『図解 弁護士だけが知っている 反論する技術 反論されない技術 ハンディ版』(木山泰嗣著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、2013年12月に刊行された同名の書籍をハンディ版として再編集したもの。税務訴訟および税務に関する法律問題を専門とする弁護士である著者が、「うまくいい返すことができない。でも、本当はうまく反論をしたい」という人のために、「反論をするための方法論」を解説しています。

言い返すことは、最初は勇気の問題だと思います。本書でいくら反論の視点を学んでも、実際にあなたがしかるべきタイミングでそのことを言えなければ「反論する技術」が身についていないことになってしまうからです。

そしてわたし自身の経験からよくわかるのですが、うまく言い返せない人、反論できない人というのは、多分にこの勇気を出せないがために、黙ってしまうのだと思います。最初は勇気が必要です。思いきって言ってみることが必要です。

(以上、「はじめに」より)

しかし慣れてしまえば、自然と反射神経を使うように、スムーズに反論できるようになるといいます。なぜなら反論は相手にケンカを売ることではなく、ただのキャッチボールだから。つまり、なんらかのかたちで相手に「返す」ための技術を学び、あとは淡々と実践するだけでよいというのです。

そのような考え方を念頭に置いたうえで、きょうはPart 1「反論する技術」内の「Chapter 4 相手のスキを突く!」に注目してみたいと思います。文字どおり、反論する際の極意を明かした項目です。

総論は賛成し、各論を問題にする

公の場でない言い争いは、声の大きい人や立場が上の人が勝つことが多いものです。そしてそんなとき、自分の立場が優位になっているのをいいことに、なんでもかんでも相手の意見を否定してしまう人がいます。

しかしそれは、立場がうえであることを前提とした優位性に過ぎないと著者は主張します。なぜなら、政治問題や社会問題などを見てみれば明らかなとおり、完全にどちらかが100%正しく、相手の主張に1%もよさがないという議論はあまりないから。

それに、相手を全否定してしまうと、立場の優位性があったとしても、相手には恨まれることになります。仮に恨まれなかったとしても、反発の感情を抱かれることにはなるでしょう。そこで議論をするときには、自分の意見を貫き、そのよさを伝えると同時に、客観的に相手のよい部分は、よいと認めることも重要。

とはいえ、いくらよいからといっても、相手の意見を全面的に認めてしまうと、単なる試合放棄になってしまいます。そこで大事なのは、「自分の意見のほうが(結論として)妥当であり、相手の意見には難がある」という状態にすること。そのため支障がなければ、「一般論としてよい部分は、よしとして認めてしまう、讃えてしまう」という方法も。

「総論賛成、各論反対」という言葉があります。

大もとの一般的な議論(一般論)については賛成するけれど、いま問題になっている具体的な議論(具体論)については反対だ、ということです。

こうした「総論賛成、各論反対」の表明は、相手を全否定しないという点に意味があります。全面対決をして、相手をボロクソにつぶそうとするのではありません。(92ページより)

いわば、相手の意見でもよい部分はよいとしながら、より具体的な部分でのわずかな違いを問題にするということ。そうすれば、相手も納得しやすくなるわけです。

全否定ではなく、どこまでは賛成で、どこからは反対なのか。このような分析的な視点は、相手に対する配慮という面だけではなく、実際に緻密な議論をするうえでも非常に重要だといいます。(90ページより)

矛盾を見つけて指摘する

「相手の意見の誤りをなんとかして突きたい。でも正論なので、正面から誤りを指摘することがなかなかできない」

そんな場合でも、相手の話のなかにある矛盾を見抜くことができれば、それを指摘することによって相手の意見のおかしさを強調することができるそうです。

司法試験の論文試験では、論理的な文章が評価されます。

肯定説、否定説、どちらの立場で書いても合格できます。

ただし、論理矛盾があるとアウトです。たとえば、3つある設問のなかで、第1問と第2問はA説で書いてあるのに、第3問だけ(A説とはまったく相反する)B説で書いてある、こういう答案は大きく減点されます。

どちらの説に立ってもよいのですが、ひとつの答案のなかで、論者が相反する説のいいとこどりをしてしまうのは、ダメです。自己矛盾=論理矛盾となり、論理的ではないと評価されてしまうからです。(94ページより)

そしてこれは、文章に限らず、話をしているときも同じ。相手の意見が正論で、堂々たるものであった場合でも、話のなかで「最初に話していたことと、あとから言っていることがかみ合っていない、矛盾がある」といったことに気づくことができれば、それを指摘することが可能になるわけです。

相手が話し上手で、意見ももっともでスキがないという場合ほど、相手はたくさん話をするはず。しかし、たくさん話をするということは、どこかで思わぬ矛盾が出てくる可能性もあるということ。そう考えると、そうした矛盾を見つけ、指摘することはそれほど難しくないと著者。それは、次のような指摘をするのと同じだというのです。

「シャツが出ていますよ」

「えりがはねていますよ」

「くつのひもがほどけてますよ」

(96ページより)

事実は、意識があれば気づけること。相手が反論できるものではなく、説明も要しません。同じように、矛盾を指摘することは、事実を指摘するだけのことだという考え方。そしてそれを指摘されたら、相手には「なぜ矛盾していないのか」を説明する必要が出てくるということです。

これは相手にボールを投げてしまうという意味で、「質問をする」こととも似ているといいます。しかし、内容的には相手の矛盾を突く(指摘をする)ということなので、これもひとつの積極的な反論方法だということ。(94ページより)

相手の弱点をあぶり出す

どのような意見にも、必ず、その立場によって「強い面」と「弱い面」があるものです。たとえば胸を張って、「こうですよね」「こうでしょう」「だから私の意見のほうが正しいでしょう」と言える部分が「強い面」。声の大きい人、推しが強いといわれる人は、どのような場面でも(仕事であってもプライベートでも)、この「強い面」を巧みに強調し、議論を有利に進めるのだそうです。

これに対し、自分に自信を持てない人がやってしまいがちなのが、自分の意見にも「強い面」があるにもかかわらず、そこをあまり見ないで「弱い面」ばかりに目を向けてしまうこと。自分の意見にあるウィークポイント(弱点)が気になり、そのため自信が持てず、声も小さくなってしまうというのです。

しかし実際には、声が小さくなってしまうタイプの人のほうが、自分の弱点を知っているぶん、冷静な分析ができるとも著者はいいます。

そして、ここでの重要なテクニックは、相手の「弱点をあぶり出す」ことなのだそうです。意識しておくべきは、相手の声が大きい、小さいは関係ないということ。相手の声が大きい場合であれ、こちらの声が小さい場合であれ、攻める対象は「相手の弱点」だということです。

ただひたすら「相手の弱点」に絞って攻め続ければいいわけです。ちなみにこの場合の「攻め続ける」とは、「質問をし続ける」ということ。

「××の点は、どういうことですか? おかしくないですか?」

「××は×××と矛盾していませんか?」

「あなたの意見は、××の点に矛盾がありませんか?」

このように、こちらの意見を積極的に述べるのではなく、相手の弱点をひたすら攻める。こうした質問を続けていくと必然的に、話題の中心が「相手の弱点」ばかりになります。つまり、ポイントはここ。話題の大半が「相手の弱点」になれば、相手の主張が弱く見えてくるということです。

しかし同じように、こちらの弱点ばかりが話題になると、こちらが弱くなるでしょう。どのような意見にも必ず「強い面」と「弱い面」があるからこそ、どこに光を当てて議論するかによって、印象が大きく変わるということです。

つまり、自分の意見のよさを強調しなくても、相手の意見のまずさ(弱さ)を話題の中心にしてしまえばいいという考え方。しかもその場合、こちらは質問するだけでいいのですから、試してみることはそれほど難しくもなさそうです。(110ページより)

紹介されているのは、著者自身がふだん使っている反論のポイントばかり。しかも簡単で、すぐにでも使えそうなポイントだけを選りすぐっているというだけあって、肩肘張ることなく読み進めていけるはずです。そのため「反論するのはどうにも苦手で…」という方は、ここから多くのヒントを得ることができるかもしれません。