マセラティがトヨタ車になっていたかも? 車業界のM&A事情

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動物好きの私には対馬でカワウソが発見されたのは大きな驚きだったが、自動車系ジャーナリストの立場で言うと、日産・ルノー連合が上半期の世界販売台数でNo.1になったというニュースには驚いた。

日本ではe-POWERノートが大ヒットしているが、世界No.1になるほど元気とは思われない日産だが、中国、アメリカでは好調、ルノーも東欧で好調で、この結果に。

もっとも混乱に乗じて奪い取った三菱自動車をグループに引き込んだことが最大の要因だった。さすがです、ゴーンさん。三菱自動車は派遣されてきた日産経営陣の手で激しく日産化されているということだ。三菱の友人も日産的組織名に戸惑ってたな。本社も移転するようだし。

というわけで考えるのはM&A(Mergers & Acquisition)のこと。企業買収だ。提携の話もね。

古くはSONY、今のソフトバンクの積極ぶりは凄いが、日本の企業には不得意な分野だ。特に自動車業界は下手というか品がいい。トヨタはスバルやいすゞとのゆるやかな資本関係。スズキとも業務提携を検討。最近では相方が株を持ち合うという大人の協力関係をマツダと結んで驚かせた。手荒なことはしない。日本自動車業界の白馬の騎士だ。

「君臨して統治する」がフランスやドイツ型か。ルノーと日産の関係がまさにそれ。

「君臨するも統治せず」はアメリカや中国のスタイルか。中国・吉利汽車にM&Aされたボルボはボルボらしさを失わず好調だ。かつてアメリカのGMの系列だったスズキだが、GMから派遣されていた役員はたった一人だけで、ルノーとは好対象。スズキとフォルクスワーゲン(VW)の提携が破断となったが、VWはスズキを子会社化したというスタンス。GMとの提携時代を経験した鈴木修会長が怒るのも当然。

日本の自動車メーカー主導で海外メーカーをM&Aしたのはわずか。ホンダがイギリスのローバー社の株20%を取得して欧州戦略に乗り出したが、失敗。

三菱もオランダのメーカー、ネッドカーを完全買収したが、結局1ユーロ(90円)で売却することに。日産もスペインのモトールイベリカを買収。SUV(ミストラル)を開発して日本でも販売したが失敗。現在は商用車生産で健全な会社となっているが、経営立て直しはルノーの力が大きい。

…と見てくると、そこにトヨタの名が無いことに気が付く。海外で他メーカーのような大きな動きもないし、失敗もしていない。

1980年頃、名門ロータス社がセリカXXの開発に協力、伝説のコーリン・チャップマン社長がCMに登場して、すわ提携と思ったが、チャップマンの死去でそれ以上の進展なし(ロータス社にエンジンは供給してきたが)。

続いて1990年代後半、ロールスロイス売却の話が出た際には、トヨタがロールスを買収したら、景気低迷で元気がなくなった日本人に勇気を与えるのに……と期待したが、結局ドイツ帝国のVWとBMWがブランドを分け合った。

さらにアストンマーチン。「これは魅力的! 買い得では?」と思ったもんだが、8億ドルの安値で元WRCコドライバーのデイヴィッド・リチャーズの手に。

これらの会社の買収をトヨタが本当に検討したかはわからないが、トヨタほどの会社、買収や提携の話はいっぱいあったことだろう。事実、過去VWやGMとの提携もあったが、適当なところで手を切っている。今や超有名企業、テスラとも2010年に55億円を出資して提携、工場も破格の値段で譲ったが、昨年12月に全株式を売却して関係を解消している。

北米の欠陥車問題でトヨタバッシングが厳しい時代でのテスラ社への援助。トヨタのアメリカでのイメージ回復に役立った提携だったが、当時トヨタの役員は「技術的にテスラから得るものはないが…」と語っていたことを覚えている。意見の対立か、トヨタが新開発した画期的な全個体電池への自信によるものか?