「ローラン・ギャロス、観に行きませんか?」

シャンパンメゾン「モエ・エ・シャンドン」のPR担当からの、そんなお誘いから始まった今回の出張。本誌編集長・日紫喜によるフランス取材の模様をここにご報告する。

ご存知だろうが、ローラン・ギャロスとはテニスの4大国際大会であるグランドスラムのひとつ「全仏オープン」のこと。




灼熱のパリに世界各国から熱狂的なテニスファンが集結

2010年よりローラン・ギャロスの公式スポンサーになっているモエ・エ・シャンドン。2012年からは、グランドスラム男子シングルス最多優勝、歴代最長世界ランキング1位など、数々の記録を塗り替えてきたプロテニスプレイヤー、ロジャー・フェデラーをブランドアンバサダーに起用したりと、テニスとの親和性は高い。



お目当てのフェデラーは、残念ながら欠場。それで観戦したのがラファエル・ナダルの試合。

ローラン・ギャロスは、グランドスラムで唯一のクレイ(土)コート。ハードコートやグラスコートと比べると球速が遅くなり、高速サーブを武器とする選手が自分の強みを活かすことができないことから「魔のコート」と呼ばれることも。

それでもナダルは強かった。観戦時はもちろん分かっていなかったが、今回も優勝。そもそもローラン・ギャロスが得意な彼は優勝10回目。2005年に初めて優勝してから開催された13回の大会中、10回も優勝している。凄まじき勝率なのだ。



観戦はモエ・エ・シャンドンのVIP席にて。周りを見渡せば、ローラン・ギャロスをスポンサードする時計ブランド「ロンジン」や航空会社「エミレーツ航空」の席があるなど、華やかな雰囲気だ。




シャンパンで喉を潤す、これぞラグジュアリーの極み

コート内はとにかく日差しを遮るものなく、とにかく暑い。渇ききった喉を潤すべく向かった先は、モエ・エ・シャンドンのラウンジ。VIP顧客や各国のメディアでごった返すラウンジに、アジアのメディアを代表して潜入した。

まず、出されたのは「アイス アンペリアル」。東京でもお馴染みとなった氷を入れて初めて完成するシャンパンだ。



そして今年の新作「モエ・エ・シャンドン アイス アンペリアル ロゼ」も。

「レッドベリーとチェリーの躍動感のあるフルーティーな香りを中心に、イチジクやネクタリン、ザクロの香りも。甘みと引き締まった骨格を持つ甘美な風味が特長で、ベリーを思わせるような甘さが口いっぱいに広がる。フルーティーさと爽やかさの絶妙なバランスを持ち、ピンクグレープフルーツのような旨みのあるビタースイートさを伴う、爽快なフィニッシュへと導かれる」

キリっと冷えたロゼワインを飲むがごとく優雅に「アイス アンペリアル ロゼ」、これぞ贅沢の極みだろう。




ラウンジには、優雅にシャンパンを飲むセレブ達がそこかしこに。日本ではまだまだシャンパンという存在は敷居が高い印象だが、こんな風にサラッと上品にシャンパンを嗜む姿に、感動すら覚える。



その日のディナーは『La Fontaine de Mars』へ。前オバマ大統領も訪れたという老舗ビストロ。ここでもモエ・エ・シャンドンで乾杯。

こうしてシャンパンに、とことん触れる一日目は終わった。


シャンパンがなぜラグジュアリーなのか、その秘密が分かった!


翌日は早朝より、パリからクルマに揺られ約1時間、シャンパーニュ地方のエペルネへ。言わずと知れたシャンパンの聖地だ。





聖地・エペルネへ。そこで目の当たりにしたのは、凄まじいまでのシャンパン愛

こちらが「Avenue de CHAMPAGNE」、シャンパン通り。名だたるメゾンが軒を連ねるストリートだ。各国からのシャンパンラバーが各メゾンのツアーを楽しみに集っていた。



モエ・エ・シャンドンのメゾンに到着。世界シェアNo.1を誇る同社だけに、堂々たる外観だ。

ここでモエ・エ・シャンドンの歴史についてサラッと触れておこう。なんと言っても、270年以上もの歴史があるのだから。

シャンパーニュ地⽅の名⾨モエ家の⼀員であるワイン商、クロード・モエが、1743年にエペルネの町にメゾンを設立したことから、歴史は始まる。商才のあるクロードは、わずか5年後でフランス王室の公式シャンパンにまで押し上げ、当時のフランス王ルイ15世や、ポンパドゥール夫⼈に愛飲されることで、ヴェルサイユ宮殿の王侯貴族にも広まった。

その信念を継いだ3代⽬のジャン・レミー・モエは、それまで⾏っていた他のワインの製造を中⽌し、シャンパン造りのみに注⼒。親交のあった皇帝ナポレオンも戦勝酒として重宝するまでに(モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアルの「アンペリアル」は皇帝という意味)。

と、華々しいエピソードには事欠かない。モエ・エ・シャンドンにはそういった歴史に裏打ちされたロマンがある。



そして出迎えてくれたのが、醸造最高責任者ブノワ・ゴエズ氏。2005年に35歳という若さで今のポジションに就任したシャンパンの天才だ。

グッドルッキング、そして物静かな語り口。こういった人が、シャンパンのラグジュアリーな世界を創り出しているのだと、思わず納得せざるを得ない。




ブノワ氏のアテンドによって、石灰岩の地盤を地下10〜30m掘ったシャンパーニュ地方最大、全長28kmのカーヴを見学。ここに数多くのシャンパンが貯蔵され、来る抜栓の日を待っているのだ。

※一般の方でも有料で見学可能。詳しくはこちらで。



カーブツアーの〆は、ブノワ氏しか入ることができないスペシャルなテイスティングルームへ。そこで出されたのは「モエ・エ・シャンドン グラン ヴィンテージ 2008」。

ブノワ氏いわく「この年は冷涼な気候であったことと、収穫が順調に進んだことで、フレッシュでしっかりとした酸味を備えたブドウが出来た。ゆえに『2008』は控えめでエレガントでありながら鋭さのある熟成感を備えており、その香りは春を感じさせ、快活な味わいだ」。

その「2008」の美味しさもさることながら、私が感動したのは、2008年の天候を去年のことを話すがごとく、サラサラ語れるブノワ氏の記憶力。それだけ、天候を気にし、ブドウに愛情を注ぎ、シャンパンに情熱を注いでいるからこそ、なのだろう。



カーヴツアーを終え、モエ・エ・シャンドンがVIPをもてなす迎賓館トリアノンにてランチ。

シェフはイタリア人のマルコ・ファティガ氏だ。2016年春に開催されたエグゼクティブ・シェフを募集するグローバルコンペティション”Moët & Chandon Wants You!”で見事優勝を果たした。

シャンパンに合う料理と一言でいうのは簡単ですが、そこは奥が深い。フランス文化を敬愛しながらも、イタリア人らしい創造性に富んだ料理が、そのひとつの答えを示していた。





シャンパンのすべての始まりは、この広大なブドウ畑から。

そして最後はブドウ畑へ。1ヘクタールに1万本のブドウの木が植えられていて、9月の収穫期には3000人もの人が2週間で手摘みを行うのだそう。気の遠くなるような作業、だがシャンパンに使われるブドウは手摘みでないといけないという掟があるのだ。

そしてブドウ畑のあちらこちらに「モエ・エ・シャンドン」の所有を示す碑が立っていた。



どうも日本では、ややもするとバブルの象徴的な扱いを受けるシャンパン。現地を訪ねて分かったのは、当然、ラグジュアリー、富の象徴ではあるものの、決して成金のイメージではなく、上質の証であるということ。

丁寧に情熱を持って作られた商品は、高いお金を出すかもしれないが、それだけの価値があるということ。作り手に最大限に敬意を示し、大切に飲む、それこそがシャンパンなのだと、痛感したのだ。




帰国した私に待っていたのは、渋谷でのスペシャルな夜

フランスから帰国し、日々の業務に追われていたところ、つい先日、ブノワ氏が来日するとの一報を。

「またお目にかかりたい!」との思いで、渋谷は『TRUNK HOTEL』のスイートルームで開催されたスペシャルディナーに。



この日の目玉は、日本でも名だたるフレンチなどでオンリストされつつある「モエ・エ・シャンドン MC掘淵┘爛掘璽好蝓次法廖ブノワ氏肝入りのウルトラ プレミアム キュヴェだ。メゾン史上最も調和的且つ複雑な究極のシャンパンなのだとか。

シャンパンの世界に一度、足を踏み入れると、その奥の深さに怖気づきそうになる。でも、その先に素晴らしきラグジュアリーな世界があると思えば、その道も、また意味がある。ラグジュアリーな食世界を体現する編集者として、この道を極めようと、心に誓った次第。