またひとり、日本人選手の挑戦がドイツで始まった。8月上旬に浦和レッズからドイツ2部インゴルシュタットに移籍した関根貴大(たかひろ)が、第3節ヤーン・レーゲンスブルク戦で61分から途中出場した。


レーゲンスブルク戦で早々とドイツデビューを果たした関根貴大(インゴルシュタット)

 チームは関根の投入後に3点を奪われ、2-4の逆転負けで開幕3連敗。自身もクリアミスからチームの3失点目に絡み、ほろ苦いデビュー戦となってしまった。

「もっとやらなきゃいけないというのは感じました。雰囲気だったり、相手の勢いだったり、サッカーだったり、全部が日本と違うので、それに慣れてきたらやれるのは当然ですけど、こういう厳しい、来てすぐの中で結果を残したかったです」

 試合後、背番号22番はそう言って悔しさを滲ませた。

 3-4-3の右MFとして入った関根に与えられた指示は、攻撃ではサイドに基点を作って幅を出すこと、守備では後ろに戻るのか、前にプレッシャーをかけにいくのかを的確に判断することだった。ただ、インゴルシュタットは関根が投入される前からカウンターによる攻撃を簡単に許してしまっており、関根も守備に追われる時間が多くなった。

 加入から10日足らず。実戦で初めて体験するドイツ2部のサッカーだった。1部に比べて2部では、戦術や技術よりも、1対1や激しい体のぶつかり合いが重視される。対戦相手のレーゲンスブルクは3部からの昇格チームとあって、その傾向はより顕著だった。

 チームメイトにカバーリングやパスコースを作ってもらうことはあまり期待できず、個人で状況を打開していかなければならない。ピッチは踏ん張ろうとすると芝がめくれ上がってしまうほど緩く、局面での相手の速い寄せもあって、ボールはなかなか足につかなかった。危険な位置で相手にボールを奪われ、カウンターを許してしまうシーンもいくつかあった。

「いつも通りできるとは思ってなかったですし、初めて立つピッチの中でどれだけ自分が冷静に落ち着いてやれるかとは思っていましたが、なかなかうまくはいかなかったです」

 とはいえ、環境に馴染めば十分にやっていけるだけの力があることは感じさせた。それはマイク・ワルプルギス監督が、加入から間もないこの試合において1枚目の交代カードとして途中起用したことからもうかがえる。

 試合前、地元紙『ドナウ・クーリエ』は、関根の第一印象についてこう記している。

「セキネは練習で目を引いた。まず164cmとピッチ上で最も小さく、軽い選手だからだ。そして俊敏で思いもしない場所に突然、現れるからだ。それだけでなく、彼はフィジカルでも自己主張しようとし、恐れることなく華奢な体を寄せた」

 その通りのことがレーゲンスブルク戦のピッチでも見られた。ボールはなかなか足につかなかったが、競り合いの場面では臆することなく相手選手に体を投げ出していった。

 63分にはパスをカットしにいったところで目測を誤り、相手選手と入れ替わられてしまうシーンがあったが、すぐさま追いかけて体を投げ出し、クロスは許さなかった。このプレーにはスタンドから大きな拍手が送られた。もちろん、失点に繋がってしまったクリアミスのシーンでは大きなため息が漏れたが、少なくとも観客に対して164cm の日本人が戦える選手であることを示すことはできたはずだ。

 チーム状況は逼迫(ひっぱく)している。今季1部から2部に降格したインゴルシュタットにとって、開幕3連敗のショックは大きい。調子が上がらなければ、ワルプルギス監督の進退が問われるのは時間の問題になってくる。もし監督交代が起きれば、あるいはシステムが変更されれば、関根にも影響が及ぶことになる。

 この初戦で関根は「前に進む重要性」を感じたという。ボールを大事にすることを意識してバックパスを選択しても、インゴルシュタットではあまり意味を持たず、相手のプレッシャーが強くなるだけだ。2部ではきれいにプレーしようとしても、なかなかうまくいかないのだ。

「どんなにヘタだろうと、どれだけボールを前に運べるか、ガツガツ前に進んでいけるか。相手の前に進むプレーを止める守備というシンプルなところがより大事かなと思います」

 よくも悪くも勢いまかせなところがある2部を戦ううえで大切なのは、ドリブルでも、裏への走り込みでも、前へのプレッシャーでも、とにかく勇気をもって前に圧力をかけること。それで相手を自陣に釘付けにできれば、相手の勢いを殺して攻守にわたって優位を保つことができる。

 関根のドイツ挑戦はまだ始まったばかり。激しい2部の戦いで揉まれる小柄な日本人がこれからどんな成長を見せてくれるのか、注目したい。

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