市販時点ではビッグホーンベースで登場

 すでに乗用車の販売から撤退して15年が経過するいすゞ自動車だが、いまだに根強いファンがいることからもわかるように、今見ても強い魅力を放つモデルも少なくない。そんな個性的ないすゞの乗用車のなかでも、ひと際異彩を放つのが、1997年に発売された「ビークロス」ではないだろうか。

 ビークロスの始まりは1993年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「ヴィークロス」だ。すでに外観は市販車版とほぼ同一の意匠を持っていたが、このときのベースになったのは、ジェミニの4WDであったため、ボディサイズは市販車に比べて、ひとまわり小さいものとなっていた。また、搭載されるエンジンも1.6リッター直列4気筒ダイレクトインジェクションDOHCスーパーチャージャー付きであるとアナウンスされている。

 そして東京モーターショーから4年後の1997年4月に販売が開始された市販車版ビークロス。車名はコンセプトモデルの「ヴィークロス」から「ビークロス」へと表記が変更されていたが(英語表記はどちらも「VehiCROSS」となる)外観はコンセプトカーの雰囲気そのままといった感じ。これは過去に「このスタイルでの市販化は到底不可能」と言われたにもかかわらず、ほぼそのままのスタイルで市販化された初代ピアッツァを思わせるものだった。

 しかし、1993年に乗用車の自社生産を打ち切っていたためか、ベースはジェミニからビッグホーンに変更されており、搭載されるエンジンも3.2リッターV6のガソリンエンジンで、ディーゼルエンジンの設定はなかった。これは当時のいすゞのフラッグシップモデルという役割を果たすためとも言われている。

 また、足まわりなども基本的にはビッグホーンのものを踏襲しているが、オイルタンク別体のショックアブソーバーが純正採用されるなど、フラッグシップモデルにふさわしいこだわりを随所に見ることができる。

 そんなこだわりが詰まったビークロスだったが、登場当時の車両価格は295万円と意外にもリーズナブル。これは他車種とパーツの共有化を推し進めた結果であり、前述したシャーシはもとより、個性的な外観には他メーカーのパーツも多く流用されているのだ。例をあげると、ヘッドライトはオートザム・キャロル、サイドウインカーはマツダ・ロードスター、フロントターンレンズはダイハツ・オプティのものが使用されているのだ。

 残念ながら日本国内では1999年で販売を終了してしまったビークロスだが、北米市場では人気が高く、2002年まで生産が続けられた。またメーカーもビークロスには思い入れがあったのか、1999年の東京モーターショーにはオープンエアモータリングも楽しめる「VX-O2」が、2000年の北米国際オートショーには4ドアモデルの「VX4」が発表されているが、どちらも残念ながら市販化には至らなかった。

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