フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと共に世界三大建築家とされるル・コルビュジエ。

そんな近代建築の巨匠が生涯で唯一嫉妬していたといわれる相手がいる。それが、アイリーン・グレイという名の女性だ。1920年代、気鋭の家具デザイナーとして活躍していた彼女は、建築の世界へと足を踏み入れる。そのデビュー作となるのが、南仏のカップ・マルタンにある海辺のヴィラ「E.1027」だった。

はじめは、このヴィラを絶賛していたコルビュジエだったが、やがて、称賛の想いはジェラシーへと変わっていく。

コルビュジエの素顔が
浮き彫りに

映画『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』は、その偉業とは裏腹なコルビュジエの素顔を浮き彫りにしている。

本作でフォーカスされているのは、長い間、建築史から覆い隠されていた「壁画事件」。傑作ヴィラの真っ白な壁に、コルビュジエは自らの手でフレスコ画を描いてしまったのだ。しかも、アイリーンに無断で。建築家であれば、どれほどこの行為が相手に屈辱を与えることも理解していながらだ。

この事件をきっかけにして、二人の間には、決定的な亀裂が入ってしまう。

異常なまでのヴィラへの寵愛

何故、コルビュジエが壁画を描いたかには、諸説がある。ヴィラの所有者であるアイリーンの元彼ジャン・バドウィッチに勧められたから。すでにこのヴィラを離れてしまったアイリーンを振り向かせるため。ただし、最も有力なのは、コルビュジエは、描くことで自らの痕跡を残し、壁画によってヴィラ「E.1027」を自分の作品にしてしまおうとしたのではないかという説だ。

いずれにしても、ヴィラは、コルビュジエにとって特別な価値を持っていたのだ。その証拠に、彼は、カップ・マルタンの地に頻繁に足を運ぶことになった。バドウィッチが亡くなってからは、ヴィラが誰かの手に渡ったり、壊されたりしないように目をかけた。戦後、すっかり荒れ果てた姿になって、競売にかけられた時もパトロンに購入させ自らが番人になろうとする。

挙げ句の果ては、この家を見下ろす場所に、自らの休暇小屋まで作ってしまうのだ。それほどまでに、このヴィラに固執していたのだ。

2人の天才建築家によって
残されたマスターピース

一度は、歴史の中で埋もれてしまいそうだったヴィラは、皮肉にもコルビュジエのおかげで、再び、脚光を集めはじめている。また、長い間、世間から忘れかけられていたアイリーン・グレイも、建築史に残した功績と共に認知が拡がっているとのこと。

数奇な運命を辿った「E.1027」は、現在、長時間をかけて修復がされて、見学ができるようだ。もし、南仏のコートダジュールへ行く機会があれば、ぜひ、足を運んでほしい。もしくは、一足先にスクリーンの中で、まぶしく輝く海とマスターピースなヴィラに訪れてみるのはいかがだろう? 

『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』
2017年10月14日(土)よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開。公式サイトは、コチラ

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Licensed material used with permission by ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ