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●PC事業、携帯電話事業を子会社化

8月22日、日本経済新聞が「富士通が携帯電話事業を売却する」と報じた。

富士通は同日午後、「他社とのアライアンスを含め様々な可能性を検討しているが、決定しているものはない」とのコメントを公開した。要は「否定ではない」わけだ。報道の通りとなれば、大手日本メーカーの中で携帯電話製造を続けるのが、ソニーとシャープ、京セラの3社にまで減ることとなる。

ではなぜ、富士通は携帯電話事業の売却を検討するのか? そして、売却によって富士通は事業全体をどう変えていくのか、考察してみよう。

○富士通本体は「システムとソリューション」が本業

富士通の携帯電話事業は、日本国内で老舗の、伝統あるものという認識が広がる。ただ、携帯電話事業そのものは2016年2月に100パーセント出資の子会社「富士通コネクテッドテクノロジーズ」として分社しており、独立採算性を高めている。同時にPC事業も子会社化しており、個人向けの端末事業は「ユビキタスソリューションビジネス」として独立させていた。

これは、富士通という企業のビジネス主体が、ITシステムの構築を軸にしたサービスとソリューションであることに起因する。これからは特に、IoTを含め「端末も重要だが、サービス側が存在しないと価値が生まれない」というビジネスの割合が増えていく。富士通全体としては、「個人向け端末は重要だが、それらをシンプルに訴求するビジネスと、本体のソリューション事業は分けて考えたい」という意思がある。

そもそも、日本のPC市場は法人6に個人4という比率であり、個人市場は減少傾向にある。一方、企業内システムのクライアントとしてのPCのニーズは変わらず存在しているため、法人市場は微増環境にある。双方を合わせるとトータルでは横ばい……と考えて良い。

そうした状況下において富士通は、法人・個人の双方でバランスよくシェアを維持してきた企業といっていい。だが、個人市場の伸びが落ちているうえに、法人市場ではデル・HPなどの伸びが大きい。「富士通のシステムを入れる=富士通のPCを買う」という状況はかつてのものになりつつある。

企業にとっての「端末」がPCだけでなくタブレット・IoT機器へと広がり、価値がクラウド側に集約すればするほど、「富士通のPC」を選ぶ理由は減る。特にコスト競争力の面で、海外勢は規模の経済を活かした強みを持っており、状況は決して良くない。では携帯電話はどうか?

●携帯電話作りが「コスト圧縮」だけでは立ち行かなくなった

もともと日本の携帯電話は、個人向けの製品でありつつも「携帯電話事業者」に販売する「B2B製品」としての意味合いが強い。携帯電話事業者との強いパイプを生かし、彼らのサービスや戦略に紐づいた良いものを作れば、それだけ受注が増えて販売も伸びた。

しかし、それも過去のことだ。スマートフォンが端末の中心になり、携帯電話事業者のサービスと端末の関係が希薄になると、海外勢との競争が激化した。国内スマートフォン シェアの5割をiPhoneが占める現状、ハイエンド端末のパイは減った。Android陣営の中でも、ハイエンド帯、低価格帯の双方で海外勢がライバルとなっている。

PCにおいて、そしてスマートフォンにおいても、富士通の課題は共通している。広く多くの国で販売する企業と比較して「数」が絶対的に劣るため、「価格競争力やパーツの調達力で不利になる」ということだ。

特にこの問題は、低価格製品に強く、直接的に影響してくる。しかもスマホでは、単なる安売りではなく、価格競争力がある分を品質に回して「安価だがクオリティが高い」ものにするパターンが増えている。そうした戦い方の中において、日本国内を中心にした事業戦略では、数量が稼げず、不利な点がばかりが目に留まる。

もちろん、規模の経済の話だけではない。過去には「中国などで生産する」という選択だけでコストを抑えられた。だが今は、人件費の高騰や輸送のタイムラグとコストまで考えると、「限定した数量であれば、消費地の近くで生産するほうが有利」な場合もある。特にPC事業の場合、そうした点を重視して「国内生産」のところも増えており、富士通もその考え方を採っている。

○強みがあるうちに売る、という決断

しかし、スマートフォンについては、現状、部材調達力が価格と品質に与える影響が大きく、数量を出せるメーカーの有利がなかなか揺るがない。そこで、特別なパーツを調達できたり、デザインで特徴を出したりしやすい「とがったブランド力」を持つ企業だけが生き残った。ソニー・シャープ・京セラという3社の顔触れを見れば、おわかりいただけるのではないだろうか。

富士通は、PC事業と携帯電話事業、ともに売却交渉を進めている。どちらも強みがないわけではない。PCの生産力は高く評価できるし、スマートフォンにおいて「ARROWS」は国内において名の通ったブランドだ。セキュリティ保護やセンサーの活用など、得意分野もある。これらの点に魅力を感じる企業は確実に存在する。

しかし逆にいえば、「数量」「圧倒的なブランド力」という差別化要因を持てておらず、大きな改善を見込めないのもまた事実だろう。となると、強みがあるうちに売却したほうが利益につながる。売却するといっても、株式の一部を残してブランドを維持すれば、「富士通としての個人向け端末市場への道」が完全に途切れるわけではない。

富士通としては、この時期がある意味で「最後の売り時」なのである。