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いよいよ日本国内でも2017年8月25日に公開となるアメリカン・コミック実写映画『ワンダーウーマン』。米国の心理学者ウィリアム・マーストン(1893〜1947)によって1941年に誕生した同作は、いまや女性ヒーローの代名詞ともいえる。

その背景には、彼を裏で支え続けた2人の女性が存在した。9月のトロント国際映画祭を皮切りに上映が始まる伝記映画『Professor Marston & the Wonder Women』では、マーストン博士と妻と博士の愛人の「三人婚」で知られるその半生が綴られる。

マーストン博士といえば、人類の歴史に残したもうひとつの発明がある。古の時代から誰もが妄想した魔法の技術「嘘発見器」である。

きっかけは妻のアイデア

人間はおよそ2歳から3歳の年齢で嘘をつくことを覚え、成人が虚言を発する頻度は平均で10分間に2.92回にも上ると、近年の心理学研究で報告されている。ピノキオの鼻が嘘をつくと伸び、ワンダーウーマンの武器「真実の投げ縄」にも捕らえた者に真実を告白させる能力が備わっているように、人々はいつの世も真実を見通す力に憧れてきた。

その歴史は古く、すでに2,000年前の古代インドでは、対象に米粒を咀嚼させた後で飲み込まずに吐き出せるかどうかで、嘘を見抜こうという方法が用いられていた。その後、近代科学の発展と共に初めて登場した機械による嘘発見器が、1913年にマーストン博士が妻エリザベス(彼女も心理学者であり、弁護士でもあった)のアイデアをきっかけに発表した「収縮期血圧検査」だった。

当時の技術は、単に被験者が質問に答える際の血圧を測定し、罪悪感による変化を観察するという至極シンプルなもの。著しく信頼性に欠けることはいうまでもない。

現在のポリグラフにより近い形へ進化したのは、1921年。科学捜査を専門としていた警察官ジョン・ラーソンの貢献によって改良された。それまでのように断片的な血圧データを収集するのではなく、被験者が質問に答えている間の連続したデータを集めることで、地震計の仕組みと同様に数値の揺れを計測する手法に変化した。ちなみに「嘘発見器(lie detectors)」という名称は、マーストン博士やラーソン捜査官が考案したのではなく、当時の技術革新を大衆向けに解釈した報道機関だといわれている。

嘘発見器は真実を語るのか?

そんな技術的な発展の一方で、1世紀が経過した現在でもポリグラフは法的な判断材料としては認められていない。マーストン博士による最初の嘘発見器が発表された1913年は、第一次世界大戦の前年。大戦中もマーストン博士が敵国のスパイを尋問する際に利用し、法廷に正式な証拠として提出することで法的な権利の確立を試みるも、科学的な信憑性に欠けるとして却下されている。

現代の嘘発見器は「ポリグラフ(polygraph)」という名が示すとおり、血圧のほかに呼吸回数や心拍、発汗量といった複数のデータを同時に測定することで信頼性を増しているが、最高裁の判決を覆すほどには至っていない。

『Professor Marston & the Wonder Women』の日本公開は未定。本作の監督アンジェラ・ロビンソンは、セクシャルマイノリティのキャラクターたちを描き人気を博したTVシリーズ「Lの世界」(2004〜09年)で脚本を務めていた。

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