“ネクスト・ムバッペ”を探せ 特別編「ダニ・セバージョス」

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ともに18歳で1億ユーロ超えの値札がついているムバッペやドンナルンマの成功は、U-20の価値を再認識させた。今日のサッカー界で最も資産価値が高い選手は「トップレベルの経験を積んでいる10代」だ。若ければ若いほど大きなお金が動く。早期のトップチームデビューのトレンドは今後ますます加速していくはずだ。ここでは“ネクスト・ムバッペ”となり得るU-20の有望株をリーグごとに紹介。未来のスターを、いち早くチェックしよう。

文 木村浩嗣

「空気が読めない」天才児から“アグレッシブで気負いもあるシャビ”へと羽化

Dani CEBALLOS
ダニ・セバージョス
1996.8.7(21歳)176cm/65kg SPAIN
ベティス→レアル・マドリー

 先月のU-21欧州選手権で、セバージョスは2歳以上年上の選手に交じり大活躍。16-17シーズン後半から維持している上り調子が、クオリティの高い選手に囲まれた国際舞台でさらに加速した感じだ。1500万ユーロ(約19億円)の安過ぎる違約金を払って買いたい、というビッグクラブはいくらでも出てくるだろう。

 14年4月のトップデビュー以来、私はダメなセバージョスをさんざん見てきた。天才によくありがちな独りよがりのプレー、例えば味方が察知できないような、察知しても足が出ないような鋭過ぎるスルーパスを出してボールロストするようなプレーをよくしていた。あるいはボールキープしてリードを守り切りたい場面で、ファンタスティックなヒールキックでパスを出そうとして、それを奪われてカウンターを食らってしまうような。

 一言で言えば、「空気(=味方の能力や周りの状況)が読めない」選手だった。チームとは無関係に自分のプレーさえできればいい、と考えているかのような。空気の読めないプレーの後でも本人はご満悦で、まるで周りが悪いかのような態度を見せていたからファンの反感を買い、チームメイトも呆れていたのではないか、と想像する。

 天才児は文字通り子供だったのだ。髭面で老け顔だがまだ21歳。童顔のアセンシオよりも半年年下である。相手の挑発や怪しいジャッジにはすぐにカッとなってイエローカードをもらう。そんな彼を下部組織時代の恩師ファン・メリーノや父親役だったペペ・メルさえも持て余し、昨季はグスタボ・ポジェ監督の下、初先発が開幕から7戦目と最悪のスタートだった。

 後任のビクトル・サンチェスになって出番が増えていったが、これは監督のおかげではなく本人が変身したから。心理カウンセラーの助けがあったのかはわからないが、セバージョスは劇的に変わった。

 チームはシーズン最後の2カ月を目標のないまま漂流したが、彼だけは違っていた。尊大な態度はすっかり影を潜め、チームのためにひたすら汗を流す選手になった。気性は激しいままだがセルフコントロールを覚え、諦めない闘志へとうまく昇華させられるようになった。どんなに情けない試合でも彼だけは意地を見せて毎試合チームMVPであり続けた。

 プレーゾーンはトップ下からボランチまで中盤ならオールマイティに使える。視野を広く取れるセンターの方が持ち味が生きると思うが、サイドも苦にしない。タイプとしてはバイエルンのチアゴ・アルカンタラに似ているが、運動量はセバージョスの方があり“アグレッシブで気負いもあるチャビ”という感じ。どこでもできる選手なのだが、トップ下とかサイドとかボランチとかと役割を限定してしまうと、うまくまとまってそこそこで終わってしまう。彼のとてつもない潜在能力を開花させるにはあえて役割を不明瞭にし、ダブルボランチに背中をカバーさせて“自由にどこででもボールに触って良し”と指示すれば、後方でのボール出しのサポート役からラストパスの出し手まで何でもしてくれそう。今の彼はベティスの「大黒柱」ではなく、欧州カップ戦に参戦する中堅クラブの「若大将」的なスタンスでプレーさせてみたい(編注:7月14日にレアル・マドリーへの移籍が決定)。

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8月22日(火)公開: 屮廛譽潺▲蝓璽以圈
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8月25日(金)公開:ぁ屮屮鵐妊好蝓璽編」

Photos: Getty Images