今思い返しても痛々しい光景だ。今年の3月11日に行われたバイエルン・ミュンヘンとのアウェイ戦にて、相手のシュートをクリアして失点を未然に防いだものの、そこで脛に6針を縫う裂傷、さらに膝にも負傷を負い。5ヶ月ものあいだ公式戦から遠ざかる日々を余儀なくされた。

そして5月22日に長谷部は、信頼を置く池田医師の執刀の下、関節ねずみの除去と軟骨の平骨化の手術を受けることに。つまりは残りのシーズンが絶望ということを意味し、あのプレーがすで王者バイエルン0-2と敗戦濃厚という状況だったことをを思えば、あまりに辛い現実だったのではないだろうか。しかし長谷部はそれでも「僕はサッカー選手ですし、ピッチ上では全力を尽くします。同じ状況がまたあったとしても、そういうプレーをすると思いますね」と気丈に前を向いた。

ただ33歳のMFは今もなお、膝に時折痛みを感じており、火曜日と水曜日に行われた練習では、その理由から、個人練習のみに終始している。だが次節に行われる、2009年にリーグ制覇を経験した古巣ヴォルフスブルクとの一戦では、出場にむけて支障はない模様。そのためコヴァチ監督は、同選手をフライブルク戦と同様に3バックの中央に配置するか、4バックとしてダブルボランチの一角として中盤での舵取りを任せるのか判断を下すことになるはずだ。

”リベロ”で大きな価値を見出す

”ハーゼ”のニックネームをもつ日本人選手は、果たしていずれのポジションに居心地のよさを感じるのだろうか?”本人は両方のポジションでそれを感じているようだが、しかし昨シーズンでは特にリベロのポジションでその価値を示していたとはいえるだろう。冷静沈着かつ抜け目のないベテランは、広い視野をいかしたポゼッションのうまさと、巧みな対人戦の技により、守備陣に大きな安定感をもたらしており、それは先日のブンデス開幕戦フライブルク戦でも見受けられた。この試合でチーム最高点となる、kicker採点2.5をマークした日本代表主将は、「5ヶ月も公式戦に出場していなかったので、少し変な感じはしましたね」と振り返っている。

ただ模範的選手として示しているそのプレーからは、現時点でのコンディションを見る限りあと2・3年はブンデスでやっていけるのではないか。そしてフランクフルトとの契約は今季いっぱいまでとなっているのだが、その後はどうなっていくのか?長谷部は大して長く考えることなく「とても居心地よく過ごしていますし、長くとどまることは想像できますよ」とコメント。9月はじめには、夫人と子供がフランクフルトへ来ることも、その居心地の良さを増長させてくれるに違いない。「もう1ヶ月会っていないので、もちろん寂しさは感じていますよ」と長谷部。今は1日5回まで、ビデオチャットをすることでその穴埋めをしているという。

新戦力・鎌田の通訳も

ユニセフ親善大使も務める長谷部だが、これから家族をサポートしていくだけでなく、今季から加入した新戦力・鎌田大地の通訳も担っているところだ。ミーティングや流れ、監督の指示などを説明しており、12歳年下の若手MFについて「大地はとても覚えるのが早いですし、6〜8ヶ月くらいで、結構うまくドイツ語を話せるんじゃないですかね。」との印象を語った。もしそれが実現できれば、それは素晴らしい結果だ。

そして当然ながら長谷部は、ケヴィン=プリンス・ボアテングとの話し合いも欠かすことはない。二人の間には1つの因縁ともいえる出来事があり、それは2009年5月12日に行われたドルトムント戦vsヴォルフスブルク戦でのこと。途中から出場したボアテングは、わずかその9分後に長谷部の頭部を蹴って一発退場。「たった11針縫うくらいですみましたけどね」と、笑顔を浮かべた守備のスペシャリストによれば、「試合後にロッカールームに謝罪しにきた。」とのことで、特にわだかまりのようなものはないとのこと。もうその時のプレーについて話すようなことはなく、ここまでのボアテングに対してむしろ好感を抱いており「このクラブにおいて、マイアーと並ぶビッグネームです。イイ奴ですよ。彼がその経験をいかし、チームにとってリーダー的選手の一人になることは想像できます」と言葉を続けている。

そのヴォルフスブルク戦では、長谷部はボアテングとともにはじめて、先発出場をすることになるかもしれない。古巣戦での戦いにむけ、当然の事ながら燃えている長谷部は、「あそこで5年半プレーしましたし、僕にとってとても特別なクラブです。対戦が楽しみですね」と意気込みをみせた。