チームの2点目を決めた田口は、その後2枚目の警告で退場に。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 [J2リーグ30節]名古屋2-3横浜FC/8月26日/豊田ス

 10人になっても、名古屋は名古屋だった。彼らはひとり少ない状況でもまったくその哲学を曲げずに戦い、守備を固めてカウンターという数的不利の定石には目もくれなかった。
 
 結果的に負けてしまっては、と揶揄する声があったとしても、名古屋の選手たちはこう答えるだろう。"僕らはそれでも攻めることができたし、パスをつないでそれをした。守備だって、そこまでやられた気はしていない"と。
 
 それが虚勢にならないことは、横浜FCが後半に6本しかシュートを打っていないことでも裏付けられる。
 
 いつものように先制点を奪われ、しかし前半のうちに逆転してみせた名古屋は、その立役者たる田口泰士が後半に2度目の警告を食らって退場。その後のフォーメーション調整に手間取った隙を突かれて同点に追いつかれたが、怯むことなく前に出ることで劣勢をひっくり返そうと画策した。
 
 3-4-3のシステムを、左ウイングだった和泉をボランチに落とした3-4-2に修正し、守備時にはさらに左ワイドの秋山陽介を1列下げて4-4-1にしてバランスを調整。そこからシモビッチをフェリペ・ガルシアに、秋山陽介を永井龍に代え、常に攻撃のカードを切ってチームを前に押し出した。
 
 さぞ守備陣は冷や汗ものの戦いだっただろうと思いきや、楢崎正剛は「そんなことないです。11人でも10人でも、相手が圧力をかけてポンポンとこちらのスタミナを奪うようなプレーをしてきたかといえばそうでもない」と平然。
 
 イム・スンギョムも「カウンターは喰らわなかったので、守備のオーガナイズはできていたと思います」と話し、「ひとり少ない状況でしたから、(新井)一耀とふたりで後ろに残ってお互いにカバーできる位置取りを」と努めて冷静に状況への対応を続けていた。
 
 それでも77分には決勝点を奪われてしまうわけだが、これもひとり少ないからというよりも、「11人で守っていてもやられていたんじゃないかというやられ方」(楢崎)というのが率直な感想。だからこそ「守備側からすればもったいない試合でしたよ」と守護神は自身のパフォーマンスを悔やむ。1失点目はGKには屈辱のニアサイドを抜かれ、2点目のシュートは手に触れられていたからだ。
 攻撃面でも、逆転ゴールはやはりガブリエル・シャビエルのセットプレーからであり、ひとり少ない後半にもパスをつないで積極的に前の選手を追い越し、大きなパスに頼ることなく5本のシュートを放ってみせた。
 
 複数ポジションで奮闘した和泉は「やることは変えずにやろうとしていました。ひとり少なくても他の10人が120パーセントで抜けた部分の穴を埋めるハードワークができればいい。そこはやり抜いたし、見せられたと思います」と自信を見せる。
 
 足りなかったのは、最後の精度とシュートに持ち込む積極性。和泉自身も前線にいた時間帯に何度かシュートを打てるチャンスはあったが、今季は後方でのプレーが続いている影響か、本来の仕掛けが出せなかったのが悔やまれた。
 
 G・シャビエルもパスをつなぐことにおいては数的不利が響いたとしながら、「やることは変えずにまずは同点に追いつこうとした。それができなかったことが残念」と試合を振り返っている。
 
 あくまで攻めること、前に出ること、そしてボールを保持することで、あらゆる突破口を探るという姿勢を名古屋は見せつけた。連勝が5で途切れ、期待された青木亮太の6試合連続ゴールは達成ならず。首位との差は再び開いて後続もすぐそばに迫ってきた。
 
 しかし彼らはこの敗戦を“教訓”としか思っていない。悔しいが、自分たちのやるべきことを厳しい状況のなかで貫き、少なくとも彼らにとっての劣勢にはさせなかったことで自信をつけた節すらある。
 
「下を向くような試合ではなかったです」と和泉は言い、「自分たちがまだまだだってこと」と楢崎も達観する。この敗戦が名古屋を立ち止まらせるものではないことは間違いない。むしろ、彼らは次節でさらなる強さを見せる可能性すらある。試合後の選手たちの表情が、それを物語っていた。
 
取材・文:今井雄一朗(フリーライター)