『AIが神になる日』(松本徹三/SBクリエイティブ)

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 日々、進歩を続けるAI(人工知能)。今後、どのくらい進歩するのだろうか? あらゆる点で、人類と同じレベルまたはそれ以上に到達することは可能なのだろうか? 万が一、AIが人類を超える存在となった場合、私たちの世界はどう変化するのだろうか? AIのことを耳にするようになってしばらく経つが、突き詰めて考えると、分からないことが多いことに気付く。

 そこでオススメしたいのが、『AIが神になる日』(松本徹三/SBクリエイティブ)だ。ソフトバンクモバイルの副社長を務めた経歴を持つ著者が、人間と「神」との関係から、ユニークな視点で持論を展開している。

■AIは神となり得るのか

 人間は太古の昔から「神」を信じてきたが、はたしてAIは神に代わる存在となり得るのだろうか? 著者によれば、将来の人間にとって重要なのは「AIをどういう神に育て上げていくか」「神となったAIとどう向き合っていくか」だという。つまり、AIは神になり得るということなのか。さらに、そうなった時には、「人間の存在意義」自体が、考えられないくらい変わるとも指摘している。私たちの存在意義自体が大きく変わるとは…具体的にイメージできないにしても、不安である。しかし、AIを育てていくのが人間であることを考えれば、AIにすべてを支配されるような状況は回避できそうだ。本書では、神になり得るAIと付き合う哲学についても詳しく述べられているので、不安を払拭したり、将来への心構えをしたりする助けとなるだろう。

■AIと人間の違い

 AIは、どのくらい人間に近い存在となるのだろうか。例えば、感情について。人間は愛情や憎しみといった感情を抱くが、AIにもそれが可能なのだろうか? もちろん、AIに最初から感情は備わっていない。しかし、「人間がどういう場合に『愛情』を持つのか」というメカニズムを学習することは容易。そのため、AIが人間と同じパターンで愛情や憎しみを感じることもあり得ないことではない、と著者は指摘する。しかし、これは人間にとって必ずしも理想的な状況ではないので、AIが人間の愛憎を理解できれば十分だと結論付ける。そうすれば、AIが人間のために働く時には、感情を理解して対応してくれるため、人間にとっては快適な状態となるのだ。ちなみに、著者は、AIが進歩しても、人間に近づくが、あくまでも異なるものであると述べている。

■AIが向いている仕事

 一部の職種や業務では、すでにロボットによる自動化が進んでいる。では、AIが進歩した時には、どんな仕事を担うようになるのだろうか? 効率が求められる比較的単純な作業かな、なんて思っていたのだが、本書の視点はまったく異なるものであった。むしろ、高度の知識と判断力が求められる職種に向いているというのだ。理由は、AIには「偏見」「同情」「嫉妬」「自己顕示欲」といった「人間的な弱点」がないから。さらに、AIの持つ知識や情報量は、ひとりの人間(専門家)のそれを大幅に上回る。医師や弁護士のような専門職、企業の管理職や経営、政治や経済政策の立案などは、今後AIの活躍が見込まれる可能性が高いとのことだ。究極の進化を遂げたAIなら、人間の感情も理解するし、持っている知識などから物事を的確に判断できるというわけか。AIの存在に脅威を感じつつも、AIが活躍する世界が今とどう違うのか、かなり気になるところだ。

 AIの進歩やそのスピードについては、様々な意見があるだろう。ひとつ間違いないことは、私たちの知らないところでも、日々大きな進歩を遂げているということ。ここ20年でのIT分野の目覚ましい進歩を考えれば、そう遠くない未来、人間は本当にAIとともに暮らすことになるのかもしれない。そんな将来に備えるために、読んでおいて損はない一冊だ。

文=松澤友子