先日、世界四大医学誌のひとつ「ランセット」に認知症の発症と関連する10リスク因子が発表された。

 同誌の「認知症予防・介入・ケア委員会」によると、10因子のうち、遺伝的要因を除く9因子は「修正が可能」であり、すべて改善できれば「認知症の発症リスクを35%低下させる可能性がある」という。

 まず18歳未満の「小児期」に改善すべき認知症リスクとして、(1)教育歴があげられた。

 15歳未満で教育歴が途絶えてしまうと、認知機能の予備能が低下し認知症の発症リスクが上昇するようだ。単なる学歴ではなく、若いうちに脳をフル回転させることが重要という意味が強い。

 45〜65歳の「中年期」は、おなじみの(2)高血圧、(3)肥満に加えて、(4)難聴があげられている。

 (4)難聴については、軽症でも長い間に認知症リスクが上昇すると常々指摘されていた。耳からの情報が減少し、認知機能が低下すると考えられる。今回あがった9因子のうちで最も影響が大きい。

 改善策として補聴器の装着などが考えられるが「年寄りくさい」と敬遠されがち。デザインの全面的な見直しを業界にお願いしたいところだ。

 65歳以上では(5)喫煙、(6)抑うつ、(7)運動不足、(8)社会的孤立、(9)糖尿病が大きく影響してくる。

 (5)喫煙と(7)運動不足については個人の自覚と努力が必要だ。(6)抑うつ、(8)社会的孤立に関しては、特に定年退職後の男性が陥りやすい。中年のうちに「職域」以外の領域で「社会的なつながり」をつくっておくといい。

 (9)糖尿病は、血糖値をキチンと管理することで、多少なりとも認知症リスクを減らすことができる。また、今回の報告では食事への言及がなかったが、リスク因子に高血圧や肥満が含まれていることを考慮すると「健康的な食事」が望ましいことは確実だろう。

 認知症の症状が表に出るのは、おおむね65歳以降だ。しかし「タネ」ははるか以前に播かれている。発症の芽は、若いうちから日々の積み重ねのなかで、丹念に摘み取るしかないようだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)