プレシーズンでは苦戦していたドルトムントが、ブンデスリーガが始まって2連勝。この時点で断言するのは難しいが、うまくいっているチーム特有の雰囲気のよさが感じられる。昨季は勝っていようが負けていようが、どこかでピリピリとしたムードがあったが、ピーター・ボス監督のもとで心機一転、順調に滑り出している。

 左肩脱臼の状態が不安視されていた香川真司も、開幕戦のヴォルフスブルク戦で86分から出場したのに続き、8月26日のヘルタ・ベルリン戦では63分からピッチに入った。「段階を踏まえて出場時間を伸ばしたいという監督のプランを尊重しながらやっている」と言うように、はやる気持ちを抑え、すぐに先発とはいかない事情を理解して、練習量も段階的に増やしているのだという。


今季ホーム初戦、ヘルタ・ベルリン戦の63分から出場した香川真司

 ヘルタ戦ではこれまでの左FWではなく、先発のマリオ・ゲッツェに代わって、4-3-3の中盤の3枚のうちの1枚、いわゆるインサイドハーフでの途中出場だった。まずはこのポジションでのスタメン奪取が現実的な目標となる。

「試合にスタメンから出たときにもっとやれるイメージは持っているし、その自信はすごく感じています。あのポジション、あの状況で、最初から出ていたらもっとやれると思います」

 3トップに入って前線にアクセントを加える役割ではなく、試合を支配し攻撃を作り出すポジションで、チームの軸としてスタメンでプレーするイメージはすでにできあがっている。先発出場はなくても、ポジティブなイメージを抱いているようだ。

 香川のコメントの端々に、チームの雰囲気がよく、自身のプレーにも高い可能性を感じていることがうかがえる。例えば、この試合前日には、今季のチャンピオンズリーグ・グループリーグの組み合わせが発表された。ドルトムントはレアル・マドリード、トッテナム、アポエル(キプロス)と同組になることが決まった。香川は冗談を交えながら、こんな風にこの組み合わせを語っている。

「レアルは何回もやっているから……チームとして。個人としてはあまり試合に出てないからあれですけど、ポット1のどれかとは当たるわけで、逆にポット3にトッテナムがいるっていうのはちょっと反則というか(笑)。ポット3の一番強いのが来た。そこはすごくタフなゲームになるし、自分にとっては厳しさであったり、どこまでやれるかが試される。チームとしても個人としても、勝ち切れればさらに自信をつけていける。厳しい試合になりますけど、チャレンジして勝ち切りたい。

 特に今シーズンは、グループリーグを見てもそう(楽しみ)ですし、監督が代わって自分としてはすごく新しい日々を送っていて新鮮ですし。本当に日々楽しくやれているので、これから待ち受けているものに対しても、ポジティブにやっていきたいなと思います」

 負傷から完全復帰したとはいえず、先発に返り咲いてもいない状況の香川にしては、異例と思えるような前向きなコメント。ホーム初戦で勝利を飾った喜びのさなかにあることを差し引いても、手応えを掴んでいることがうかがえた。

 招集された日本代表のW杯予選オーストラリア戦、サウジアラビア戦に関しても気合十分、雄弁に語る。

「僕としてはイラク戦を欠場しているので(直前の親善試合シリア戦で左肩を脱臼、そのまま代表を離脱)、その試合が終わったあとから、それ(残るオーストラリア戦、サウジアラビア戦)が今シーズン最初の大一番になるなと思っていた。そのためにも日々考えてトレーニングもしてきたし、覚悟というのはこの2カ月で十分つくものだとわかりました。

 あとは勝つだけ。そのためにチームとしてやれることが、これから短期間の中でたくさんあると思うんですけど、チームとしてはまず、自信を持ってホームでの戦いにみんながひとつになってやることが大事なのかなと思う。あとは(自分は)経験ある選手なので、どれだけ引っ張っていけるか。そういうところも監督から言われています」

 先日のヴォルフスブルク戦後にも「自分がキャプテンマークを巻くような気持ちで……」と話しているが、近頃は代表チームをリードする立場への自覚が強くにじむ。そして香川は4年前、日本がさいたまスタジアムでオーストラリアと引き分けでブラジルW杯出場を決めたことを引き合いに出した。

「ひとつ試されているのは、オーストラリアっていうのはアジアの中では常に(日本に)つきまとっているチームだということ。このシチュエーションを見たときに、4年前は引き分けで行けた。今回は勝たなきゃいけない。その差があるとは思う。今回はやはりホームのみんなの前で勝ってW杯にいくんだというのを証明したいし、それが運命です。4年前に引き分けだったというのを踏まえると、この4年間、果たして僕たちはどこまでやれるようになったのかというのを試されていると思う。それはひとつの乗り越えなければいけないものだと思う。ポジティブに戦いたいと思います」

 その言葉の端々からは強い覚悟がにじみ出ていた。香川には申し訳ないが、彼がここまで言うのは、かなり珍しいことである。おそらくケガからの復調具合がよく、ドルトムントも好調であるからこそ、これだけポジティブな言葉が出てくるのだろう。ここ最近の香川にはあまりなかった状態のように思う。

 代表の10番を背負いながら、いつまでたっても中心になり切れなかった香川が、大きく一歩を踏み出すかもしれない。

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