日本の少子高齢化は「危機」ではなく「チャンス」 / 出井伸之

写真拡大

人生は岐路の連続。最良の選択でチャンスを呼び込むためには、自身と深く対話し、自分の中の価値観をつくり変革していくことが重要である。この連載は、岐路に立つ人々に出井伸之が送る人生のナビゲーション。アルファベット順にキーワードを掲げ、出井流のHOW TOを伝授する。

まずは、A=Aging Societyから(以下、出井伸之氏談)。

長寿国、日本。少子高齢化が進み、人口の減少に歯止めがかからない。これは日本にとって、経済的、または社会保障的観点からも危機であるといえる。しかし、だからこそ、この危機をチャンスに変えることができるのではないか。

現在の日本の総人口は約1億2700万人。2060年には、8000万人台に突入すると言われている(平成24年版高齢社会白書より)。しかし、世界の国々の人口を思い出してほしい。ドイツは現在約8300万人、フランスは約6700万人だ。つまり、日本の人口が減ったとしても世界的に見れば中規模の国家であることに変わりはないのである。

高齢化が進み深刻な問題になっていく中で、日本の社会での対応はまだまだ追いついていないのが現状だ。誰もが安心して高齢化していく社会的システムを根本から整える必要があると考える。ピンチに向き合い、チャンスに変えていくことが大切である。

今後、1994年のインターネット登場と同レベルの大きな変化が予測される中、日本は技術の革新期を迎えている。東京オリンピック開催の2020年頃、現在水面下で進められている技術開発が表に現れる。それら革新的な技術や通信の発達、そして日本人が得意とするモノづくりを組み合わせ、日本ならではの社会的システムを創りだすことに国も企業も注力すべき時期がきている。

エイジングソサエティ、そして、これから起こる技術革新、この組み合わせは、新しいビジネスを生み出し日本が大きく変革するチャンスなのである。

日本をウェルフェアな国に変える3つの提案

高齢化社会でウェルフェアな国づくりを推進するには、いくつか取り組むべきことがある。

1つ目は、定年制度の見直しだ。定年を過ぎても実績と知識を兼ね備えた人材は大勢いる。そして、そういう人は、海外の新進企業に引き抜かれているのだ。日本は戦後、終身雇用・年功序列・労働組合を3本柱に進めてきたが、変えていかなくてはならない。重要なのは個々の能力であり、年齢で一律に区切ってしまうべきではない。

また、今年のワールドエコノミックフォーラムで各国から報告のあった、ベーシックインカムの導入を国が検討するのも一つの道だ。年齢や性別などに関わりなく一律で現金が給付されるシステムだが、生活保護とは違い”働く”ことができる。一定額が保障されるため安心して生活でき、人々は生きること、働くことの意義を改めて考えるようになる。世界では、そんな10年前には考えられなかった制度が当たり前になりつつあるのである。

最後に、教育の見直しも呼び掛けたい。インターネットの普及により、今はなんでも検索すればすぐにわかる時代だ。暗記や知識の詰め込みとは全く異なるジャンルの、人間らしい生き方の教育を推進すべきである。そのためには、学校制度を変え、大規模化した大学や入試制度も見直さなければならない。フランスのようにクリエイティビティのある教育方針を定め改革していけば、日本の社会も大きく変わっていくと考える。

「廃県置藩」で地方創生を活性化する

これからは、経済成長をうながすGDPの数値向上を目指す時代ではない。目標の達成度や成果を評価するKPIを重視する時代だ。

それゆえ今後の日本に適しているのは、中央集権国家ではなく地方集権国家ではないかと考えている。いっそ、明治維新で導入された「廃藩置県」の逆、「廃県置藩」に踏み切るべきなのかもしれない。小さな集団に所属する人々が助け合う。もともと日本人はそういう生き方が得意だと思う。

今から9年も前に出版された『100年予測』(早川書房)で、著者ジョージ・フリードマンは「メキシコがアメリカに戦争を仕掛けるだろう」「日本はポーランドやトルコとの同盟を強化するだろう」と言っていた。未来が見えない時代であるがゆえ、こういったことも起こる可能性はあるだろう。

世界情勢が不透明で、日本が転換期にある今だからこそ、社会のシステムを見直し新しいビジネスを生み出すことで、日本は変革できるかもしれないと、私は考える。

これからの100年、世界は大きく変わる。日本がどのようなビジョンを描くのか、その革新は、危機をチャンスととらえることから始まる。

次回、「B」に続く。