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 これまで1万人以上を面談した産業医の武神健之です。前回はメンタル不調者を続出させる上司の勘違いとして、組織のルールではなく、価値観の相違を理由として怒ることは、結局は部下のストレス原因になっているという話をしました。

 また、実際には怒っていいときはほとんどないことや、メンタル不調者を出さない上司は、怒るのではなく「叱る技術」を持っているとも述べました。

 今回は、メンタル不調者が出ない組織の上長が持っている「怒らないで叱る技術」についてお話しさせていただきます。

 では、実際にどのように怒ったり、叱ったりすればいいのでしょうか。

 産業医として10年間の経験から、私は怒るときに相手を“承認”すると、それは叱ることになると私は考えます。

◆「いま・ここ・私」を意識する

 実際に相手を叱るとき、私は以下の3つのことをまずは意識することを提案しています。それは「いま・ここ・私」ということです。

1.いま叱るべきか
2.この場所・この場面で叱るべきか
3.そして私が叱るべきか

 この3つを叱る前に考えてみましょう。そうするとあなたの「叱る」は、相手を承認したことになります。

 叱るべきときは、本当に「いま」なのでしょうか。自分も相手も興奮していては、効果的には叱れません。一呼吸置いてからでは本当に遅いのか改めて考えてみてください。

 また、叱るべきは、本当に「この場所」、「この場面」でしょうか。場所を変え、周りに人がいないほうがいいのではないでしょうか。その方がお互いに一呼吸も置けるのではないか。
 
 そして、叱るべきは、本当に「私」なのでしょうか。どうして、私こそが、叱るべきなのでしょうか。個人として適任だから? それとも、例えば上司という役職のため?

 もし部下の失敗であなたが不利益を被っていないのであれば、あなたが叱らなくてもいいのかもしれません。失敗によって会社が不利益を被り、会社の代表として(または代表の代わりに)あなたが叱るのであれば、そこにあなたの個人的感情が入る理由はありません。

 あなたは、部長などの役職として、部下を叱るべきであり、個人的感情から然るべきでないのは上述の通りです。役職で叱るのですから、そこには個人的感情は不要です。感情的になってしまうのは、己の修行の足りなさだと認識さえできれば、いいのです。

◆部下を叱るときに守ってほしい「し・か・り・ぐ・せ」

 さらに、相手を承認したうえで怒るためには、次の「しかりぐせ」を守っていただきたいと思います。これは、部下を叱るときに守ってほしい項目をまとめ、最初の1文字を「し・か・り・ぐ・せ(叱り癖)」として並べたものです。

「し」→身体的接触は絶対禁止

 多くの会社でパワハラかどうかの認定をするときに最初の基準となるのが、身体的接触があったかどうかです。直接叩いたりするのはもちろん、ペンなどで叩く、ものを投げるというのも絶対にやってはいけないことです。

 たとえば、ふだんなら肩をポンポンと軽くたたくのが問題にもならないところ、関係がまずくなると「小突かれた」とか、女性なら「触られた」と問題となってしまう可能性があるからです。

「か」→過去は責めずに、隔離し2人で

 過去は責めても変えられません。

 過去に何かあったのなら「今後はどうするの?」という未来の話にしましょう。過去を変えることはできなくても、そこに与える意味づけを変えることはできます。過去を学びや教訓とすることに目を向けましょう。

 それから部下を叱るときに人前ではなく2人っきりが基本です。相手のメンツやプライドもちゃんと考えて叱りましょう。