パートやアルバイトというような非正規雇用が増え続けている現代。いわゆるフリーターと呼ばれているアルバイトやパート以外に、女性に多いのが派遣社員という働き方。「派遣社員」とは、派遣会社が雇用主となり、派遣先に就業に行く契約となり派遣先となる職種や業種もバラバラです。そのため、思ってもいないトラブルも起きがち。

自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員として働いている井上春香さん(仮名・24歳)にお話を伺いました。春香さんは、ダークブラウンのゆるふわウェーブのロングヘアに、素肌の綺麗さを生かした薄目のメイクに、目元はナチュラルなブラウンのカラーコンタクト、ピンクのアイシャドウを合わせていました。少し背中が開いているカーキ色のワンピースからは、紺色のタンクトップをチラ見せし、レギンスのように細見のホワイトスキニーデニムのコーディネート。普段はインスタグラムやtwitterなどを駆使し、キラキラ女子を演出しています。

「とりあえず、大勢で食べに行った時には、集合写真と料理写真は必ず撮ります」

彼女は千葉県の浦安市で生まれました。実家は事業規模は小さかったですが、介護や医療用の企業を経営していました。

「祖父が、病院で入院の時に使うタオルやパジャマのレンタルや、介護用品のリースレンタル業を行なう会社を経営していました。父は後継ぎだったので、社員という扱いで働いていました。母も、会社を手伝っていて休みなく働いていましたね」

家庭は、放任主義だったそうです。

「一人っ子だったのですが、家業が忙しかったのもあって、学童がある公立小学校に入学して、中学も同じ学区内の公立に進学しました。中学に入ってからは、バスケットボール部に所属して、部活したり、塾に通ったり。ごく普通の中学生活でした」

“公立以外は禁止”という父の希望で、中学から半数以上が進学する県立高校に進学します。

「高校も学区内にある県立に進学しました。進学校というほど、受験に熱心な学校ではなかったですが、4年制大学に進学する生徒が半数以上いたので、私も大学進学を希望しました」

それまでずっと公立で育ってきた春香さんにとって、比較的裕福な家庭の子が多い私立大学に進学したのが、転機となりました。

「中高一貫の付属校がある大学に進学しました。内部進学の子とは最初は壁があったのですが、なかには親しくなった子もいて。実家が、六本木や赤坂というような場所に飲食店を数店舗経営している子が同級生にいたのですが、芸能人が食べに来たりするそうで、交流とかも華やかそうだったんですよ。その子の友人グループに入ったのが大きかったですね」

大学で仲良くなった女子たちは、カフェやおしゃれなバーなどに遊びに行くのに慣れていました。

「学年は違ったのですが、芸能人の娘もいて、学校生活は地元の高校とは全然違いましたね。地元の子に自慢したくて、今でもSNSで女子会の集合写真とかアップしています」

高級車に乗っていた男性は、既婚者だった…

春香さんの趣味には、クルマ(ドライブ)があります。

「学生の時に、クルマのショールームの手伝いを頼まれて、単発でバイトしていたんですよ。その時の縁で、外車のショールームの受付兼事務として就職しました」

実家にあったセダンとは違い、デート向きなクルマに乗せてもらうことにステータスを感じるようになります。

「同級生で、スポーツカーに乗っていた男子がいて。“乗ってみたい”って言ったら、乗せてもらえたんですよ。その友人から、高級車に乗っている人たちが集まるPAがあるって教えてもらって、その集会に連れて行ってもらうようになりました

高級スポーツカーのオーナーの集会に顔を出すようになり、交流が広がります。

「そこで知り合った相手と、付き合うようになったんです。年齢は38歳で年上だったんですが、クルマもレクサスだったのが、チャラくなくていいなって。価値観とかもすごく合うし、結婚してもいいかなって思っていたんですが、相手が既婚者だったんですよ」

彼女がショールームの仕事が続いたのには、理由がありました。

「ショールームの仕事は、固定休が水曜と日曜だったので、その時付き合っていた人と水曜日の夜に会っていたんです。今、思えば相手は奥さんには“仕事で遅くなる”って言っていたんでしょうね」

職場自体に不満はなかったけれど、ある日、予想外の出来事が起きます。

「ショールームは2年半勤めていたんですけど、徐々に売上数が減ってきていて。事務を派遣に切り替えるって話になったんです」

結局、不倫相手との結婚を希望していたのもあり、職場からの早期退職に応じます。

「不倫相手の家に、子供がいなかったんです。“いつか結婚しよう”って言葉を信じていたので、表向きには“付き合っている人がいるので、結婚に向けて準備するため”と言って円満退社しました」

車内の清潔さ、運転時の口癖や、運転のうまさから、助手席に乗るだけで、男性の性格がわかると言います。

派遣社員という身分を隠し、友人の紹介やマッチングアプリなどで婚活。年収1500万以上の男性を希望。その2に続きます。