ピッチ上での存在感が際立つ沖。トップチームで熟練の先輩たちに揉まれ、日々進化を続けている。写真:松尾祐希

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 1999年生まれ、現在の高校3年生の世代は守護神が豊作だ。当たり年といっても過言ではないだろう。
 
 5月にU-20ワールドカップを戦った日本代表で、最後まで候補メンバーに残り、すでにトップチーム昇格を決めている大迫敬介(サンフレッチェ広島ユース)。、昨年から2種登録されているU-18日本代表の古都の怪物、若原智哉(京都サンガU-18。そして、U-18日本代表歴を持つ猿田遥己(柏レイソルU-18)に加え、2月のU-18ナショナルGKキャンプに参加した長谷川滉(市立船橋)も控える。いずれも将来が楽しみな有望株だ。
 
 その中で、忘れてはならない男がいる。8月22日に来春のトップ昇格が発表された鹿島アントラーズユースのU-18日本代表、沖悠哉だ。
 
 常勝軍団の下部組織で技を磨く守護神は、中学年代から将来を嘱望されてきた。184センチとGKにしては決してサイズに恵まれていないが、それを補って余りある良質なスキルとビルドアップがある。「いままでは中途半端にやってしまうことが多かったので、やり切るということを意識している。ミスをしてもトライを続けることは監督にも言われているので」と本人が話すように、課題だった状況判断が向上。以前のように曖昧な動きを見せることがなくなった。
 
 8月27日のプレミアリーグEAST再開初戦、市立船橋戦では安定感のあるパフォーマンスでチームを勝利に導いた。前半にあったCKでは、触れるか触れないか微妙なところに蹴り込まれたボールを的確に処理。勇気を持って飛び出すだけでなく、プレーをやり切るところに成長の跡を感じさせた。沖はクリーンシートを達成し、チームは2-0で勝利。3位に浮上した。
 
 まさにいまが伸び盛りだ。日進月歩の成長を続けるが、もちろん独力でこのレベルに辿り着いたわけではない。同世代のライバルの存在があったからこそ、進化を遂げられたのだ。その盟友とは、中学時代にはU-14ナショナルトレセンに選ばれた経歴を持ち、昨年2種登録をされていたGK石川碧人(3年)である。
 
 中学から鹿島で技を競い、互いを高め合ってきたふたり。中学時代を知る人物も「本当に競い合ってトレーニングをしていた」と話すように、鹿島ジュニアユース時代からともに居残り練習をしながら、「あいつには負けない」という強い想いで切磋琢磨してきた。沖本人も、そこは認める。
 
「中学からずっと一緒で、ずっとすごいプレーヤー。自分に持っていないものを持っている。そこは本当に尊敬しているし、勉強になります。GKはひとりしか試合に出られないので、つねに負けたくないという気持ちがある。彼はすごく巧いですし、気を抜いたら超されてしまう」
 
 そのライバル意識が、現在の沖を作り上げたのだ。
 
 また、トップチームのGK曽ヶ端準の存在も彼に大きな影響を与えている。
 
 昨季からトップのキャンプや練習に参加。自身がサッカーを始めた小学校1年生の時、初めて鹿島のゲームを観戦した際、ゴールマウスを守っていたのが21番のレジェンドだった。鹿島ジュニアに入団してからはずっとその大先輩の背中を追い、いまでは一緒にトレーニングする機会を得ている。実際に同じ場に立つと、J1通算510試合出場を誇る男のオーラに圧倒される。やはり、学ぶべき点が数多あると言う。
 
「言葉で言うひとではないので、しっかりと練習などで曽ヶ端さんがやっていることを感じ取っている。迫力とか雰囲気とかはゴール前に立っている感じだけで全然違う。盗めるところは盗みたい」
 
 沖の成長を加速させているのは曽ケ端だけではない。鹿島にはほかにも韓国代表のクォン・スンテ、川俣慎一郎など優れたGKがいる。「曽ヶ端さんだけでなく、スンテさんや川俣選手は自分に持っていないものを持っている。そこを吸収して、自分なりのGK像を作っていきたい」と意気込む。
 
 さまざまな刺激と学びを体内に取り込む沖悠哉。さらなる進化を遂げ、次世代の鹿島を担う正守護神へ──。そして同世代との熾烈な競争を勝ち抜き、日の丸を背負う選手へと羽ばたく!
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)