再交渉開始を伝える「Sin Embargo」紙

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 致命的な失言でもはや崩壊寸前のトランプ政権が、かねてから要求していた北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し。ついに、再交渉の初会合が8月16日から20日までワシントンで行われた。9月初めにメキシコで交渉が再開され、同月末にカナダでの交渉が予定されている。スケジュールを見る限り、かなり急ぎの交渉になっている。これは、人気回復をしたいトランプ大統領サイドだけでなく、来年7月に大統領選挙を控えているメキシコの思惑もある。

 再交渉にあたり、NAFTA否定論者のトランプが8月22日のアリゾナ州フェニックス市での演説で、これは最悪の協定だったという意見を繰りかえすかのように、「NAFTAは多分、いつか廃止にすることになろう」と述べた。そして、そこから話を飛躍させてメキシコとの国境に壁を建設することの必要性を相も変わらず主張した。(参照:「Hispan Tv」)

 いつものことながら、NAFTAのお陰で米国の特に5つの州(テキサス、カリフォルニア、ミシガン、アリゾナ、イリノイ)の経済が成り立ち、500万人の雇用を創出していることをトランプは忘れているようである。

 ニューヨーク・タイムズ国際部チーフのロジャー・コーエンがトランプのことを<「無知が権力に就かせた」>と評価しているが、トランプには特にメキシコとの貿易赤字の解消と、喪失した70万人の雇用の回復と、更にメキシコに米国企業が進出しないようにさせることにしか関心がないようである。(参照:「El Mundo」)

 その背景には、米国、カナダ、メキシコの間で合意し、1994年から施行されたNAFTAの初年度は対メキシコ、米国は13億ドル(1430億円)の黒字であった。それが次第に減少し、2016年は640億ドル(7兆400億円)の赤字に転落しているということがある。トランプはその赤字転落の要因をすべてメキシコのせいにしているのである。(参照:「Sin Embargo」)

◆再交渉における米墨の狙い

 NAFTAの再交渉には、メキシコ側は代表にグアハルド経済相が就き、直接の交渉代表に元米国大使ケネス・スミス、彼の側近に対北米貿易部長のサルバドル・ベハルが同行し、スーパーバイザーとして経済省貿易次官のフアン・カルロス・バケルが就任している。更に、異なった政党から上院議員8人と企業連合から23人が代表として交渉内容を随時検討して行く体制になっている。

 メキシコはこれまで<世界46か国と貿易協定>を結んでおり、貿易交渉については充分に経験を積んでいるとしている。勿論、その中でもNAFTAは最も重要な交渉であるとメキシコ側も認めている。(参照:「Sin Embargo」)

 今回の交渉における焦点は、メキシコから米国に無関税で輸出される自動車とその部品、アボガドや牛肉などの輸出、一方、米国からトウモロコシや乳製品などのメキシコへの輸出について、米国はどのような条件を提示して貿易赤字を縮小させて行くのかということである。一方のメキシコは、現状の協定内容をできるだけ維持する方向で交渉を展開させて行きたいとしている。その為には、例えば、メキシコの主食になっているトウモロコシと大豆は交渉次第では輸入先を米国からブラジルやアルゼンチンに移す構えも見せている。なにしろ、アイオワ州のトウモロコシの全生産量の75%はメキシコ向けなのである。(参照:「Sin Embargo」)

◆アメリカ、カナダがメキシコの労賃改善を要求

 ところが、米国が最初の交渉台で取り上げたのはメキシコの労賃の改善であった。メキシコの労賃が余りにも安く、トランプの狙いである米国の企業がメキシコへの進出を阻むことが出来ないということなのである。

 カナダの主要労働組合の一つUniforも<「メキシコとの問題は交渉代表がメキシコの給与の見直しをする用意がないということなのである」「彼らの給与は余りにも低く、我々は競争できない」>と同代表のジェリー・ディアスは述べている。(参照:「Sin Embargo」)