名曲も音痴に聞こえてしまう副作用

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声優の小松未可子さんが2017年8月18日に自身のツイッターで、服用している薬の副作用で音が半音下がって聞こえると投稿していた。

あまりにもピンポイントな副作用に特別な薬を服用しているのかと思いきや、小松さんのツイートに反応した多くのユーザーから「フラベリック」という薬の副作用だろうという指摘が相次いでいた。

インターネット上でも「フラベリックを服用すると半音変化が起きる」という情報が複数存在しており、意外によく知られている副作用のようだ。

副作用として記載されている

そもそもフラベリックとはどのような薬なのか。医薬品の品質や安全性、副作用の審査や検証を行っている医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公式サイトでフラベリックの情報を見ると、効果効能として「咳嗽(がいそう)の改善」、つまり咳を抑えると説明されている。具体的には気管支炎や風邪、咽喉炎、肺結核などによる咳を抑制するようだ。

日本では2008年からファイザーによって販売されており、フラベリックというのは商品名で、一般名は「ベンプロペリンリン酸塩」となっている。処方薬なので、ドラッグストアなどで咳止めとして購入できるような薬ではない。

PMDAによる副作用の調査では986例中、発生頻度が最も高いのは3.14%で「口内乾燥」、1.32%で「眠気」、1.22%の「腹痛」。その他にもめまいや発疹、倦怠感なども挙げられている。発疹が出た場合は過敏症である可能性があるためすぐに服用を中止し、過敏症の既往歴がある場合は投与が禁忌となっている。

また使用上の注意として、かみ砕くと口内がしびれてしまうので、飲みこむ必要があるという。

一部のインターネット情報では「半音下がって聞こえることが副作用として認められていない」としているものもあるが、PMDAでは「その他の副作用」として発生頻度はわからないとしつつ「聴覚異常(音感の変化等)」と明記していた。

J-CASTヘルスケアが、都内のある調剤薬局の薬剤師に確認したところ、「(医療従事者向けに薬の仕様や使用上の注意を明記した)添付文書にも副作用として聴覚異常と記載されている」との回答を得た。

「フラベリックと同じような効果を持つ薬は他にもあるので、フラベリックのみが大量に処方されているわけではありません。半音下がって聞こえると訴える人がたくさんいるという印象はないですね」

そもそも聴覚異常がフラベリック固有の副作用というわけではなく、同様の副作用は他の薬でも確認されているものがあるという。

フラベリックの場合、研究機関などの調査で確認された副作用ではなく、服用した患者から集まった自発報告に基づいた副作用のため、正確な発症者数や頻度は把握されていないようだ。個人の音感によっても感じ方が異なる副作用であり、気がついていない人もいるかもしれない。

服用前後の変化に注意を

半音下がること自体が肉体に直接的な負担などを与えるわけではないが、聞きなれた楽曲が不協和音のように聞こえ不快に感じる可能性はある。ツイッター上でも絶対音感を持っているというユーザーが、フラベリックを服用している間はすべての音が滅茶苦茶に聞こえ、ストレスがたまったと発言していた。

前述の薬剤師はフラベリックに限らず、薬を服用する際は服用前と服用後の変化を把握しておく必要があると指摘する。

「聴覚異常だけでなく、薬によって副作用が現れた場合は減量や投与中止といった処置を行いますが、そのためには服用前後の変化を患者自身が知らなければいけません。気になる体調の変化などがあれば、医師や薬剤師に申し出てもらえればと思います」