砂漠の地にウォッシュレット!? 驚き世界のトイレ事情〜中東編〜

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行楽シーズン真っ只中である。海外旅行へ出かける方も多いだろう。その手荷物に、決して忘れてはならないものがある。何だろうか。トイレットペーパーだ。先日リリースした「大便器が二つ!?便座がない??驚きの世界のトイレ事情」という記事で、トラベルライターの鈴木博美さんが紹介してくれた各国の個性豊かなトイレたちが物語るよう、海外では、「トイレットペーパーがない」「便器がない」など、われわれ日本人の常識を覆す事態が頻発する。

行き先のトイレ事情を把握しておくことは、現地のトイレで一人慌てふためかずに済むだけでなく、そこから現地の文化や、ひいては思想なども垣間見ることができるので面白い。さて、今回は筆者が旅先でお世話になった、中近東のトイレ事情を紹介しよう。

■砂漠にウォッシュレット?!

海外から帰国し成田空港のトイレに腰を下ろした瞬間、トイレほど落ち着く場所はないのだと確信に至るのは筆者だけではないだろう。

「日本のトイレは世界一だと思う」そんな声を国内外問わずよく耳にする。何故かと問えば、清潔さ、快適さ、そしてなにより「ウォッシュレット」だと。

だが中近東を訪れ、トイレに立ち寄り、衝撃が走った。あるではないか。便器の横に、ハンドシャワーが備え付けられている。ボタン一つで、とまではいかないが、これはあの、「ウォッシュレット」手動版なのではないだろうか?

(写真:カイロのトイレ)

当時現地で知り合ったシリアの友人に使用法を尋ねて曰く、「使い方はいたってシンプル」。
用を足した後、紙で拭くのではなく、ハンドシャワーを使って洗い流すのだという。そこで重要なのは右手でシャワーを持つこと。「不浄」といわれる左手を使って局部を清めるためだが、左利きの筆者はシャワーの扱いに多少手こずった。しかし実際に体験してみるとわかるのだが、水を使って直接洗い流すのだから、シャワーを浴びた後のように気分は実に爽快である。

■貴重な水を最小限に

言わずもがな、真夏の中東は暑い。5年以上も前のことだが、筆者がシリアへ訪れた際、日中の気温は45度。涼しいと感じる朝方にも気温計は30度を指しており、愕然とした。そんな灼熱の大地に暮らす、この地域の人々にとって水は非常に貴重な資源だ。ハンドシャワー搭載のトイレなど、贅沢品なのではなかろうか。

エジプトの友人は言う。「水洗式のように紙を流すため大量の水は必要ないし、ゴミだって出ないだろう」……正論である。エコロジー極まりない。しかし、だ。紙を使わないとなると、パンツもズボンも水浸しになってしまうのでは…?

心配ご無用。シャワーといっても、ノズルから勢いよく大量の水が放出されるわけではなく、「少量の水で効率よく洗い上げるコツさえつかめば、炎天下の町へ出た瞬間、あっという間に乾いてしまうからね」(エジプトの友人)。

とはいえこのハンドシャワー搭載トイレ、観光地のホテルや都市の飲食店などでよく見かける比較的近代のもの。一般的な中近東のトイレには、便器の横に桶や蛇口、ホースなどが備え付けられている。使用法は同様、右手で水を汲み、左手で洗い流すのだ。水のないときには砂を使うこともあったという。砂は清らかなものだという逸話を思い出した。砂漠地帯ならではのトイレ事情である。

(写真:アフガニスタンのトイレ 画像提供 高橋美香)

■「清潔さ」を重んじるイスラームの人々

「誠にアッラー(イスラームの神)は、悔悟して不断に(神に)帰る者を愛でられ、また純潔の者を愛される」(雌牛章222節)

イスラームの聖典コーランにもこう明記されているよう、ムスリムにとって「清潔さ」とは、最も基本的かつ重要な条件だという。

日本でも神社や寺などに参拝する際、われわれは手を清め口をすすぐが、日に5回行われるイスラームの礼拝において彼らは、手や口だけでなく、顔、腕、頭、そして耳、首、足と、順番に全身を清めていく。「ウドゥー」と呼ばれるこの手洗い作法は写真入りの手引きが冊子になっているほどで、トイレの後にはこの行程を一通り行わなければならない。

イスラームにおいて「清浄であることは信仰の半分」(「ハディース(預言者ムハンマドの言行録)」より)といわれており、ほかにも、立ち小便をしてはならない、便器は聖地メッカの方角を向いていてはならないなど、多くのトイレ作法がある。トイレと信仰は切っても切り離せぬものなのだ。だからこそ、用を足した後には清めの意味を持って直接洗い流すという手法をとったのだろうし、近代のトイレにはハンドシャワーが取り付けられたのだろう。中東式「ウォッシュレット」搭載のトイレからは、イスラームの人々の信仰深さがうかがえる。

さすがメソポタミア文明発祥の地。というのは大袈裟だろうが、日本の厠にウォッシュレットなるものが導入されるずっと以前から、アラブの地のトイレには同様の快適な機能が搭載されていたのである。

(オダギリ)

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)