『ジュニアサッカーを応援しよう!VOL.46』(カンゼン)のインタビューに応じた大迫勇也【写真:浦正弘】

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公式戦復帰前の日本代表メンバー入り

 W杯アジア最終予選に臨む日本代表メンバーに名を連ねたFW大迫勇也(ケルン/ドイツ)。日本代表の軸に成長したストライカーは、これまでどのような成長曲線を描いてきたのだろうか。9月6日発売となる『ジュニアサッカーを応援しよう! VOL.46』(カンゼン)では、大迫本人をはじめ育成年代で彼の成長に関わってきた人々にインタビュー取材を敢行し、万能型CFの成長過程に迫った。先んじてその一端を紹介する。(取材・文:元川悦子)

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 8月31日のオーストラリア戦(埼玉)と9月5日のサウジアラビア戦(ジェッダ)の2連戦は2018年ロシアワールドカップアジア最終予選突破のかかる正念場。日本はいずれかの試合で勝利できれば6大会連続となるW杯への切符を手にできるが、相手はどちらも難敵なだけに、決して楽観は許されない。

 最終決戦に挑む代表メンバー発表が24日に都内のJFAハウスで行われたが、大きな関心事の1つがエースFW大迫勇也(ケルン)の動向だった。7月31日のボローニャとの親善試合で右ひざを負傷。「少なくとも3週間の離脱」とクラブ側から発表されたことで、今回の2連戦に間に合うか微妙な情勢となっていたのだ。

 8月20日の今季ドイツ・ブンデスリーガ開幕戦のボルシア・メンヒェングラッドバッハ戦もベンチ外となり、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が公式戦に復帰できていない彼の招集に踏み切るかは不透明と言わざるを得なかった。

 しかしながら、FWのリストには彼の名がしっかりと記されていた。

「大迫は10〜12日間、別メニューをしていたが、ここ1週間は合流し、今週末は試合にも出る見通し。代表とクラブのメディカルスタッフもポジティブだ。プレシーズンもいい準備をしているので、早めにトップフォームを取り戻せると思う」と指揮官はあえて抜擢に踏み切った理由を説明した。

 リスク覚悟でメンバーに入れたのは、彼に絶大な信頼を寄せているから。昨年11月のサウジアラビア戦(埼玉)から1トップの座に君臨する26歳のFWは前線でボールを収め、起点を作る仕事でチームに大きく貢献している。6月のイラク戦(テヘラン)では本人が渇望していたゴールもゲット。それも苦手だったヘディングでの先制弾だった。

「(鹿児島城西)高校時代はヘディングの得点は少なかったですが、鹿島アントラーズ時代の先輩・岩政大樹選手(東京ユナイテッド)にアドバイスを受けながら自分のものにしていったようです。最近のドイツでのプレーを見ていても、得点のバリエーションが格段に増えたと感じます」と同校の恩師・小久保悟監督が言えば、鹿児島育英館中学校時代の恩師・山平義幸監督も「ハングリー精神と向上心、我慢強さは昔から頭抜けていました。そのメンタリティがあったから、大舞台で仕事ができる選手になれた。後輩のいいお手本になっています」と嬉しそうに話す。彼は地元・鹿児島の人々からの力強いサポートを受け、ここまで成長してきたのだ。

少年時代は無名。中学時代を経て、高校で開花した才能

 鹿児島県南西部の加世田市(現南さつま市)出身の大迫は少年時代は無名だった。万世サッカースポーツ少年団で小学校3年からプレーしたが、全国大会とは無縁。「走り込みとか厳しい練習はなくて、いつも楽しくサッカーをしていました」と本人も述懐する。

 中学時代はその環境から一変。情熱的な山平監督の下で、闘争心を煽られる日々を過ごした。「『もっとこい』『かかってこい』という私の言葉に反応して、勇也はガツガツと向かってくる。負けじ魂をむき出しにする彼と1対1の勝負をするのは、本当に楽しかったですね」と熱血指導者は笑う。

 大迫はもともと口数が少なく、あまり感情を表に出さないが、向上心は人一倍強い。その秘めた荒々しさを山平監督が引き出したからこそ、代表エースに上り詰めた今があるのだろう。

 そして、高校時代は2009年正月の高校サッカー選手権での1大会10ゴールという新記録達成に象徴される通り、点取り屋の才能を大きく開花させた時期だった。小久保監督に「周りを使え」と口を酸っぱくして言われたことが大きかったのか、ゴールもアシストもできるマルチな能力に磨きをかけた。

「サコちゃんはホントにボールが収まる」と代表の盟友・原口元気(ヘルタ)も太鼓判を押していたが、ゴール以外の仕事で今の日本代表にリズムをもたらしているのは紛れもない事実。それも高校時代に得た大きな財産に違いないだろう。

 こうして鹿児島で力を蓄え、鹿島、1860ミュンヘン、ケルンとステップアップした大迫。日本をロシアへと導くであろうFWの成長過程に今一度目を向けたうえで、最終予選の大一番を見るべきだ。

(取材・文:元川悦子)

text by 元川悦子