ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が発表した日本代表のリストで、最初に目を引いたのは柴崎岳の復帰であり、杉本健勇の初招集だっただろう。武藤嘉紀の名前をメンバーリストに見つけるのも、久しぶりのことになる。

 ホームのアドバンテージを生かすために、個人的にはJリーガーをもう少し招集してもいいと考えていた。たとえば、センターバックもボランチもできる今野泰幸であり、右ウイングでも1トップでもプレーできる小林悠だ。

 ハリルホジッチ監督は当初から構想に入れていなかったようだが、中村憲剛の招集も検討の余地はあったと思う。香川真司のコンディションに確認が必要で、清武弘嗣もピッチから離れているのだから、36歳の経験者に頼ってもいいはずだ。

 長距離移動も時差の影響も受けず、蒸し暑さがぶり返している日本の気候にも慣れている中村憲は、ベンチにいるだけでチームに精神的余裕をもたらしてくる。現チームの主力選手ともかつて代表でプレーしており、コンビネーションの素地はある。ポジションの柔軟性も高い。

 もっとも、ヨーロッパでプレーしている選手の多くは、長距離移動や時差を繰り返し経験している。そのなかで、責任と自覚を持ってプレーしてきた。W杯出場に賭ける彼らのプライドには敬意を抱くべきであり、選ばれた27人には必ずや結果をつかんでほしい。

 日本サッカー協会の西野朗技術委員長は、「W杯予選でオーストラリアには勝ったことのないなかで、歴史を変えたい。オーストラリア戦だけにフォーカスしている」と話した。ハリルホジッチ監督も「歴史に残る試合、W杯出場を決める試合、オーストラリアに初めて勝利する試合」と、8月31日へ向けて強い意欲を示した。

 ホームでW杯出場を決められる状況を最大限に生かす、との決意表明だが、9月5日のサウジアラビア戦を“決戦”にしたくないというのも本音だろう。

 これまでアジア最終予選は、同日開催で行われてきた。ところが、UAE対サウジアラビア戦は日本対オーストラリア戦の2日前に、8月29日に行なわれる。

 日本が現地ジェッダに入るのは9月2日午前の予定だが、サウジアラビアは8月30日には帰国できる。しかも、アルアインからではなくドバイからのフライトでも、ジェッダまでは直行便で3時間ほどだ。移動による疲労は軽く、気候の変化にさらされることもない。

 ピッチに立つ前の準備では、日本が圧倒的に不利なのである。西野技術委員長やハリルホジッチ監督でなくとも、サウジアラビア戦にW杯出場決定を持ち越したくない、と考えるだろう。

 日本代表は8月27日から選手が順次合流し、29日に全員が揃う予定だ。チーム結成以来もっとも重要と言っていい活動が、間もなくスタートする。