夏になると必ず目にする「子どもを車内に放置し熱中症で死亡」のニュース。そんなヘッドラインを見るたびに、ネガティブな反応を示すことはあっても、自分事としてとらえている人は少ないのではないでしょうか。

米国では、車内の熱中症で年間約37人の子どもが死亡しています。その半数以上が、保護者によるうっかり忘れたのが原因。自分には関係ないと思っているあなたに、厳しい現実を教えしましょう。科学によると、このようなうっかりは、実は誰にでも起こりうるのです。

サイト「Quartz」の記事に、このように書かれています。

この種のうっかりは神経学的な奇行によるもので、能力、知性、教育、性別、年齢、そのほかの特徴を問わず誰にでも起こりえます。脳と習慣とストレスを持つ人なら誰でも、子どもを車に置き忘れることは十分に考えられるのです。

サウスフロリダ大学の心理学者で、長年このテーマの研究を続けているDavid Diamond教授は、この神経生物学的な問題を「forgotten baby syndrome」(仮訳:赤ちゃん忘れ症候群)と名付けました。教授の研究結果によると、脳の記憶システムは相互に連携することもあるが、ときに対立を起こすというのです。

「飼い犬をトリマーに預け、ジェーンを幼稚園に迎えに行き、帰りに買い物をして、犬を取りに戻ってから帰宅」といったバタバタな毎日をやり過ごすために、脳内の海馬と前頭前皮質がハイレベルで連携しています。

ところが、ストレスや予期せぬ状況に直面すると、脳幹神経節(習慣的行動を司る)と偏桃体(感情処理を司る)が、そのスケジュールを狂わせるように働くのです。あなたは目の前のストレス要因でいっぱいになり、トリマーと幼稚園をすっ飛ばしてスーパーに直接向かってしまったり、最悪のケースでは、後部座席にジェーンを車内に置いたまま買い物をしてしまうのです。

今どきのテクノロジーを使えば対応できそうなものですが、まだそのような機能が付いた車は販売されていません(開発中のものはいくつかあるようです)。でも、もっと大きな問題があります。Quartzの記事によると、たとえそれが登場しても、誰も買おうとしないだろうと言うのです。なぜなら誰もが、「自分に限ってそんなミスをするはずがない」と考えているから。

「ワシントン・ポスト」のジャーナリストGene Weingarten氏は、2009年にこの話題で記事を書き、ピューリッツァー賞を受賞しました。彼はその記事に関するブログにおいて、この話題が気にかかっていた個人的な理由を告白しています。25年前、当時の勤務先に到着し駐車場を探していた彼は、急に後部座席から2歳の娘の声が聞こえて驚いた経験があったと言うのです。

その瞬間まで、娘が車の中にいた記憶はまったくありませんでした。

その朝、彼のスケジュールは普段とは異なるものでした。いつもは、モリーを保育園に送るのは彼の仕事ではなかったのです。その日どんなストレスや雑念があったかは覚えていないけれど、一生忘れられない出来事になっていると彼は言います。

米国ではこの6月、新たに発売する乗用車にチャイルドセーフティ・アラートシステムの設置を義務付けるHOT CARS Actという法案が下院に提出されました。もし、テクノロジーが導入されるようになっても、引き続き啓蒙が重要になるでしょう。

Weingarten氏は、その日の気持ちをこう記しています。

その瞬間は、今でも忘れられない記憶として残っています。後部座席にいる我が娘を見つめながら、開いた口がふさがりませんでした。そして、強烈な吐き気を覚えました。真夏のマイアミです。おそらくモリーは、15分も生きられなかったことでしょう。

Anyone Can Forget a Child in a Hot Car-Even You|Lifehacker US

Source: Quartz

Image: logoboom/Shutterstock