『傷だらけの天使』の最終回を観て、スナックの看板をバックにショーケン(萩原健一)を
撮っていた格好いい絵に痺れた、コラムニストの中丸謙一朗です。

さて、いつまで続くか10回目。

本日も「全国スナック名称研究会」(全ス研)提供、「スナック珍名さん」をお送りいたします! (パチパチパチパチ)

街角に浮かぶ難解なスナックの名称。

それは文学であり、また、異界からの呪文のようでもある。

看板チェックは煩悩チェック、入店ないので、チャージフリー。

コスパ最強、街角で、誰でも楽しめる、スナック「哀愁」物語。

では、今週もじっくりとお楽しみください。

【第1発目】「スナックとは芸術表現の動機である」(採取地・下関)



スナック「モチーフ」か。。。「モチーフ」とは、芸術表現の動機であり着想のことだ。いやいや、とても酒を飲む場所には思えない難解さ。どう考えても店主は男性だね。ここ自体が芸術表現の動機? 草間彌生みたいなママが、スルメにマヨネーズのっけて出してくれたら、たぶん通うね。

【第2発目】「スナノクは海の止まり木」(採取地・山梨)



「シーバース」っていうのは、海に浮かぶ係留用の施設のことだね。飛びゆく鳥たちの止まり木ならぬ、大海原を公開中に一息つく、海のオアシスってところかな。うん、詩的だね。ここ山梨県だけどね。ああ、言っておくけど、「スナノク」じゃないよ。てんてんが取れてるだけだから。バケツのひっくり返りかたが漂流感あっていいねえ。マスターはマドロス帽。わりと質実剛健ないい夜が過ごせそうなスナックだね。

【第3発目】「少女という名のお店」(採取地・不明)



少女か。少女はやばいよ。正直、スナックだか飲み屋だか確認できない佇まいだった。まあ、昼間に行っといて、文句つけるのもなんだけどね。でも、話を戻すと、「少女」は文学であり、メルヘンであり、過ぎ去りし夢。あ、少女って、おんなが少ないっていう意味じゃないよ、わかっていると思うけど。

【第4発目】「ぐでんぐでんのバツイチ男」(採取地・不明)



いちばん下の段に注目。左はバツイチ。まあ、わかりやすい名前だね。たぶん、ママさんもバツイチ。聞いても怒らないよ。だいたい、男でも女でもバツイチで次を探して酒場で飲んでいる人のカロリーってけっこうすごいからね。商売的にも繁盛だね。で、右の店は「アフタースポット ぐでんぐでん」。なんか、笑うよね、そのまますぎて。そりゃ何軒も行きゃぐでんぐでんになるさ。バツイチとぐでんぐでんで、安上がりな文学だね。

【第5発目】「狼なんか怖くない」(採取地・不明)



それほど奇抜ではないけどね。スナック「狼」、で、隣はスナック「コケコッコ」。こうやって見てみると、スナックの名前なんてけっきょくはどうでもいいってことなのかな。研究者としてはちょっとさびしいけどね。でも、この看板の感じ、同じ経営者で、なかで店を割って、野獣系とついばみ系をうまく転がしてたらしぶいね。それこそ、夜の童話の世界だね。よくわかんないけど。

【第6発目】「不思議な当て字の不思議な世界」(採取地・福島)



「ねえ。」って言われちゃったよ、とうとう。この「ねえ。」は、やっぱり女の声なんだろうけど、こればっかりは状況をたしかめてみないとね。「ねえ、お兄さん、ちょっと遊んでいかない?」とか「ねえ、カネ返してよ」とか「ねえ、あんた、なんでそんなに仕事できないの」とか「ねえ、抱いて」とか、「ねえ。」にはいろいろあるから。スナック文学の最たるもののような店名だけど、気をつけないとね。世知辛い世の中、油断してると簡単に足すくわれるから、ねえ。

ということで、今週の「スナック珍名さん」、いかがでしたか?

みなさんも、この企画が続くように、ぜひ街の珍名スナックを投稿してください。

それでは、ハバ・ナイススナック!

*注 この企画はあくまでも公に公開されている風景としてのスナックの看板および名前を味わうための企画です。採取した時期もさまざまですので、現在も存在しているかどうかは不明です。また、実際のお店の状況には責任を負いませんので、個人の責任にてお楽しみください。

全国スナック名称研究会では、読者のみなさんが発見した「珍名スナック」の看板画像を募集しています。寄稿フォームかメール(toko@j-town.net)で、ペンネームと発見場所、あなたの年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別、職業を明記してお送りください。ツイッターのハッシュタグ「#全ス研」でも受け付けます。なお、いただいた投稿の一部を改変・編集する場合があります。あらかじめご了承ください。

今回の筆者:中丸謙一朗(なかまる・けんいちろう)コラムニスト。1963年生。横浜市出身。『POPEYE』『BRUTUS』誌でエディターを務めた後、独立。フリー編集者として、雑誌の創刊や書籍の編集に関わる。現在は、新聞、雑誌等に、昭和の風俗や観光に関するコラムを寄稿している。主な著書に『ロックンロール・ダイエット』(中央公論新社、扶桑社文庫)、『車輪の上』(耷出版)、『大物講座』(講談社)など。好きなアーティストはジム・モリスンと宮史郎。座右の銘は「物見遊山」。全国スナック名称研究会代表。日本民俗学会会員。

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