開幕前に予想した「2017年シーズン10大注目ポイント」の答え合わせの後編は、マクラーレン・ホンダの活躍ぶり、そして日本人F1ドライバー誕生の可能性……などなど。1ヵ月ぶりとなるグランプリ再開の前に、シーズン前半戦を振り返ってその予想が当たっていたのか否か、改めて検証してみる。

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マクラーレン・ホンダと3強チームとの差は縮まったのか

(6)父親は大富豪。鳴り物入りで超大型ルーキーがF1デビュー【答え:○】

 スケール違いの大富豪の息子ランス・ストロール(ウイリアムズ)は「ペイドライバー」と言われながらも、そんな批判の声には慣れっこで、「結果がすべてだ」と言い切っていた。開幕当初は速い2017年型マシンに苦労したが、地元カナダGPで初入賞を果たすと、アゼルバイジャンGPでは荒れた展開のなかで生き残って3位表彰台を獲得。一気に周囲の評価を一変させてみせた。

「ランスはスペインGPあたりからリラックスしてレースができるようになった。これだけプレッシャーの多い世界だから、考えすぎるのは決していいことばかりではないんだ。それがいい方向に向かっている理由のひとつだと思うよ」(フェリペ・マッサ/ウイリアムズ)

 とはいえ、予選や決勝の純粋なペースを見れば、まだ僚友マッサと比べてもやや見劣りする部分は残る。後半戦は結果だけでなく、こうした実質の部分も伸ばしていかなければならない。

 メルセデスAMGの支援を受けてフォースインディアのシートを得たエステバン・オコンも、開幕当初は新チームとのコミュニケーション不足でマシンを思うように仕上げられずに苦労した。しかし、次第にお互いの理解が進んだことで信頼して攻められるマシンになり、速さを発揮できるようになったという。

 チームメイトのセルジオ・ペレスとの接触やチームオーダーを巡る衝突もあったが、裏を返せばチームが信頼を寄せるペレスと同等の速さを見せているということにもなる。

 ストフェル・バンドーン(マクラーレン・ホンダ)も前半戦はずっと苦戦が続いた。フェルナンド・アロンソというF1界最速ドライバーのひとりが直接の比較対象であることがひとつ、そしてパワー不足のマシンを補ってタイムにつなげるという特殊なドライビングが求められるなかで、ベテランのアロンソほどうまく対応できなかったのというのがもうひとつの理由だった。

 それでもイギリスGPでは予選でアロンソを上回るなど、こちらもエンジニアとのコミュニケーションが密に取れるようになったことでマシンのフィーリングもよくなってきたと言い、後半戦にはさらなる活躍が期待できそうだ。

(7)マクラーレン・ホンダは表彰台に立つことができるのか?【答え:○】

 これは悪い意味で、予想が当たってしまった。

 チームとしての今季の目標は表彰台だったが、開幕前の本コラム予想では「現実的に考えて、車体とパワーユニットの両面でブレイクスルーが果たせなければ、いきなりトップに駆け上がることは難しい」とした。

「独創的なアイデアが形になる可能性は低く、レギュレーション大幅変更の年だからといって、ずば抜けたマシンが生み出されることはなさそうだ」
「一方でホンダのパワーユニットも、いきなりメルセデスAMGを超えてトップに躍り出ることは容易ではない」

 その両方が予想どおりで、車体面でもパワーユニット面でも上位3強チームとの差はまだ大きい。

 シーズン前半戦に行なった大きく分けて3度のアップデートで、車体は3強にかなり近づいてきた。パワーユニットも「スペック3」でようやく中団で戦えるレベルにまではきた。

 しかし、「答え合わせ@前編」で述べたとおり、今年は3強と中団以下の差が大きい。3強が6台ともリタイアしなければ、中団勢は7位が最高位ということになる。前半戦で中団グループ唯一の表彰台は、アゼルバイジャンGPの大荒れの展開に助けられたウイリアムズのみで、通常のレース展開ならば表彰台は到底手が届くものではない。

 マクラーレン・ホンダが表彰台に立つためには、車体・パワーユニットの両面で少なくとも3強チームのレベルに到達しなければならない。今シーズン中にそれが果たされることを期待したいが、現実的に考えれば、それが容易でないことは明らかだ。

(8)F1へのラストステップ。日本人ドライバーの活躍はいかに?【答え:△】

 日本人F1ドライバーを誕生させるべく、ホンダはHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)の一環として3名の若手ドライバーをヨーロッパに送り込み、FIA F2に松下信治(まつした・のぶはる/23歳)、GP3に福住仁嶺(ふくずみ・にれい/20歳)、FIA F3ヨーロッパ選手権に牧野任祐(まきの・ただすけ/20歳)を参戦させた。彼らの中からスーパーライセンス取得に必要なポイントを獲得したドライバーが現れれば、ホンダとしてもパワーユニットのカスタマー供給などを通じて彼らのF1へのステップアップを支援する態勢を取っていたわけだ。

 結論から言えば、ザウバーとの提携が解消となり、トロロッソへの供給の可能性も厳しくなった今となっては、2018年にホンダが日本人ドライバーをF1のレギュラーシートに送り込むことはかなり難しくなってしまった。しかし、FIA F2やGP3などで実力を証明すれば、ストフェル・バンドーンやバルテリ・ボッタスらがそうであったようにテストドライバーとして経験を積み、1年後にレギュラーシートを獲得するチャンスも生まれてくる。

 FIA F2に参戦する松下信治は、スーパーライセンス取得の可能性を残している。所属するARTグランプリはエンジニアの流出により、バンドーンを王座に導いたときのような速さと強さがない。実質的に3〜4番手のチームになってしまっているため、今季は苦戦を強いられている。

 だが、前半戦の最後にはエンジニアとのデータ分析などを通して調子は上向いており、ハンガリーラウンドのレース2で優勝。8月にはザウバーで初めてのF1テストを経験して視野も広がり、ライセンス取得基準のランキング3位まで32ポイント差を逆転すべく、後半戦に向けてモチベーションを高めている。

 ヨーロッパ初挑戦の牧野任祐は順応に苦労し、シーズン途中で手首骨折のケガを負ってしまったため、スーパーライセンス取得は厳しい状況に追い込まれた。しかし、2年目のGP3を戦う福住仁嶺は常に優勝争いを繰り広げ、メルセデスAMG育成のジョージ・ラッセル(イギリス/19歳)、ルノー育成のジャック・エイトキン(イギリス/21歳)らと今季のタイトル争いをしている。ただし、GP3ではタイトルを獲得してもスーパーライセンス取得の条件を満たすことができないのが残念だ。

 つまり今年、「F1への最後の一歩」を踏み出すことができる可能性を残しているのは松下のみ。その松下とて、スーパーライセンスを取得できたとしても2018年のレースシートを獲得することはかなり難しい。

(9)最後かもしれないシンガポール&マレーシアを見逃すな!【答え:△】

 1999年から20年近くにわたって開催されてきたものの、マレーシアGPは今年で開催終了となる。東南アジアらしい灼熱の太陽の下でのレースは、これを逃すとしばらくは見られない。

 2017年型マシンの速さが存分に発揮されるコースレイアウトであり、昨年の時点で路面が再舗装されてグリップも向上した。それにより、ドライバーの体力的負担が大きくなって疲労困憊する姿も見られたので、今年はさらに過酷なレースとなることが予想される。日本から距離が近く、LCC等を使えばチケットも滞在費も安く楽しむことができるだけに、マレーシアGPの開催終了は残念だ。

 一方、同様にF1開催終了が噂されていたシンガポールGPは、開催契約を更新する方向で話が進んでいるという。華やかなマリーナベイの市街地をF1マシンが駆け抜ける非日常感に加え、アンバーラウンジをはじめとした特設クラブや高級ホテルのナイトライフを楽しみながら、今年はアリアナ・グランデやデュラン・デュラン、カルヴィン・ハリスらのコンサートも行なわれる。

 どちらのレースも、最後でなくとも観に行く価値は十分にあると言うべきだろう。

(10)「F1界のドン」が退陣。その先にあるのは繁栄か混乱か?【答え:○】

 バーニー・エクレストンがF1の現場から去り、株式を買収したアメリカの大手メディア関連企業「リバティメディア」がF1改革を推進してきた。まずはレースそのものではなく、テレビ放送の改善や観客エリアの充実など、「ファンファースト」を前面に打ち出したファンサービスの充実を推し進めており、これは一定の評価を得ているようだ。

 たとえば、パドックの入口に「入り待ちエリア」を設け、朝一番にサーキットにやってきたF1ドライバーに会えてサインをもらったりできるような機会を作ったこと。タイヤ交換体験やゲームゾーン、記念撮影サービス、グッズショップ、トークショー&ライブステージなど観客エリアの設備を充実させると同時に、ドライバーやチームの写真でデコレーションしたり、人工芝を敷いたり、休憩エリアを設けたりと、ファンが過ごしやすい環境も整備してきた。

 また、日本GPに向けても鈴鹿サーキット関係者がリバティメディアとの話し合いを進めており、これまでよりもさらに一歩進んだファンサービスが展開されることになりそうだ。

 ロンドン市街地における全チーム参加のデモ走行イベントや、2シーターF1マシン体験乗車サービスなど、ファンに向けた活動も拡大。スペインGPではキミ・ライコネン(フェラーリ)の0周リタイアに大泣きしていたファンの少年を見つけ、パドックパスをプレゼントしてライコネン本人に会わせるなど、粋な計らいを見せた。お高くとまるのではなく、ファンを第一に考えた演出とサービスが続々と考案されている。

 ただし、ある意味ではリバティメディアによるF1改革はまだ表層的なものであり、レースそのものや「F1村」と称されるF1界の慣習には改革のメスが入ったとは言えない。このあたりが今後どうなり、F1がどのように姿を変えていくのかもシーズン後半戦の注目ポイントだと言える。

 いずれにしても、F1は立ち止まることなく進化を続けていく。新世代に突入した2017年のF1は、その進化の向かう方向がこれまでとは少し変わった。そして、これからもどんどん変わっていくだろう。だからこそ、シーズン後半戦もF1から目を離すことはできないのだ。

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