W杯アジア最終予選に臨む日本代表メンバーに招集された小林祐希【写真:Getty Images】

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究極の多機能プレーヤー誕生?

 24日にロシアW杯アジア最終予選に臨む日本代表メンバーが発表され、小林祐希は2016年11月以来となる代表復帰を果たした。オランダ移籍後2年目のシーズンを迎え、今季はまた新たなことに挑戦している。中盤でどんなプレーを見せるか、攻撃でも守備でも考え方はこれまでから大きく変わった。来年のW杯本大会を見据え、常に自らをアップデートし続けている。(取材・文:中田徹【ヘーレンフェーン】)

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 小林祐希は、ヘーレンフェーンで主に“8番”というポジションを任され、プレーの幅を大きく広げている。3人のMFのうち、“10番”は攻撃的MF、“6番”がアンカー、ボランチとするならば、“8番”は“コネクティング・ミッドフィルダー”とオランダで呼ばれているポジションだ。攻撃も守備も全てやる――それが“8番”の醍醐味である。

 ただし、小林に対するチームからのオーダーは「あまり上がらないでくれ」というもの。だから、“8番”と言っても、本人はかなりボランチ寄りの意識でプレーしている。

 オランダで2シーズン目を迎える小林は、自身のタスクについて「俺の仕事の第一は今、ヘーレンフェーンにいる選手たちの能力を引き出して、チームがどれだけ勝てるかということ」と理解している。ただし、得意としていたポジションは“10番”なので、その能力を今年はもっと活かしたいという強い意思もある。

「昨季は(ボランチとして)味方のために、チームのために――ということで自分を抑える方がすごく多かった。今年はそのバランスを時に崩していくのがテーマ。チャンスがあればゴールを狙っていく」

 1つの試合の中で、守り、つなぎ、チャンスを作り、ゴールに絡む、そんな究極の多機能プレーヤーがオランダで生まれつつあるのかもしれない。私は頭の中でボランチ50%、つなぎ25%、ゴール前でのアクションが25%という数字を弾き、小林に意見を聞いてみた。

「いや、俺がより“マルチ(多機能)”でやるんだったら、まずパーセンテージで分けちゃダメだと思う。全部でボランチだから」

 なるほど正論だ。それでも、日本代表に必要とされる選手になるために克服すべき課題を抽出すると、激しい守備に“50%”という数字が本人の口から出てくる。

「パーセンテージで分けるとしたら、W杯まで見据えると“イエローカード覚悟のディフェンス”が5割以上を占めるかもしれない。すごく極端な言い方だけど、今季は出場停止が1回、2回あってもいいかなという風にしていきたい。

 激しくファイトしてとか、相手のカウンターを阻止してとか、チームが助かるイエローカードだったら何枚かもらってもいいかなと思う。それで『激しい選手』と思われるんだったら、(出場停止で)1試合捨てても、俺の評価が上がる。そのことを、最近のハリルホジッチ監督の伝言ですごく感じる」

こぼれ球の処理は「技術」。守備意識の明らかな変化

 その伝言とは、1試合でボールを10回奪取すること。

「カゼミーロ(レアル・マドリー)、カンテ(チェルシー)でも7、8回だよ。オランダで10回できても、ブラジルとやったら3回も獲れないかもしれない。試合の中で足ごと、体ごと、ガツっといくような練習もしてみたらいいのかな。アグレッシブに見せるなら、スライディングなのかなと思うんですよ」

 プレッシングサッカー全盛の現代、中盤でもスライディングタックルを仕掛ける選手が増えたが、中盤では先ずはスタンディングタックルでボールを奪うという考えもある。

「そうね。そこは状況に応じて。俺はボールを獲って、その次に攻撃に繋がらなかったらディフェンスとは思ってなかった。だけど、ガツってファウルで止めるディフェンスも視野に入れないといけないのかなと思っている。

 あとは五分でガチャガチャってなったボールを、自分のところにこぼれるようにしたい。そこは、俺は“気持ち”だと思っていたけれど、“当て方”でこぼれ先が変わるから“技術”だった。世界的に見たらガツってディフェンスできる中盤の選手は必要だし、自分のように、ボールを繋げる選手ができたらなおいいからね。ボランチ像になっちゃうけれど、しょうがない」

 攻撃の部分ではどうだろう。指揮官からは「真ん中に残って欲しい」というオーダーを受けている。しかし、開幕カードの対フローニンゲン戦では小林が左サイドに張ってフリーになり、そこの組み立てからチームの先制ゴールが生まれた。結局、そのシーンは「フローニンゲン戦のグッドポイント」として分析されたという。結果にさえつながれば、誰も何も言えなくなるどころか、手放しで賞賛してもらえる。

「だから、まだ焦ってはないんだけど、一発決めておきたいんだよね。先ずはしっかり相手を走らせる、味方を動かすというところをやりつつの、スペースが空いたらズドーンというのをイメージしてます」

「自分の特徴を全部見せたい」「全てをアクションでやりたい」

 プレシーズンマッチからオランダリーグ開幕2節まで見ていて感じるのは、今のヘーレンフェーンは昨季後半戦の不振をすっかり払拭し、チームがフレッシュになったこと。小林は「チームに自覚が出てきたんです」と説明した。

「昨季はサム(・ラーション、現フェイエノールト※)にパスを出しておけば何かが起きるという感じだった。それが、『サムがいなくなって攻撃をどうするのか』となって、俺も含めて『みんなでパスを出して繋いでいこうぜ』となった。

 俺もワンタッチ、ツータッチでテンポよくプレーすると賢くは見えるんだけど、淡白にも見えるから、中盤で何かを起こさないといけない。あえてボールを持って運んだり、4タッチ、5タッチぐらいしてからパスを出して、俺がボールを握ってるんだという感じを見せないと。推進力があって、前へのスルーパスもあり、ロングボールを蹴れるとか、移籍を見据えたら自分の特徴を全部見せたい」

(※筆者注:サム・ラーションのフェイエノールト移籍は8月21日だが、退団を見越してヘーレンフェーンではプレシーズンマッチから出場していなかった)

 結局、小林のボランチ論は「全部100でやらないといけない」というパーセンテージに戻ってきた。

「全てをアクションでやりたいんです。だって自分から動いてやったほうが楽だもの。そうしたら自分の好きな時に止まれて、自分の好きな時に休めるじゃん。全部、自分でアクションを起こして動いて『へいへい、ボール寄越して』『はい、お前、こっち動いて』『あっち動いて』というのを今、ずっとやっているから。それが楽ですよ。この前のフローニンゲン戦も11.5km走ったけれど、動かしちゃっていたので全然キツくなかった」

 守備も、つなぎも、攻撃も、全て自らアクションを起こせば、自分のペースとリズムでプレーを運べる。互角の力を持つフローニンゲンにはそれができた。 「自分たちより上のクラブとやる時に、それができるかどうか楽しみですね」と小林は言った。

(取材・文:中田徹【ヘーレンフェーン】)

text by 中田徹