TUBE、悪天候をも乗り越え見せたバンドの強度 29回目の横浜スタジアム公演レポ

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 TUBEにとって通算29回目の横浜スタジアム公演となる『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2017 sunny day』が8月19日、開催された。デビュー翌年の1986年から、実に32年連続で単独野外ライブを行い、計270万人以上を動員してきたTUBE。特に地元・横浜スタジアムでの公演は例年、大きな盛り上がりを見せるが、30回という節目を迎える2018年に向けて、記録以上に、ファンの記憶に強く刻まれるステージになった。

 雷雨も予想される曇天――それでも3万人の観客が詰めかけた横浜スタジアムに“TUBEコール”が鳴り響くなか、メンバーの登場は予想外のものだった。

 4人は何の気負いもなく、ふらりとステージに上り、前田亘輝(Vo)が「一度やってみたかった」というアコースティック編成でライブをスタート。春畑道哉(Gt)の美しいアルペジオでオーディエンスを一気に引き込んだ1曲目は、20年前、97年の夏にリリースされた名曲「Purity 〜ピュアティ〜」だ。前田の心を震わせるボーカルと、春畑の精確かつ情熱的なギター、その突き抜けた個性をどっしりと支え、相乗的にサウンドの魅力を高める角野秀行(Ba)&松本玲二(Dr)のリズム隊――シンプルな編成だからこそ、それぞれの声、音に自然と耳が行き、円熟したアンサンブルにあらためて唸らされる。

 「横浜スタジアムをビーチに変えたいと思います」という前田のMCとともに、松本がスマホから波の音を流し、ハワイアンアレンジで披露された「Beach Time」では、前田がベースを、角野がウクレレを担当してファンを湧かせた。出色だったのは、ライブでは久しぶりの披露となった「蛍」。前田は5月から7月まで続いたツアー中、天然のホタルを見たというエピソードを明かし、同曲を瑞々しく歌い上げた。

 アコースティックパートの最終曲は、“ご当地ソング”とも言える「湘南My Love」だ。4人がおそろいの青いギターを奏でると、<江ノ島が雨に泣いてる>のフレーズとともに、雨がポツポツと降り始める。野外ライブの王者は、悪天候さえ演出に変えてしまうのか――と、このあとに訪れるトラブルをまだ知らない筆者は、しみじみと名曲に耳を傾けていた。

 ここからステージは一気に加熱する。ダンサーを招き入れ、披露したのは今年6月、24年ぶりにリリースされたミニアルバム『sunny day』の収録曲「Shiny morning」だ。夢見ることを忘れず、諦めずに歩き続けた先に、輝ける未来が拓けていく――前田の包容力のある歌声と、バンドのキャリアが感じさせる、この前向きなメッセージの重み。そこから「もう負けないよ」、「僕達だけのSummer Days」とアップテンポなナンバーでスタジアムをさらに盛り上げていく。

 そして、続く「Miracle Game」がまさに大サビに差し掛かったとき、閃光とともに大きな雷鳴が轟いた。口々に「演出かと思った」と語り合う声が耳に入ったが、安全が第一。前田も「こんなことは初めて」と語り、一時中断のアナウンスが行われた。雷は近くで光り、そのたびに観客からどよめきが起こる。しかし、「一時避難」という緊急措置に対してパニックは起こらず、着席してアナウンスに耳を傾ける姿に、TUBEファンのモラルの高さを感じた。激しい雷雨が続き、ライブが再開されるかどうかはわからない。それでも大多数のファンはスタジアムに残り、年に一度の祭りが続くことを祈っていた。

その願いが届いたのか、1時間ほどで天候は回復。ステージに上った前田は、「みんな大変だったね。ステージにある照明が壊れてしまったけれど、スタッフの努力で音が出せるようになりました。この夏一番の素敵な思い出を再開しましょう!」と語り、『sunny day』収録の新曲「愛はメリーゴーランド」、情熱的な愛を歌う「Paradiso〜愛の迷宮〜」を歌い上げた。照明の故障も、1時間の中断の影響も、まったく感じさせないパフォーマンスだ。この対応力の高さも、他のアーティストに類を見ないほど、単独野外ライブを重ねるなかで培われたものなのかもしれない。

 本編のラストを飾ったのは、<泣かない事が強いんじゃなくて 涙を虹に変えるのが勇気>、<負けない事が偉いんじゃなくて 何度でも立ち上がるのが希望>と、オーディエンスを熱く鼓舞する「涙を虹に」。雷雨による一時中断というトラブルを乗り越え、大団円に向かうに相応しいメッセージを伝え、曇天を切り裂くような打ち上げ花火とともに、圧巻のパフォーマンスを見せつけた。

 アンコールでは、メインステージでストンプがリズムを刻むなか、メンバー4人が消防車に乗り込み、巨大な水鉄砲でスタンドのファンをクールダウンさせながら、スタジアム後方の特設ステージに向かう。そして、ライブを盛り上げる定番曲「おかげサマー」、「海の家」を披露し、最後はやはりこの曲、前田も「この曲をやらなきゃ、夏は終わらないでしょう」とオーディエンスに呼びかけた「あー夏休み」だ。雨も再び降り出していたが、とたんに猛暑のなか水浴びをしているような、爽やかな気分になる。

 そして、Wアンコールとして披露されたのは、前田が「今日この日のためにつくったといっても過言ではない」と胸を張った、ミニアルバムの表題曲「My sunny day」。<空見上げて 手を広げ 風を感じて 走りだそう>という3万人の大合唱は圧巻で、野外ライブだからこその開放感と、ともに悪天候を乗り越えた一体感が、スタジアムを包んでいた。

 すごいライブを観た、と思う。アコースティックに始まり、ダンサーも交えたフルバンドでのパフォーマンス、そして予期せぬ一時中断というアクシデントと、その後、故障した照明以上の輝きを放ったパフォーマンス。もちろん、ステージが滞りなく進行するのが一番だが、終わってみればトラブルさえ、TUBEというバンドが持つ強度を印象づけるアクセントになっていた。2016年は台風の接近、2017年は雷雨と、天候に悩まされた横浜スタジアム公演だったが、いずれも見事なパフォーマンスで、30回目を迎える2018年の快晴を呼び込むドラマのようにも思えてくる。

 また同時に、数多いヒット曲だけでなく、ミニアルバムに収録された新曲がひとつの軸になっていたことも、見逃せないポイントだ。今年は11月15日のさいたまスーパーアリーナを皮切りにした10年ぶりのアリーナツアーも発表されており、デビューから30周年を超えて、さらに前進を続けるTUBEの姿勢が伝わってくる。例年になく雨が続く8月だが、TUBEの夏は終わらない。来年開催されるだろう、30回目の横浜スタジアム公演という節目まで、TUBEファンの熱い日々は続きそうだ。(文=橋川良寛)