スイス時計の聖地、ジュウ渓谷で知るオーデマ ピゲの原点

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オーデマ ピゲは創業の土地を非常に大切にし、ロゴに「Le Brassus(ル ブラッシュ)」の文字を組み込み、ブティックにもそのイメージが反映されている。そんなオーデマ ピゲの原点を訪ね、その時計作りの神髄に触れた。

スイス時計の聖地、ジュウ渓谷
 
オーデマ ピゲは、ジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲという2人の時計職人によって、1875年に創業した歴史ある時計ブランドだ。そして、142年の歴史のなかで数多くの名作時計を生み出し、現代においても最高峰の時計ブランドのひとつに数えられている。さらには、大資本傘下への統合が進む今日の時計業界にあって、インディペンデントを保ち、創業者一族が今も経営に参加している稀有なブランドでもある。
 
そんなオーデマ ピゲの故郷であり、現在も本拠であるスイス・ル ブラッシュを訪ねた。  
 
この地は、フランスとの国境に近い、ジュウ渓谷と呼ばれる場所だ。スイス時計を発展させ、現在も多くの時計ブランドが拠点を置く、時計の聖地とも呼ばれる地域でもある。オーデマピゲは2012年にロゴに「Le Brassus」の文字を組み込むなど、ジュウ渓谷の時計会社であることを強調しており、思い入れも強い。


時計製造が盛んなジュウ渓谷は、スイス北部にある。海抜1000mの場所で、都市であるジュネーブへと続く道は3本しかない。

オーデマ ピゲの本社および工房は、ル ブラッシュのメインストリートに沿って建てられている。そして、その発展に沿うように増築され、現在では創業当時の5倍以上にもなっているという。
 
もっとも古いものが1868年に建てられたもので、最新の建物が2008年に完成している。しかも、その新しい建物はスイス初のエコ・ビル「ミネルジー・エコ」に認定されるという、最新鋭のもの。環境に配慮された現代における理想的な建築物となっている。歴史ある19世紀の建物と21世紀の最先端建築が混在する。まるでオーデマ ピゲの時計を体現しているかのようである。

継承されている職人による手作業
 
工房では、検査用のものなど最新の機械も導入されているが、基本は創業当初からの手法、つまり手作業による時計製作を貫いている。充分に研鑽を積んだ職人によって組み上げられるからこそ、時計は高品質を保ち続けることができるのだ。

その象徴的な部署が、ビンテージピースの修復工房である。

この工房では、これまでに製作したものは、たとえそれが懐中時計の時代の複雑時計であっても必ず修復されるという。工房内に創業時からの時計がパーツの状態で保管されており、それに基づいてパーツが作られ、そこにないものは新たに設計図面に基づいて作られる。古いもので1882年のものから保管されているという。
 
それは、自社製品だけでなく、ジュウ渓谷で製作されたすべての商品が対象となっている。それはオーデマ ピゲに、この地における時計文化の遺産を守っているという自負があるからにほかならない。
 
その丁寧な仕事は、いうまでもなく現代の時計製作にも継承されており、機械式時計のキモであるムーブメントの製作でも複雑に入り組んだ膨大な数のパーツは手作業で組み立てられる。



シンプルな手巻きモデルでも、100以上のパーツが使われており、その数は、自動巻き、クロノグラフと時計が複雑になるにしたがって、どんどん増えていく。精密機械である時計だけに、ひとつのパーツに不具合があっても正常に機能しなくなるので、複雑になればなるほど難度は増していくのである。

オーデマ ピゲでは、その構成パーツすべてに手作業で磨きをかけ、装飾を施す。パーツをただ正確に作り、正確に組み立てさえすれば、時計の機能上の問題はないはずで、裏蓋で覆ってしまえば表からまったく見えないムーブメント。それを、しかも数百からなるムーブメントの構成パーツすべてに、手作業で磨きや装飾を施すことが高級時計ブランドとしての誇りなのである。



そんなオーデマ ピゲの歴史やこれまで世に送りだしてきた名品の数々は、工房内にあるミュージアムに展示されている。
 
そこは、ロイヤルオークのファーストモデル(1972年)からロイヤル オーク オフショアのファーストモデル(93年)まで、その変遷が辿れるようになっていたりと、オーデマ ピゲファンには堪らない構成となっている。さらに、世界最薄の懐中時計用ムーブメント(25年当時)、世界最薄の自動巻きムーブメント(67年当時)、トゥールビヨン搭載の世界最薄、最小の自動巻きムーブメント(86年)など、オーデマ ピゲの高い技術力を示す、”世界初” のムーブメントも展示されている。

このミュージアムは、現在、もっとも古い建物のなかにあるが、敷地内に建築中(今年3月に着工)の近代的な新ミュージアム完成後、そこと一体化される。



ビャルケ・インゲルス設計の新しいミュージアムは、これまでの歴史的な建造物とはまったく違い、外壁がガラス張り、かつ円形というモダンなデザイン。完成が楽しみである。