北朝鮮軍の「特殊作戦部隊の降下および対象物打撃競技大会-2017」を指導した金正恩氏(2017年4月13日付労働新聞より)

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北朝鮮が、米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」に対する非難を強めている。演習の時期に限らず、北朝鮮は年がら年中、米韓軍を主敵として口撃しているが、実際に闘う部隊である朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の本当の敵は「米帝(米国)」でも「南朝鮮かいらい軍部(韓国軍)」でもなかった。

性上納の強要も

北朝鮮では、なし崩し的に市場経済化が進んでいるのに伴い、食糧事情が改善してきた。しかし、軍隊は閉鎖的な集団だけに市場経済化の流れから取り残され、少なくない兵士たちが栄養失調に苦しんでいるとされる。

つまり、北朝鮮軍の本当の敵は「飢餓」であると言うことができるのだ。

このような背景から、飢えに苦しむ兵士たちが協同農場を襲撃し、農作物を略奪する事件が頻発。地域住民からは「あんな土匪(馬賊)みたいなやつらを使って一体どんな戦争をするというのか」と罵られている。飢えた兵士たちは、国境を越えて中国にまで侵入し、たびたび強盗事件を起こしている。

そのため、中朝国境地域の中国側では、地元住民が自警団を結成して対応するほどだ。

そして、秋の収穫を控えている北朝鮮の協同農場では、兵士たちの襲撃と略奪に備えて厳戒態勢が敷かれていると咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

間もなくトウモロコシの収穫期を迎える北朝鮮の協同農場や個人耕作地では、農民が昼夜を分かたず警備を行っている。

しかし、焼け石に水だ。武装した兵士の集団に襲撃されれば、ひとたまりもない。一年の糧が根こそぎ奪われてしまう。軍が絡んでるとあって、保安署(警察署)は手を出せず、被害をお上に訴える方法もない。つまり泣き寝入りするしかないのだ。

また、朝鮮半島情勢が緊張を増す中、訓練はより厳しくなっているが、配給が増えるわけではない。空腹に耐えかねた兵士たちによる略奪が激化するという悪循環に陥っている。

情報筋によると、規律を引き締めるべき軍官(将校)たちまでもが、「事(戦争)がいつ起きるかわからないから、食べられるうちに腹いっぱい食べておけ」と言って、兵士たちの略奪を煽っている。

さらに、軍官と一部商人が結託し略奪した農作物を横流ししてカネ儲けに走っている様子がうかがえるという。最近熟す直前のトウモロコシを麻袋に詰めて運ぶ兵士を頻繁に見かけるようになったというのだ。彼らは市場で、あらかじめ約束していた商人に安値で売り渡す。儲けはおそらく、上官と商人が山分けするのだろう。

ここまで軍紀の乱れ切った軍隊が、戦争で勝てるはずがないのだ。飢餓、略奪、性上納の強要といった行為が横行する朝鮮人民軍に、果たして本気で戦争を構想する余裕などあるのだろうか。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為