形ができなければ、守備のところでどれだけ失点せずに進めるかで精一杯なので、何とか勝ち点を拾う試合しかできない」

 キャプテンのMF青山敏弘はそう語り、表情を曇らせる。数少ないチャンス(広島のシュート数はわずか5本)を生かして先制しながらも勝てなかった広島は、今季初の連勝をまたしても逃す結果となった。

 結局のところ、両クラブとも浮上のきっかけをはっきりとはつかめていない。だとすれば、どちらにも勝つチャンスがあった1-1の引き分けも、残念ながら妥当な結果ということになるのだろう。

 とはいえ、この一戦が十分に見応えのある試合だったことも事実である。うまくいかない部分が多々ありながらも、互いに戦う姿勢を前に出し、ゴール前で際どくせめぎ合う。そんなシーンの連続は、単純にエンターテインメントとして面白かった。

 今季J1も残り10節。確実にカウントダウンは進んでおり、降格圏脱出のチャンスも限られてきた。いかにシーズンが長いとはいえ、過去の例が物語るように、序盤の出遅れを挽回するのは容易なことではない。

 だが、こういう試合を続けていけば、最後に道は開ける。瀬戸際に立たされるふたつのクラブが、そんな期待を抱かせるだけの気持ちや姿勢を見せたことは確かだ。

 ともに勝ち点2を失った、いや、勝ち点1を得た大宮と広島が分け合ったのは、おそらく痛みだけではない。

 望み分け。両クラブにとって1-1のドローは、そう言える結果だったのではないだろうか。

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