奥渋にある「CAMELBACK sandwich&espresso」。コーヒー担当の鈴木啓太郎さんとサンドウィッチ担当の成瀬隼人さん(元寿司職人)のふたりが織りなす、絶妙なコンビネーションが話題のお店です。

じつは鈴木さんと私は、お互いコーヒーの世界に飛び込むずっと前…2002年からの友人。まったくコーヒーに関係のない仕事をしていた2人が、今コーヒーの世界をどう見ているかを、ダラダラと話してみました。

「きっかけは明大前のスタバ」

ーー なんだか変な感じだけど、今日はよろしくお願いします。そもそも最初に会ったのは、私が大学生でシアトルに交換留学へ行ったときに友達になった子と日本に帰って来てからも仲良くしていて、その子の幼馴染だったのがけいちゃん(鈴木さん)っていう繋がりだよね。

「うん、僕も最初会ったときはコーヒーとは全然関係のないサラリーマンをやっていて、商社で営業してたもんね。僕はもともとコーヒー飲まないほうだったからね」

ーー そうなの? 私もその頃飲まなかったから、誰がよくコーヒーを飲んでるかとか気にしたことなくて。なのに、今ふたりともこの状態っていうね(笑)。あのさ、今日も外国人のお客さんがたくさん来るけど、どうしてだろ?

「最初はTimeOutにちらっと載せてもらったのと、あとは周りに大使館が4つくらいあるから、自然と外国の方が多いエリアなんだと思う。あとはAirbnbのポイントもあって、1週間ごとにスーツケースを持って歩いている外国人が入れ替わっているかな。彼らが滞在中に毎日来てくれて、だいたい1週間ごとに常連さんが変わる(笑)。それでその人たちが紹介してくれたって言いながら、またその友だちが来てくれたりするよ」

ーー この奥渋谷って、フラッと歩いててCamelbackをたまたま見つけて入ってくる人は多いのかな? インスタのハッシュタグで見ると、韓国の人がめちゃくちゃここに来てるなと思って。フラッとじゃなくて、きっと目指してきてるよね?

「韓国の人ってSNS依存率が高いから、それをもとに行動してくれているんだと思う。韓国、香港、台湾の人が多いかな。なかでも韓国の人は圧倒的に多いけどね」

ーー こうやって外国の人もたくさん来るカフェになったわけだけど、けいちゃんがお店を持ちたいって思ったきっかけって何?

「全部話すとちょっと長くなるんだけど、27〜28歳のころフラフラしててお金なくなって働かなきゃいけなくなって、パタゴニアで働き始めて。そこで社員にならないかって言われたタイミングがあったんだけど、よくコーヒーを飲みに行ってた『Streamer』からも働いてみない?って声かけてもらって。こっちのほうが面白そうかも、って思ったんだよね」

ーー あの頃って、まだStreamerくらいしかなかったよね。アメリカの友だちから「東京行くんだけど、シアトルみたいなコーヒーが飲めるのってどこ?」ってよく聞かれて、いつもStreamerって答えてた。

「ポツポツとできはじめてた頃だけど、まだあんまりなかったよね。BearpondとStreamerくらいしかなかったんじゃないかな。でもコーヒーを飲むきっかけになったのはスターバックスなんだよね」

ーー 私と一緒じゃん!

「(笑)。当時、うちの相棒の成瀬がアメリカに住んでて、日本に帰って来て会おうってなったときに、まだあんまりスタバもなくて。できたばっかりの明大前のスタバでキャラメルフラペチーノを買ってきてくれたんだけど、それが衝撃で。要はさ、それまでコーヒーを飲んできてなかったから、あのカップとロゴと甘いコーヒーにビックリしてさ。だから僕、それから5年くらいモカしか飲んでなかったからね(笑)」

ーー 私も最初はずっとラテだった。ブラックまでの道のりは長かった!

「でもそれから、スタバに行ってコーヒーを飲むっていうのが日常に組み込まれたんだけど、波乗りするからコーヒーが必須なんだよね。朝早いし、サーフィン終わった後に東京まで車運転して帰らなきゃいけないから、みんなコーヒー飲む」

人の生活の一部に
ちょっとだけ入り込めるのが
コーヒーの面白さ

ーー サウナ好きな人もコーヒー好きばっかりなんだよ。サーファーもコーヒー好きが多いのか…。

「ま、そういう流れでStreamerで飲むようになって、誘われて。コーヒーに触れてみて、この世界ってすごく面白いなって感じたんだよね。要は人の生活の中に簡単に入り込める。色んな人がいるんだけど、毎朝仕事行く前に必ず寄る人もいれば、お昼食べた後に来る人とか、たまに来る人とか。いろんなパターンがあるんだけど、人の生活の一部にちょっと入り込めるって面白いなって思ったんだよね」

ーー 私もコーヒーのサイトを始めたのって、別にトピックはコーヒーじゃなくてもよかったんだけど、コーヒーって本当みんな飲むでしょ。いろんな人がいるけど、コーヒー飲む人なら誰でも読んでくれるだろうな、と思って。

「そうなんだ。確かに母数が多いもんね。でもさ、実はサービス業をバカにしていたところがあって。僕はサラリーマンだったし、安価なものを売る仕事って誰でもできるって思ってたんだよね。でも全然違った。その時の気分に応じて話のネタを変えたり、たった1杯数百円のコーヒーを手渡すときのほんの数分の時間のなかで、作り手がそのお客さんをどれだけハッピーにできるか、っていうところが作り手の器量だなって思って」

ーー そうだよね。いい体験をすると美味しいにつながるもんね。

「そうそう、結局は『人』だからね。味がいいのは前提なんだけど、それをおいしくさせるのも、させないのも、その人次第だと思う」

コーヒーの「美味しさ」って
なんだろう?

ーー 話は変わるけど、今日ラテ飲んでるんだけどドリップって出してるの?

「いや、ドリップは出してない。僕がドリップをやってきてないし、あとドリップって家でできるじゃん。エスプレッソも家で一応できるけど、100万円くらいするマシンと比べると全然味が違う。せっかくお金を出して買うものは、自分ではできないものであってほしい」

ーー 外であんまりチャーハン食べないのと同じかな(笑)。ドリップ飲みたいから出してくれって言って来るお客さんとかもいるんじゃない? やっぱりさ、お店やるのって大変? コーヒー作るだけじゃないもんね。経営もしなきゃいけないわけだから。

「めっちゃ大変!(笑)めちゃくちゃ楽しいけど。一度来てくれたお客さんが『あれ、また来てくれたな』ってわかって、そのあと何度も続けて来てくれるようになると本当に嬉しい。たとえば、うちの成瀬が働いてた高いお寿司屋さんなんかは、お客さんは毎日来るわけではないけど、来た時にはゆっくり時間を過ごして高額のお金を払ってお寿司を食べていってくれるわけ。でもコーヒー屋さんて、少額だし費やす時間は少ないけれど、その代わり毎日のように来てくれるじゃない? 結局その積み重ねというだけで、お寿司屋さんで1回に払うお金や時間と、トータルにしたら同じくらいになってるんだよね」

ーー それってサービス業の醍醐味だね。お客さんと直接向き合うからこそわかることだよね。私なんかはウェブサイトだから、サイトのアナリティクスを見てどんな国の読者が来てるかとか何歳くらいか、何分滞在したか、とかは分析できるけど、顔を見てるわけじゃないから「いいね」とか「リツイート」で反応見るしかないもんね。でもさ、お店やるのって 本当に大変だよね。

「そうだね、逆にコーヒー作るだけならやってないかも。東京ってコーヒー屋さんオープンするのが流行っちゃったし」

ーー やっぱり、オープンしてはすぐ潰れてっていう感じなのかな?

「今はまだブームが残っているから大丈夫だけど、この先5年後にどれだけ残ってるのかな、とは思う。コーヒー屋さんってさ、お店にマスターがいて出してっていうのが完成形だとしたら、次のステップに行くには多店舗展開しかないと思うんだよね。そうするとさ、なかなか難しい。あとはECかな。その2パターンくらいしかない」

ーー 同じようなコーヒー屋さんを開きたいんですけど、みたいな相談をしにくる人っている?

「直接的に言われたことはないなぁ」

ーー 私、「同じようなウェブサイトを作りたいんですけど、どんなツール使ってるんですか」とか、「作ったんで意見ください」とか「作ったのに、誰も見てくれないんですけどどうしたら広がりますか」とか、すごく問い合わせがくるよ。

「へー! それを全部答えてあげてるの?」

ーー うん。でもあまりに数が多いから問い合わせページに「サイトはこの言語で作っています、絵はイラストレーターで描いています。使い方はYouTubeビデオ貼っておくのでこれで勉強してみてね」とか全部書いておいたら、だいぶ数は減ったよ。

「それをオープンにしてるのはえらいね」

ーー ウェブサイトだから、特に隠し味みたいなものがあるわけでもないしね。あと、ウェブサイトは試しに作ってみることできるけど、お店は試しに出しますって簡単にできることじゃないでしょ? けいちゃんのところは隠し味とか企業秘密みたいなのってあるの?

「特にないよ。メニューだってオープンからずっと変わってないかな。玉子サンドはオープン後にできたけどね」

ーー 本当にさ、なるちゃん(サンドウィッチ担当の成瀬さん)と組んで2人でやって良かったよね。いい巡り合わせだったと思う。

「確かに成瀬がいなかったらダメだった。本当にそれが勝算だったと思うよ」

季節限定の「北海道産 鰯のサンドウィッチ」

ーー コーヒーってさ、むちゃくちゃまずいのはどんな人でも飲んだらわかるけど、ある程度の美味しさを超えたら、プロじゃない限りそこまで味の繊細さには気づかないでしょ。私を含めなんだけど(笑)。たとえばラテなら、ミルクがすごく新鮮で美味しかったら美味しくなるし。でもなるちゃんのサンドイッチって見た目もだけど、食べてすごく美味しさがわかるじゃない? だからサンドイッチがあれだけ顕著に美味しいとわかってもらえてお客さんに集まってもらえたことで、コーヒーにも脚光が当たったという感じだよね。

「そうなんだよね。僕も何回も試行錯誤してオリジナルの豆を作ってこだわってやってるけど、結局コーヒーって飲む人がひと口飲んだあとにおいしくて『はぁ〜』ってなるのが、その人にとっての美味しさだと思うんだよね」

ーー 私さ、友だちだからご贔屓で言っているわけじゃなく、けいちゃんのコーヒーが東京で1番好きなんだよね。今までシアトルで飲んできたコーヒーに似ていて。

「要は古いんだよね…」

ーー いや、それがやっぱり馴染みがあって落ち着く味。でもさ、古い新しいって言うけど、このあとコーヒーってどうなっていくんだろう? こうやっていいコーヒーを気軽に飲めるようになって、コーヒーの世界ってもう完成した感じもするから、このまま新しいことがしばらくなくてまっすぐ行くのかな、とも思ってる。

「より身近なものにはなったよね。また戻ったりするんじゃない? スタバとか。僕たまに抹茶フラペチーノ飲んじゃうからね」

ーー 私はさ、スタバが私をコーヒーの世界にいざなってくれたから、絶対にディスらないよ。スタバのおかげで今がある。

「僕さ、この前ニューヨーク行ったんだけど、いろんなコーヒー屋さん巡って、最後にJFK空港でスタバのアメリカーノ飲んだのね。それが1番うまかった(笑)」

ーー 意外にね! それコーヒーの世界にいる人のあるある!

CAMELBACK sandwich&espresso

住所:東京都渋谷区神山町42-2
定休日:月曜日
営業時間:10:00-19:00

Photo by TABI LABO