今回は、東京大学と米ハーバード大学を除き、世界でほかのどこもまだほとんど言っていない暗号通貨などの新しい見方についてお話してみましょう。

 国連は2015年「アジェンダ2030持続可能な開発のための17のゴールSDGs」というものを設定しています。

 すでにこのコラムでも何度か触れたように、2015年の秋に国連総会を通過、翌2016年1月1日から発効したはずでした。

 ところが、早々に天災・人災惨憺たる事件が続き、世界を持続的・協和的に開発していこうと旗印を掲げたとたん、英国はEU離脱、米国ではとんでもない政権が成立などと、ろくなことになっていません。

 それでも、いや、そんな状況だからこそSDGsは非常に重要な位置づけを持ち、外務省も国内周知に躍起になっています。さて、どれくらい注目されているでしょうか?

 例えば芸人「ピコ太郎」を投入してのユーチューブ動画https://www.youtube.com/watch?v=H5l9RHeATl0やら、国連本部でのパフォーマンスやらで、それなりに懸命にSDGsならびにそれへの日本の取り組みをアピールしたいらしいですが、はっきり言って意味も内容も本質も何もありません。

 「いったいこれは何か?」「日本はどうしてしまったのか?」

 欧州の友人識者から真顔で尋ねられてしまいました。ちなみに先ほどの動画は11万アクセスほどカウントされていましたが、いったいこの中身のないキャンペーンに国はいくら使ったのか、一国民納税者として収支を知りたく思いました。

 ユーチューブのアクセスとしてはそれなりに見えてしまうかもしれませんが、1.27億人の日本の人口から見れば0.1%にも届かず、純然と「無効果」と断じる方が早い。

 あまりにも中身のない芸以前に、芸そのものが寒いのが、元々テレビ番組を作っていた一個人としての率直なところです。

 芸人魂があるんだったら、役所の言うがままの薄っぺらで情けない検閲替え歌の歌詞なんかで出てくることはなかろうに・・・と大きくため息をつかざるを得ません。ドイツの友人には

 「日本の選挙がどういう水準の入れ札まで堕ちたかがよく分かる末期症状例」

 と答えておきました。実際、政策と何の関係もないPRで、かつ代理店その他だけ多額のマージンを抜いている可能性があり、一音楽家として最低最悪と思いました。

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羅列から経済プラットホーム展開へ

 実際、まじめにSDGsに関係する海外の友人の多くは「理解不能」との寒いリアクションしかなく、そこで、この無内容キャンペーンにかかったと想像される最低限の金額を口にすると、目を剥かれ、本当なら怒りを感じる、という人もありました。

 SDGs(持続可能な開発のための目標群)は

貧困撲滅
飢餓対策
伝染病対策
万人への教育普及
暴力紛争回避

 など、真剣でシリアスな目標が17もならび、一つひとつ真剣なプロが長年取り組んできた重いテーマばかりです。

 ただ、それらを貫く軸がない。少なくとも見えない、羅列的で焦点が絞れないなどと言われやすいのが、現状の課題となっています。

 日本が今回行ったキャンペーンは、これらの1つの目標ともまじめに切り合うところがありません。

 「ビューが立つ」こと自体を、あたかも衆愚選挙の入れ札と勘違いして喜ぶ傾向がありますが、私が直接確認した限り、国籍を問わずサステナビリティにまじめに取り組む人で、このキャンペーンを良いと言った人は1人もいませんでした。

 はっきり言えば、関係者からは呆れられ、その無見識ぶりで日本の足元を見透かされてしまったレベルと思います。私自身、日本人として極めて恥ずかしい。

 「こんな無内容の宣伝広告費があったら、黙って伝染病撲滅に献金でもした方がよほどまし」

 とは、とある医療関係者の冷静な一言でした。

ビットコインが世界を救う」ではない・・・

 そこで、汚名挽回というわけでもありませんが、日本発の国際的なSDGsへのイニシアティブをご紹介しましょう。

 分かりやすく言えばビットコイン〜暗号通貨、より一般的には電子情報経済を1本の強靭な柱、縦軸として、SDGs全体を整合性をもって推進するSDGxという考え方です。

 ビットコインなどの暗号通貨が、超地域通貨として暴力紛争・戦争の予防に「役立てることができる」可能性、「超マンデル通貨とディマンドサイド経済・金融」については、すでにこのコラムでも触れました。

 重要な点は

 「ビットコインさえ使っていれば、勝手にコインが世界を救ってくれる」

 わけではない、ということです。同じコインを用いて、詐欺も働ければ手の込んだ泥棒もできる。

 そうではなく、従来の通貨には決してなかった、新しいデジタル電子経済の属性によって、SDGsに示された、様々な目標を実現する、具体的な政策を検討できること、バカとハサミは使いようであることをこそ強調しなければなりません。

 紛争の回避、平和の維持と復興支援は SDGsの中でもとりわけ重要なポイントです。そこで、どうして電子経済が、従来にはなかった形で「復興支援」などに役立つのかを考えてみましょう。

 爆撃されて灰燼に帰した町、あるいは天災に襲われてライフラインが寸断された被災地でも、基本は同じことですが、多くのインフラが壊滅的なダメージを受けています。物流も絶え、けが人や病人にも必要な手当てが行き渡らない・・・。

 そんな中、携帯電話とミニマムの電力源、それにアンテナ設備などさえ確保されていたなら、私たちは被害の及んでいない地域と交信し、必要な助けを求めることができます。

 1995年の阪神淡路大震災はインターネットが普及する以前に発生しましたが、2011年の東日本大震災では、携帯電話やワンセグ、SNSが十分に社会に行き渡り、初期の救助から復興まで、様々な違いがありました。

 私自身も物理学生時代、放射線源や管理区域に慣れていたので、ツイッターで直接被災地向けに、少なくともこうしておけばリスクは低められる、という保険物理の常識をお送りするようにし、いくらかは福島被災地で役立てていただくことができました。

 同じことを2018年の中東や北アフリカ、あるいは東アジアの紛争地域で考えて見ましょう。

 爆撃を受けた、家族がどこにいるのか分からない・・・大変な状態です。以前ならさらに、どこに誰がいるか、全く分からない絶望のもと、何日も何年も安否が不明ということが決して珍しくなかった。

 戦争なんてない方が良いに決まっています。でも、そういう惨禍の中にある人が、携帯やスマートホンで連絡を取り合い、復興の第一歩として家族が合流するのを助けている。

 さらに、被災地には従来「お金」がありませんでした。日本の戦後も焼け跡・闇市では物々交換が普通だった。原始経済に逆戻り、相手のいい値でどのようにでもなってしまうケースも多かったでしょう。

 しかし、ローカルな貨幣や経済システムが崩壊しても、グローバルにネットワークされたデジタル通貨が生き残っていれば、それを用いて、少なくともそれがないよりは、比較にならないほど速やかな復興が可能になる。

 従来の「モノの通貨」は、現物が手に入らなければ使うこともできませんでした。でも、システムさえ健全であれば、ミニマムのインフラで、それこそアフリカのジャングルのど真ん中でも安定した文明圏の通貨を使って、フェアに交易することができます。

 実際、私はルワンダ・コンゴ国境のキヴ湖畔のジャングルで野生のゴリラの巣から携帯電話通信したことがあります。

 また、P2Pで送り手から受け手にダイレクトでお金をやり取りできますから、無駄な途中のマージンが取られません。

 最貧国の第1次生産者、例えばアフリカ寒村の農業生産者でも、中東復興地域の手工業生産者でも、仲買に理不尽に買い叩かれて、いつまで経っても貧困状態を抜け出せないというようなことも軽減し得る

 ここがポイントです。仮にスマートホンを使い仮想通貨を用いても、貧困を温存し搾取を継続すること「だって」可能なのです。

 そうではない、ここでは分配の公正をより徹底して、例えば、経済学者のアマルティア・センさんが解明した「ベンガル大飢饉」の人災性・・・本当は地域に食料はあった、でも買い占められていたために、多くの人が餓死してしまった・・・つまり「配分の不公正」を強力に是正する圧力とすることもできる。

 あくまで可能性の問題です。でも、19〜20世紀、いやほんの30年前だって、想像すらできなかったデジタル社会、デジタル経済の可能性が、いま大きく開かれつつあります。

 電子通貨はさらに、人ではなく「モノ」であれば、紐づけることが様々に可能です。そういう未曾有、未踏のシステムを使って、より良い、より公平で誰もが窮状に追い込まれることのない、活気のある社会を実現する知恵を創り出すこと。

 受身で待ってるだけではなく、そういう積極的な可能性に、暗号通貨も、ブロックチェーンも、大きく扉を開いています。

 SDGsのあらゆる達成目標が、電子通貨やデジタル経済、それらを乗せるイノベーション・プラットホームと緊密に関係づけることが可能であること。

 一過性の芸など発信しても、誰も何も救われません。実体のある貢献によって日本は持続可能なグローバル社会経済の発展に寄与するべきだと、強く思います。

筆者:伊東 乾