金正恩氏

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北朝鮮当局は、核実験とミサイル発射実験をめぐり緊張する朝鮮半島情勢を、国内の結束を図るネタとして利用している。しかし、そのやり方に北朝鮮の人々はもはや呆れ顔だ。

「南朝鮮(韓国)と米帝(米国)を火の海にすると大口を叩くこと半世紀、今やその両国が北朝鮮の人々が羨望する国となってしまった」

このように自虐的に語るのは、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋だ。情報筋の批判は止まらない。

「(金正恩党委員長は)何もできないくせして米国に手を出そうとしているのではないか」 「和解と協力ではなく対立しようとする当局のせいで、庶民が損をする」

情報筋はまた、「戦争がいつ起きるかわからない一触即発の状況」と騒ぎ立てる当局に対して、北朝鮮の人々が極めて冷淡な反応を示していると伝えた。「こんな暮らしをするんだったら、決着を付けたらいいじゃないか」という人もいれば、地方住民からは「米国が(金正恩氏らのいる)平壌を爆撃してくれたいいのに」という人まで現れたという。

北朝鮮当局は、国家指導部を狙う米韓の「斬首作戦」を警戒し、普通のトイレを使えない正恩氏にさらなる不便を強いてまで警備を強化している。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

ところがその足元では、自国民が米韓による正恩氏襲撃をネタにしているのである。

庶民だけではない。幹部たちも表では「もし戦争が起きれば、燃えたぎる敵愾心で敵の牙城を叩き潰せ」と騒ぎ立てているが、裏では「本当に戦争が起きて、決着がつけばいいのに」と本音を漏らしている。

「孫(金正恩党委員長)が祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の手法を未だに踏襲しているが、戦争の脅威を煽って内部の結束を高めようとしても、もはや誰も信じず、効果もない」(情報筋)

北朝鮮当局がいくら危機を煽っても「効果」が生まれなくなった一番の理由は、北朝鮮の人々がかつてと異なり、海外からの情報を得られるようになったことにある。韓国、米国、日本は北朝鮮向けの放送を行っており、リスナーが少なからず存在する。

平安南道(ピョンアンナムド)在住のデイリーNK内部情報筋は、市内に住む人の5割から7割が韓国のラジオを聞いており、核実験とミサイル実験のせいで経済制裁を加えられていることや、大使館員らが韓国に亡命したことも知っていると述べた。

中には、韓国のテレビを受信する人もいる。軍事境界線を挟んで韓国に隣接した黄海道(ファンヘド)や江原道(カンウォンド)一帯はもちろん、平壌より北の地域や、東北部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)の海岸部でも韓国の公営放送、KBSテレビが受信できる。

また、情報の壁を壊した最大の功労者は韓流ドラマや映画だ。当局がいくら取り締まっても、その勢いは留まることを知らない。